夕方になると泣きはじめて手がつけられない。双子が一緒に泣いてしまう。赤ちゃんに泣かれると、ママ・パパだって泣きたくなりますよね。そんな、赤ちゃんの泣きについて専門家と一緒に考えます。とっておきの泣きやませ方も紹介します。

どうする? 赤ちゃんが泣いたとき※すくすく子育て「どうする? 赤ちゃんが泣いたとき」より

専門家:
黒田公美(理化学研究所 脳神経科学研究センター/医学博士)
岩佐寛子(東京都助産師会/助産師)

赤ちゃんが泣いてもだっこしかできない、どうしたらいい?

子どもが泣いたとき、妻はどうして泣いているのか大体わかるようですが、私にはよくわかりません。とりあえず、だっこするしかできません。だっこしているとおとなしくなるのですが、ベッドに寝かせようとおろした途端、泣き出してしまいます。どうしたらいいのでしょうか?
(お子さん1か月のパパ)

よく、背中スイッチ・おなかスイッチと言われていますが、布団におろしたときの衝撃で泣いてしまって、それまでの寝かしつけがゼロに戻ることがあります。
(お子さん1か月のママ)

最新研究の「泣きやませ」に挑戦

2022年9月、黒田公美さん(理化学研究所)が関わった最新研究の成果が発表されました。その名も「赤ちゃんの泣きやみと寝かしつけの科学」です。この研究を踏まえれば、赤ちゃんが泣きやむだけでなく、寝かしつけの成功率が上がるといいます。
※生後1か月~7か月ぐらいまでの赤ちゃんに有効な方法です。生後1か月未満の赤ちゃんや、筋力が弱いなど、心配がある赤ちゃんには行わないでください。

今回、2ステップでできる簡単な方法で、ご相談のパパに挑戦してもらいました。

ステップ1 だっこ歩き

まずは、泣いている赤ちゃんを抱きあげます。そのまま、だっこしながら5分間歩きます。
※つまずかないように足元の安全を確保しましょう

ポイントは、赤ちゃんをあやそうとするのではなく、一定のリズムを保ちながら淡々と歩くこと。部屋の中を回るように歩きます。

これは、哺乳類の子どもが親に運ばれるときに泣きやんでおとなしくなる「輸送反応」を利用しています。野生動物の赤ちゃんが親に運ばれるときは、外敵に狙われるなど命の危機が迫っているときです。泣いたり、暴れたりすると安全に運んでもらえないので、おとなしくなるのです。

4分を過ぎたころには、眠っているようにみえます。ここまでは以前「すくすく子育て」で紹介した方法です。

ステップ2 だっこしたまま座る

ここからが、最新研究を踏まえた方法です。歩くのをやめて、すぐにベッドには寝かせず、だっこしたまま8分間座ります。この時間で赤ちゃんは深い眠りにつき、ベッドにおろしたときに眠り続ける確率が上がるといいます。

そうして8分後、ベッドに寝かせてみます。

見事成功かと思いきや… 30秒後に泣き出してしまいました。


コメント:黒田公美さん

惜しいところまでいっていましたね。ベッドにおろして30秒の間に、1度眠りに戻りそうな瞬間もありましたが泣いてしまいました。
パパが半袖でいることを考えると、赤ちゃんが少し厚着かもしれません。一緒に5分歩くと、お互いに暑くなります。赤ちゃんは暑いと熱を逃がさないといけないので、眠りにつきにくいのです。薄着にしておいて最後に何かをかけるより、厚着から服を脱がすほうが難しいので、歩きはじめる前に少し薄着にしておくとよいかもしれません。

―― 「8分間座って待つ」というポイントがありましたが、これはなぜですか?

眠りが浅いときは刺激に敏感

回答:黒田公美さん

赤ちゃんが眠ってから平均で約8分間は、やや浅い眠りだといわれています。これは大人も同じです。赤ちゃんの眠りが浅いときは、ちょっとした物音や刺激で起きやすいわけです。歩いているときも刺激があるので、眠ったあと、あるいはウトウトしてきたら、座って待ったほうが眠りを深めるのに役立つことが、実験の結果から考えられました。

コメント:古坂大魔王さん(MC)

わが家でも、この方法をしてみましたが、8割ぐらいうまくいきました。最後、ベッドにおろすときは慎重になりますね。息を止めて、少しずつ腕をずらしています。

―― 眠った赤ちゃんをベッドにおろすときは、どのようにするのがよいでしょうか?

すぐに体を離したほうがいい場合も。泣いても触らず見守る

回答:黒田公美さん

私もゆっくり離れるのがよいと思っていましたが、実験の結果は違いました。すぐに離していい場合もありえます。ゆっくりでうまくいかないときは、試しに赤ちゃんをすっと置いて離れてみてください。
実は、赤ちゃんは置かれたときではなく、体から離れるときに驚いて少し起きかけます。ですが、眠りが十分深まっていれば、体が完全に離れたあと、眠りに戻っていくことができます。離れる時間が長過ぎると、かえって眠りに戻れない場合もあります。すっと置いたあとに泣いても、触らず見守ることも試してみてください。

子どもにあった方法を見つけていく

回答:岩佐寛子さん

紹介された方法もひとつの方法として知っておくとよいですね。ベッドに寝かせるタイミングなども、子どもによって違いがあります。子どもの状態を見ながら、その子に合った泣きやませ方を見つけていくのがいいでしょう。

コメント:古坂大魔王さん(MC)

確かに、いろいろな方法を調べても、子どもによって違うと思っていたほうがいいですね。例えば「8分待ったのに泣いた」ではなく、あくまで平均値で、おおよそ8分ぐらい待つと知れたことがよかったと思います。

コメント:鈴木あきえさん(MC)

このような方法も知っておくと、泣かれたときに「あの方法を試してみよう」と思えるので、少し楽な気持ちになりますね。

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赤ちゃんが泣いたとき、おっぱいに頼っていいの?

下の子(9か月)は、夜泣きが激しく、昼寝から起きたときも声がかれるぐらい泣きます。ネットで知った方法をあれこれ試しましたが効果はありません。ですが、おっぱいをあげると泣きやみます。
実は、あと3か月ほどで職場に復帰する予定で、子どもは保育園に入ることにしています。保育園にいて、私が授乳できないとき、泣きやんでくれるか心配です。このままおっぱいに頼っていてもいいのでしょうか。
(お子さん9か月・5歳のママ)

9か月ごろの赤ちゃんは、状況を理解し順応する能力がある

回答:黒田公美さん

確かに、赤ちゃんは習慣になると、それを期待することはあります。ただ、お母さんといるときに授乳を期待しても、例えば保育園のように、お母さんがいないときは「無理なんだ」と一度学べば、その状況を理解して順応する能力があります。「断乳してから入ってほしい」という園もありますが、すべてではありません。例えば指しゃぶりのように、保育園で違う方法で自分を落ち着かせることを学べば、対応できると思います。心配しなくても大丈夫でしょう。
また、例えばお父さんはおっぱいをあげることができないので、同じような状況をつくれます。お父さんが泣きやませや寝かしつけに早くから入ることで、保育園にも対応しやすくなると考えられます。

必ずしも「保育園入園=おっぱいの卒業」と考えなくてもいい

回答:岩佐寛子さん

お子さんにとって保育園に行くことは、今までいつもいたお母さんがいない、がんばる時間ができることです。だからこそ、保育園から帰ってきておっぱいを飲ませてもらえたら、きっと幸せな時間になるでしょう。「保育園入園=おっぱいの卒業」だと考えなくてもいいと思います。
映像の様子をみると、お子さんはお母さんのおっぱいをもらって落ち着いて、お母さんも幸せそうなので、それでいいのではないでしょうか。おっぱいの卒業については、お子さんが保育園で落ち着いて、生活も落ち着いたときに、改めて考えたらよいでしょう。

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健康に関わるような危険な泣きを見極めるには?

夫婦ともに育休をとって、はじめての育児を頑張っています。双子のきょうだいで、なぜか、夕方になると同時に泣きます。食事の準備などで忙しい時間で、ママが料理などの家事をしているときは、パパが2人をだっこしてあやします。だっこしているとおとなしくなりますが、おろすと泣き出します。それからも、2人が交代で泣いたりぐずったりして、気づくと真夜中になっていることもあります。
双子を泣きやますのは大変で、つい泣かせっぱなしになることもあります。泣かせたままで大丈夫なのか、健康状態にかかわるような危険な泣き方をどう見極めたらいいのか知りたいです。
(お子さん6か月ふたごのパパ・ママ)

だっこ歩きで泣きやまないときは症状がないか確認

回答:黒田公美さん

だっこ歩きを3~5分すると泣きやんでおとなしくなるのであれば、ほとんどの場合、危険な泣きではないと考えられます。具合が悪くて泣いているときは、だっこ歩きをしても泣きやみません。例えば、熱の出始めや、発疹などの症状がないか確認しましょう。赤ちゃんはよく中耳炎になりますが、そのときは耳を触ることがあります。そういったいつもと違う様子があるか気をつけてください。
医学的な問題がないとわかれば、たくさん泣いたとしても、少し泣かせたままになる時間があっても、その後の発達には問題ないことがわかっています。

※危険な泣きのときは、医療機関で受診してください

赤ちゃんの泣きは発達にともない理由が変わる

回答:岩佐寛子さん

赤ちゃんの泣きは、月齢が進むにつれて理由が変化していきます。

生まれて間もない赤ちゃんは、空腹などの不快が主な泣きの理由です。その一方で、理由がわからず、何をしても泣きやまないような泣きがみられる時期でもあります。
3か月を過ぎると、さびしさを訴えて泣くようになります。さらに成長すると、いつもお世話をしてくれる人と他人を区別できるようになるため、人見知り泣きや、親が離れると泣いてしまう後追い泣きもはじまります。この時期、泣きの理由がもっとも複雑になります。
お子さんは6か月なので、だんだん複雑な泣きが出てくる時期です。

―― 料理中など、赤ちゃんが泣いても対応できないときは、どうしたらいいでしょうか?

あなたのことを気にしているというメッセージを送る

回答:岩佐寛子さん

赤ちゃんを安全な場所に寝かせて、少し離れるのもひとつの方法です。料理中で対応できないときは、料理をしながら実況中継してみましょう。まず、「〇〇ちゃん」と名前を呼んで、「今からお母さんごはんつくるから、ちょっと離れるけど、戻ったらだっこするからね」と声をかけます。台所にいるときは、「にんじんを切っている音だよ」「お肉を炒めているよ」など、実況中継を続けます。あなたのことを気にしているというメッセージを送るわけです。そして、用事が終わったら赤ちゃんのところに戻って、泣いていればだっこして、「ありがとうね。よくがんばったね」と声をかける。泣き疲れて寝ていたら、静かに頭をなでて「ありがとう」と伝えてください。

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専門家からのメッセージ

泣いても動揺せずどっしりと構える

黒田公美さん

赤ちゃんは、単に退屈しているだけで泣くこともあります。だから「あなたは泣いているけど、私は動揺しない、大丈夫」のように、どっしりと構えてください。親が動揺していると、赤ちゃんはその理由がわからず、何か危険があるかもしれないと感じるかもしれません。すると、お互いに不安な気持ちになります。
どうしてもイライラして手をあげるほどの気持ちになったら、赤ちゃんが安全な場所にいれば、少し離れてもいい。10分間ぐらい泣かせたままでも大丈夫ですよ。

オリジナルの育児本をつくるような心の持ち方で

岩佐寛子さん

今は泣く時期だから、もう少しで落ち着くと考えて、大きく構えていいと思います。ネットなど、いろいろな方法があると思いますが、それぞれの家庭にあった方法をみつけていきましょう。赤ちゃんにも個性があるので、一つ一つ試しながら、「今日はこれがうまくいった」と思って、オリジナルの育児本をつくるような心の持ち方でできるといいですね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです