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群馬 上越新幹線が春から終電繰り上げ 背景に老朽化と人手不足

  • 2024年01月24日

JR東日本はことし3月16日から上越新幹線の下りの終電時刻を20分繰り上げることを発表しました。この対応に、利用者や沿線自治体からは反対の声も出ています。

なぜ今、終電時刻を繰り上げるのか、その背景を取材しました。

(前橋放送局 記者 田村華子/2024年1月放送)

終電繰り上げに利用者は…

通勤や旅行など、多くの人が利用する新幹線。

JR高崎駅では、毎日125本の新幹線が行き交い、県内外の人たちの大切な「足」となっています。

この新幹線をめぐり、去年、新たな発表がありました。

JR東日本はことし3月16日から上越新幹線の下りの終電の到着時刻を午後11時36分にして、20分繰り上げることを明らかにしました。

この終電時刻の繰り上げについて、新幹線の利用者は…。

利用客

「最終に間に合うところまで仕事をするときがあるので、繰り上がった分だけ早く切り上げなきゃいけない」

利用客

「名古屋への出張がよくあり、名古屋で食事をして帰ると終電になってしまう。間に合わない可能性が出てくるからこの時間に終電があるといい」

繰り上げに反対の自治体も

こうしたJR東日本の対応に反対の動きも出ています。

地元・高崎市は、終電時刻の見直しやJR東日本との協議の場の設置を求める要望書を去年11月に提出。

終電が早くなってしまうと首都圏に通勤通学しにくくなり、高崎市から通っていた人たちが、地元を離れてしまうおそれがあるからです。

なぜ終電時刻を繰り上げ?

反対の声があがる中、JR東日本はなぜ今、終電時刻の繰り上げを行うのか。

大きな理由となっているのが「夜間工事の作業時間の確保」です。

上越新幹線開業日

高崎駅に新幹線が開通したのは、今から42年前の1982年11月。

多くのビジネスマンや観光客などが利用し、群馬の地域経済の発展に欠かせない役割を担ってきました。

しかし、開通から40年以上が経過し、深刻化しているのが設備の老朽化です。

架線やレールの交換など、必要な補修工事が急増しているのです。

メンテナンスの深夜作業を公開

JR東日本が先月公開した深夜の工事作業です。

27年使用されてきた架線の張り替えが行われました。

およそ20人の作業員たちが、終電から始発までの限られた時間の中で架線を新しいものに交換していました。

JR東日本によりますと、今後10年間で上越・東北新幹線をあわせると、こうした架線の交換はおよそ800キロ分、レールの交換はおよそ400キロ分にわたって必要だと試算されています。

山積する工事に対応する時間を確保するためにも、終電時刻の繰り上げが欠かせないと訴えています。

JR東日本 上信越新幹線電力技術センター 山下真実 所長
「より多くの工事を実施していくためには、終電の繰上げによる作業間合いを拡大して工事を実施していくことが必要」

工事の「担い手不足」も深刻

終電時刻の繰り上げの理由は、設備の老朽化だけではありません。

工事の「担い手不足」も課題です。

JR東日本によりますと、2013年に比べ、管内の鉄道に関する工事量はおよそ50%も増加。
その一方で、工事に従事する人はおよそ20%減少しています。

そこに、追い打ちをかけているのが「2024年問題」といわれる建設業界などでの時間外労働の規制強化です。

工事の担い手不足も厳しさを増し、十分な工事時間を確保することで、作業員の働き方改革にもつなげたいとしています。

JR東日本 高崎支社企画総務部 常松伸章 部長
「時間外労働の上限が非常に厳しくなる。働き手の確保が難しくなると考えている」

安全で安定した新幹線運行へ 理解を求める

設備の老朽化に加え、人手不足という課題に直面している新幹線の運行。

利用者にとっては不便になりますが、JR東日本は終電時刻の見直しに理解を求めています。

JR東日本 高崎支社企画総務部 常松伸章 部長
「担い手不足をしっかり解消することと一緒に、鉄道工事の働き方改革も実施したい。新幹線の鉄道輸送サービスをしっかり守っていくために、繰り上げは必要な取り組みだと考えている」

2004年新潟県中越地震の際の脱線
(画像提供:JR東日本)

能登半島地震では、各地の公共交通機関に影響が出ましたが、JR東日本によりますと、20年前の新潟県中越地震でも管内では脱線やトンネルの内壁が剥がれるなどの被害が出たということです。

そのため、地震などに備えた工事も急務になっていて、安全な新幹線の運行のためにも終電時刻の見直しが必要だとしています。

  • 田村華子

    前橋放送局記者

    田村華子

    2021年入局。県政担当。視聴者に"身近な"話題を"わかりやすく"発信していきます。

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