赤ちゃんには理解できない行動がたくさんありますよね。突然の言葉にならない声、怒ると床に頭をぶつけるなど、不思議な声やしぐさ・気になる行動について、専門家と一緒に考えます。
遠藤利彦(東京大学大学院 教授/発達心理学)
赤ちゃんの不思議な声には、どんな意味があるの?
突然、金切り声を出す
息子の突然の金切り声が気になっています。例えば機嫌よく遊んでいるときも、遊びに熱中してくると、「ギーー」と発したりします。はじめは私がちゃんと相手ができてないから、こんな声を出すのかと心配したのですが、そんなことはないようで、声を出したあともご機嫌です。この声には、一体どんな意味があるのでしょうか。
(お子さん7か月のママ・パパ)
声の出し方を実験・練習して、出した声を聞いて楽しんでいる
回答:遠藤利彦さん
基本的に機嫌のいい状態で声が出ていたので心配ないでしょう。
赤ちゃんは、声の出し方を日々実験しながら練習していると考えてください。声を発するには、のどや舌、唇などをうまく調整して連動させないといけません。いろいろ試しながら、偶然「こんな力の入れ方で、こんなふうに動かしたら、こんな声が出たよ」となるわけです。その声を自分で聞いて、楽しんでいると思います。お子さんも、大きな声を出せることを喜んでいるように見えました。
自分で出した声を聞き、できることをたしかめることは、集中して遊んでいる状態と同じだと思います。
「ヴ~」と、うなるような声を出す
長女は、食べ物を手でつかむときに「ヴ~」と、うなるような声をよく出しています。テーブルに落ちたごはん粒をつかむときや、ごはん粒を口に入れようとするときも、「ヴ~」と言います。この声に何か意味があるのでしょうか。いつまで続くのか少し心配になります。
(お子さん10か月のママ)
食事しながら遊んでいる
回答:遠藤利彦さん
おなかがすいて声が出ているというより、遊びの一環で出ていると思います。ごはん粒をひと粒ずつ口に入れること自体が遊びになっているわけです。遊びのご機嫌な声の表れではないでしょうか。
不思議な声は言葉に置き換わっていく
回答:遠藤利彦さん
いずれは、この声が言葉に置き換わっていきます。お子さんも、ごはん粒を口に入れたときに、何か言いたがっているようにも見えました。言葉が出てくるようになったら、自然とうなり声から言葉に変わっていくでしょう。
授乳後に「おぇっ」と苦しそうに吐くような声を出す
娘(3か月)が、授乳後に「おぇっ」と苦しそうに吐くような声を出すので、心配しています。すぐに抱きかかえて、背中をトントンすれば治ります。健診で相談したときは「少し様子をみてください」と言われました。少しずつよくなっている気はするのですが、いつまで様子をみればいいのでしょうか。
(お子さん3歳双子・3か月のママ)
ゲップが上手な子とそうじゃない子がいる
回答:遠藤利彦さん
ゲップが上手な子、そうでない子もいます。うまくゲップができないときに、少しあとに残って「おぇっ」となることもあると思います。これが何回も続くようであれば心配ですが、数回でおさまったり、背中をトントンしてあげることで治まるのであれば、特に心配ないでしょう。
赤ちゃんの不思議なしぐさには、どんな意味があるの?
番組に寄せられた「赤ちゃんの不思議なしぐさ」について、遠藤利彦さんに話を聞きました。
キョロキョロ
娘(4か月)は、うつ伏せの練習のあとに、なぜか周囲を見渡してキョロキョロします。何か気になるものがあるのでしょうか。
いろいろなものが見られて楽しい
回答:遠藤利彦さん
人間の赤ちゃんは頭が大きく、最初は首がすわっていないので、支えてあげる必要があります。それから、徐々に首の筋肉がついてくると、自分で頭を固定したり、首を動かしたりできるようになります。すると、親が向けてくれないと見えなかったものが、自分で動かして見ることができます。いろいろなものを自分で見ること自体が、とても楽しくてうれしいことなのでしょう。お子さんも機嫌よく「キョロキョロ」を繰り返しているように思います。
寝ながらダンス
娘(6か月)は、いっぱい寝たあとにパパが足を触って起こそうとすると、寝ながらダンスします。
起きているときの遊びが再現されているかもしれない
回答:遠藤利彦さん
いろいろな理由が考えられますが、もしかすると、起きているときに親がお子さんの足を触って一緒に遊んでいることがあるのではないでしょうか。その遊びが、眠っている間にも再現されているのかもしれません。
また、赤ちゃんの段階では、特定の刺激を与えたり、特定の姿勢をとらせたりすると、共通して同じような行動を示す「反射」といわれるものもあります。
赤ちゃんの反射
赤ちゃんには、次のような「反射」があります。
両脇を持って足を浮かせると足を交互に動かす「歩行反射」。
うつ伏せで両脇を持って持ち上げると手と足を広げる「パラシュート反射」。
口元を刺激すると口をあける、口にものを入れると吸い付くような反射もあります。
前後にゆらゆら
娘(6か月)は、四つんばいになって前後にゆらゆらします。前に進みそうだけど進みません。
体を曲げたり伸ばしたりして動きを調整している
回答:遠藤利彦さん
実は、ハイハイには大きな個人差があるといわれています。例えば、うしろに進むハイハイや、クロール型・バタフライ型のハイハイもあります。そのハイハイの動きが生じている過程が、ゆらゆらするような姿勢になっているのかもしれません。
赤ちゃんは、曲げる筋肉、伸ばす筋肉が急速に発達する時期です。体の曲げ伸ばしを調整して、いろいろな行動がとれるようになります。それができること自体が、赤ちゃんにとっては楽しみ・喜びなのでしょう。だから、それを繰り返しているように思います。
気に入らないことがあると頭をぶつける… どうすればいい?
息子は、嫌なことや思い通りにならないことがあると、衝動的に床や壁に頭をぶつけたり、床に倒れ込んだりします。例えば、外に行きたいときに「ちょっと待ってね」と言われたり、おやつ食べたいのに「後でね」と言われたりしたときです。どうにかやめさせたいのですが、どうすればいいのでしょうか。
(お子さん1歳8か月のママ)
―― 遠藤さん、みなさんの話を聞いていかがですか?
思いを言葉にできず、欲求不満がつのって行動に
回答:遠藤利彦さん
これぐらいの月齢・年齢の子どもは、自分自身の気持ち、いわゆる「自我」が強烈に芽生えてくる時期です。いろいろな思いが心の中にできてきます。ただ、「これがやりたい」という気持ちが強くても、まだうまく言葉で伝えることができません。結果的に思い通りにならずに欲求不満がつのり、そんな強い感情が、頭を打ちつける、走り回るといった行動につながっていると思います。
―― こんなときに親はどうすればいいのでしょうか?
ケガの心配がある場合は、静止して優しくおさえる
回答:遠藤利彦さん
やはり子どもにケガがあってはいけません。あまりにも強く打ちつけるようであれば、静止して優しくおさえてあげましょう。
感情を受け止めて、気持ちを代弁する
回答:遠藤利彦さん
一方で、子どもの感情がはっきり出ている状態なので、それを受け止めることも必要です。映像では、親が「こういうことなのね」と子どもの気持ちを代弁していました。あのような働きかけをしていれば、徐々に減っていくと思います。
言葉が使えるようになると、交渉や駆け引きをしながら納得できるように
回答:遠藤利彦さん
「足ドンドンする」と宣言していた話がありましたね。あれは交渉・駆け引きだと思います。言葉をうまく使えるようになると、自分の気持ちを伝えて交渉できるわけです。年齢が上がっていくと、交渉しながら親も子も納得できるところをつくり出していくことができるようになっていくように思います。
行動そのものはあまり心配しなくていいが、ケガには注意
回答:遠藤利彦さん
今はたしかに大変な時期だと思いますが、多くの子どもが共通して通る道筋です。そのような行動そのものは、あまり心配しなくてもいいでしょう。ただ、その行動でケガをすると大変なので、その点には注意してください。
こどものホンネ
歯みがき 好き? 嫌い?
子育てでわからないことは、子どもに直接聞いてみよう!
「こどものホンネ」のコーナーでは、SNSの子育て動画で人気の木下ゆーきさんがホンネハンターになって、「こどものホンネ」に迫ります。今回は「歯みがき」について、保育園、年長さんの子どもたちに聞いてきました!
―― 歯みがき、嫌いな人? どうして歯みがきが嫌いなの?
- めんどうくさいから嫌い。朝、歯みがきする「やる気」がないの。
実は今回、「歯みがきが嫌い」と答えた子は少数派でした。話を聞いた子の8割は、「歯みがきは好き」と答えました。
―― どうして、歯みがきが好きなの?
- 歯みがき粉が甘いから。
―― 歯みがき粉って、どんな味があるの?
- ぶどう味。
- りんご味。
- おいしい味。
―― 他に、どういう味の歯みがき粉があったらうれしい?
- ケーキ味。
―― 歯みがき粉をつけるとき、どれぐらい塗るの?
- いっぱい。
―― 歯みがき粉をたっぷりつけているのを、パパ・ママは知っている?
- しらない。
おいしい歯みがき粉、ついつい、つけすぎちゃうよね。でも、つけすぎに注意してね。
―― 虫歯になったことは、ある?
- ある。友だちとバーベキューしたときに眠くなっちゃって、歯みがきしなかったから。虫歯になるから頑張ってみがこうと思った。
歯みがきの大切さを、みんな結構わかっていたみたい。健康な歯でおいしく食べようね。
専門家からのメッセージ
乳幼児期は、体と心が連動して発達していく
遠藤利彦さん
子どもは、乳幼児期にいろいろな実験をします。実験しながら「こうやったら、こういうことが起きるんだ」と日々学んで、たしかめていきます。体が動かせるようになると、それだけ経験が広がります。とても楽しんだり、場合によっては嫌なことを経験したりすることもあるでしょう。心も大きく変化する時期なのです。体と心は連動して、ともに発達していくと考えてください。
ただ、あまりにも気になる行動があったら、迷わず、気軽に医師に相談してください。
※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです