理由もわからず大泣きする赤ちゃん… どうすれば泣きやんでくれるの?
そんな赤ちゃんの泣きについて専門家と一緒に考えます。

専門家:
加部一彦(埼玉医科大学総合医療センター新生児部門 小児科医)
岩佐寛子(東京都助産師会 助産師)

泣いたらやっぱりだっこするしかないの?

だっこをしていないと、子どもはすぐにぐずってしまうので、ごはんの準備をしているときも、だっこをしたままです。体重が5キロを超えたぐらいから限界を感じています。少しでも私が離れてしまうと、泣きだしてしまいます。一度機嫌が悪くなると、なかなか泣きやまないので、しかたなくまただっこ…。こんな毎日が続いています。
(7か月の女の子をもつママより)

子どもがちょっとしたことで、すぐに泣きだしてしまい、だっこしないと泣きやみません。だっこのし過ぎで、体のあちこちに痛みを感じています。朝痛くて起き上がることができないことも。病院に行くと「重たいものを持っているから」と言われました。体がつらくても、泣かれるとだっこをしてしまいます。
泣く声がはじめてで、耐えられないこともあります。ご近所迷惑も考えてしまいます。
泣いたらだっこするしかないのでしょうか?
(9か月の女の子をもつママより)

赤ちゃんは泣くことでしか表現できない

回答:加部一彦さん

いつも自分の面倒を見てくれているママと離れてしまうことが、心配になるのだと思います。そういった気持ちを、泣くことでしか表現できないのです。

赤ちゃんの気持ちを表現してあげる

回答:岩佐寛子さん

赤ちゃんの気持ちを、ママが表現してあげてみてはいかがでしょうか。
例えば「だっこしてほしかったんだね」と言って、気持ちを受けとめてあげる。ママが離れるときも「ちょっと離れるけど、また戻ってくるから待っててね」と声をかける。泣いていても“後でママが手を差し伸べてくれるんだ”と思い、落ち着いてくるのではないかと思います。

お散歩などで、知らない人から話しかけられると泣いてしまうことが増えてきたと感じます。
人見知りは、いつからいつまであるものですか?

生後4~5か月ぐらいからはじまる

回答:加部一彦さん

生後4~5か月ぐらいになると、記憶力が育ちはじめます。いつもいる人とそうでない人の区別がついてきます。いつもいる場所とそうでない場所の区別もつきはじめます。すると、だんだん人見知り、場所見知りといわれる状態になってきます。
1歳ぐらいまでは、ちょっとしたことで泣いたり、さわがしくなることが多いと思います。

泣いたらすぐだっこをしていると、子どもにだっこグセがついてしまうと聞いたことがあります。

だっこグセは気にしなくてよい

回答:加部一彦さん

だっこグセは、考えなくてよいと思います。子どもは成長して、月ごとに変わっていきます。2~3歳で「だっこして」と言う子はいても、5~6歳になるといなくなりますよね。


赤ちゃんの泣き声は近所迷惑?

赤ちゃんを泣かせてしまうと、ご近所のことが気になってしまいます。
夏になると窓を開けていることもあります。そういうときに全力で泣かれると、周りにどう思われているのか気になってしまいます。
(9か月の女の子をもつママより)

世の中の受け取り方の問題

回答:加部一彦さん

子どもは泣いたり大騒ぎするものです。これから大きくなれば、けんかも絶えません。これは世の中の受け取り方の問題もあります。
ですから、あまり神経質になり過ぎないようにしましょう。気にし過ぎると、自分を追いつめてしまいますよ。

泣くのも仕事 多少泣かせておいても大丈夫

回答:岩佐寛子さん

赤ちゃんは泣くことが仕事のようなものです。泣くことでコミュニケーションもとっています。
泣かせっぱなしだと、ママ自身、心がつらくなるかもしれません。ですが「泣くのも仕事、呼吸の運動をしてくれている」くらいに考えてみてください。多少泣かせておいても大丈夫だと思います。


パパと2人きりだと大泣き!どうすればいい?

ママがお出かけするので、赤ちゃんと2人、2時間の留守番に挑戦しました。これまで2人で留守番したのは30分間の1度だけです。 
最初はおとなしかったのですが、すぐにぐずりだし、おむつを替えたり、ミルクをあげたり、いろいろな方法であやしてみましたが、泣きっぱなしでした。なぜ泣いているのかパパは理由が分かりません。そして、ママが帰ってくるとすぐに泣きやみました。
パパと2人だと大泣きしてしまいます。どうしたらいいのでしょうか?
(5か月の男の子をもつパパより)

日頃から赤ちゃんと接することで認知される

回答:加部一彦さん

ふだんから接する時間が短いと、パパでも「いつもはいない人」になってしまいます。日頃から、できるだけ、短時間でも赤ちゃんと接してください。だんだん認知してもらえるようになります。めげないで、泣かれても、泣かれてもチャレンジしてくださいね。
赤ちゃんにとって「ママがいい」わけではなく、接してきた時間の量が関係しています。まずは、赤ちゃんが「自分のまわりにいる人のひとり」だと認識してくれることが大切です。
存在感というのは常に必要だと思います。

ママとパパが仲良くすることで赤ちゃんが安心する

回答:岩佐寛子さん

まず大事にしてほしいのは、ママとパパが仲良くすることです。ママを大事にしてくれる人、ママと仲のいい人だと感じて、子どもは安心します。
また、パパの帰りが夜遅いのであれば、朝30分でも早く起きて、赤ちゃんと接する時間をもってみましょう。赤ちゃんが安心するには、接した時間がいかに長いかという部分が関係してきます。
休日は、赤ちゃんと一緒にお散歩したり、遊んでみてはどうでしょう。首がすわっていれば「高い、高い」など、パパならではのダイナミックな遊びもよいですね。
パパといたら、楽しいことがいっぱい待っている。そのような雰囲気をつくっていってください。


児童館に連れていっても泣いていて遊べない

5か月ぐらいのときから、児童館などに連れていくと泣いてしまいます。まわりの子はおもちゃなどで楽しそうに遊んでいるのに、だっこからおろすと、その場でずっと泣いてしまいます。だっこすると落ち着きますが、まったく遊べません。
この先、遊べるようになったり、保育園などに通うようになって友達と遊んだりできるのか心配です。
泣いていても、連れていって慣れさせた方がよいのでしょうか。
(8か月の女の子を持つママより)

個人差がありますが、いずれ次のステップへ

回答:加部一彦さん

お子さんによって個人差がありますが、簡単に溶け込む子もいれば、すごく心配でママから離れたくない子もいます。だからといって、その子がずっと離れられないわけではありません。時間がたてば、まわりに興味が広がって、だんだん次のステップへ進みます。
児童館で、泣いて大騒ぎでダメだというならしかたありませんが、多少泣くけど時間がたつと落ち着いて座っていられる程度であれば、通うのも悪くないと思います。

ママと一緒にゆっくり慣れていく

回答:岩佐寛子さん

何度か通ううちに慣れてきたり、スタッフに声をかけてもらって慣れてくることもあります。
「今日は緊張したね。ママも緊張したよ。また一緒に行こうね」と語りかけながら、ママと一緒にゆっくり慣れていくとよいのではないでしょうか。


すくすくポイント
「赤ちゃんの泣き」ベテランママはどうしてる?

赤ちゃんが泣いたとき、どう対応していいのか困ってしまいますよね。
こんなとき、ベテランママはどうしているのでしょうか?

子育て支援施設に伺って、赤ちゃんを預かっているベテランママに対応のポイントを聞いてきました。

この子育て支援施設では、子どもの一時預かりをしています。
今日は、はじめて子どもを預ける夫婦がきていました。11か月になるお子さんは、ママ以外の人にだっこされるとすぐに泣いてしまうそうです。

子どもを預かるのは、4人の子どもを育てているベテランママの畑章子さんです。
赤ちゃんの泣きにどう対応するのでしょうか。

ポイント① ママと仲良くしているところを見せる

まず、赤ちゃんからママが見えるように膝にのせ、少しずつスキンシップをとっていきます。そして、ママと仲良くしているところを見せます。こうすることで、赤ちゃんは畑さんに安心感を持つといいます。

この時間が、とても大事なんだそうです。

ポイント② 赤ちゃんが緊張していたら離さない

その後、いよいよママ・パパとお別れです。
赤ちゃんは、泣きませんでしたが、畑さんの背中をギュッと握っていました。緊張しているのです。

このように、赤ちゃんが緊張している間はだっこして離さないようにしています。
緊張がとけて力が抜けてきたら、だっこをやめても泣かないので、おろしてあげて遊ばせます。

友だちと、ご機嫌で遊んでいましたよ。

ポイント③ ぐずったら気持ちを切り替える

30分後、ぐずりはじめました。畑さんはすぐにだっこして「なにして遊ぼうか?」と声をかけます。

絵本やおもちゃがある部屋に移動して「パンダのいすがあるね」「絵本もあるね」と話しかけます。
このように、ぐずったら気持ちを切り替えられるように、場所を移動したり、別のものに興味がうつるように働きかけます。

ぐずりもおさまって、すっかり絵本に夢中になりました。
こうなると、畑さんがそばを離れても大丈夫です。

そして、パパとママがお迎えにきました。
今日1日、機嫌よく過ごせ、ちょっとたくましくなったみたいです。

ベテランママの3つのポイント。
ぜひ参考にしてみてくださいね。


専門家からのメッセージ

「赤ちゃんの泣き」には個人差がすごくあります。ですので、ほかの子と比べずに、うちの子はこういうタイプなんだと、ありのままにお子さんを受けとめてあげてください。
また、ママが元気に明るく過ごすためには、周りのサポートが欠かせません。ママ自身も、パパや祖父母に「私疲れているのよ。かわってよ。」など気持ちを表現しながら、サポートを受けていただくのも大事だと思います。
不安なことがあっても、いろいろな専門家がいます。相談して、不安を軽くして、子育てをしてください。ママの気持ちが楽になると、赤ちゃんが泣くことが減ってくるかもしれません。
(岩佐寛子さん)

子どもの特徴は、どんどん成長して変わっていくことです。ついこの間までは泣いていたかと思うと、もうあまり泣かなくなったり、動きが出てきたり。
子どもが変われば、ママやパパの心配事も変わっていきます。今は泣いていることに焦点があるかもしれませんが、後から考えれば長い時期ではありません。だっこしてあげるなど、思い切りかわいがってあげてください。
(加部一彦さん)

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです