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群馬 “アリ先輩”と慕われる 尾瀬高校のアリ好き生徒の素顔は

  • 2023年11月22日

群馬県の北部にある尾瀬高校。 “アリ好き”がきっかけとなって水戸市から群馬に移住してきた16歳の高校生がいます。みずからアリを採集し、自宅にはおよそ1万匹のアリを飼育し研究を続けています。後輩たちから「アリ先輩」と呼ばれる高校生の素顔に迫りました。

(前橋放送局 記者 長谷川将万/2023年10月取材)

アリ好きで群馬に移住

尾瀬高校に通う高校2年生の井上巧基さん(16)です。

見つめる先にいるのは…。

井上巧基さん

「アミメアリといいます。頭の部分が網目模様なのでアミメアリという名前がついています」

授業を受ける井上巧基さん

もともと井上さんは水戸市出身。アリ好きがこうじて自然や生物に関する授業に力を入れている尾瀬高校を志願。去年、母親と2人で水戸から群馬に移住してきました。

アリの魅力にはまった“アリ先輩”

小学生の自由研究で使ったアリの飼育セット

アリ好きになったきっかけは小学生の時の自由研究。 “アリのとりこ”になったといいます。

「毎日観察していると、どんどんどんどんアリが巣を掘っていくのがおもしろくて、人間の工事現場を見ているような気分で楽しく見られます」

作成した論文

高校2年生にして、これまでにまとめたアリに関する論文は5本。主に、アリの家族「コロニー」の広がりについて研究を続けています。

日々の研究を記録する観察ノート

観察ノートもすでに40冊を超えました。

「例えばアミメアリの研究では色付きの砂糖水を使いますが、作る手順や砂糖水をあげた場所、気温や天気などの細かな情報も記入しています。同じ家族が(同じ色の)砂糖水を飲むことでその1つの家族がどこまで広がっているのかを調査しています」

お気に入りの手作りの吸虫管

アリを探す井上さん

ふだんから学校敷地内にある自然植物園に通い、アリの観察や採集に励むという井上さん。

手作りの吸虫管

採集に使うのは、吸虫管(きゅうちゅうかん)と呼ばれるアイテム。2本ある細い管の片方から息を吸い込み、もう一方の管の先からアリを吸い込み捕まえます。

「全部手作りだが、一番のお気に入りポイントをいうとやっぱりアルミのストローをかませているところ。見栄えもかっこよくなりますし、すごい使いやすくて愛用しています」

しかし、アリに夢中になるあまり、採集中に痛い目にあったことも。

井上巧基さん
「アリは自分を守るために、『ぎ酸』というハチでいう毒みたいなものを出します。ここにいるアリは『ぎ酸』が強かったのですが、初めて自然の中にいるのを見つけたので興奮しちゃって吸っちゃったんです。そしたらすごいのどが痛くなっちゃって」

一方、同級生からはこんな話も。

同級生

「以前、言っていたがアリによって『ぎ酸』の味が違うとか、『おいしい』とか言っていましたね」

同級生

「地面やコンクリートに這いつくばって『あっ!かわいい』と言ってアリを吸うんですよ」

アリ好きは仲間の間でも有名で後輩からは「アリ先輩」と呼ばれています。

「 “アリ先輩”って呼ばれてますね。同級生からは“アリ“とか“アリくん”とか“アントマン”と呼ばれています」

自宅もアリだらけ。その数 1万匹!

アリへの情熱は自宅でも。なんと、自宅ではおよそ1万匹のアリを飼育しています。

アリの巣を紹介する井上さん

井上巧基さん
「これが一番最初に飼ったアリ。ずっと一緒にいるので自分の中ではかなり大切な家族だなという感じですね。きょうの(エサは)りんごだよとか話しかけたりしています」

アリにえさやりをする井上さん

自宅に帰ってからもアリにエサをあげながら、巣の観察など研究を続けています。

井上さんを見守る母(綾子さん)

母親の綾子(あやこ)さんです。ともに群馬に移住し、息子の研究をそっと見守っています。

綾子さん

「息子が群馬の高校に行きたいと聞いて最初は『うそでしょ?』って思いました。でも自分の好きなことが1つあればつらいことがあっても乗り越えられるかなという思いがあるので、応援できるところは応援したいと思います」

アリの魅力知ってほしい!

同級生と文化祭の準備を進める井上さん

アリの魅力を多くの人にも知ってもらいたいと話す井上さん。高校で開催される文化祭に向け、研究成果の発表や、顕微鏡を使った観察体験の準備を進めていました。
 

「アリはこれだけおもしろい生き物なんだというのを少しでも伝えられたらいいかなと思っています」

そんな井上さんに将来の夢を聞きました。

井上巧基さん
「自分は、学芸員の先生にあこがれて将来の夢は学芸員なので、小さい子にもあこがれてもらえるような存在になりたいなと思っています」

  • 長谷川将万

    前橋放送局記者

    長谷川将万

    2022年入局。記者2年目で県警・司法担当。大学から住む群馬での勤務。地域に密着した取材に取り組む。

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