赤ちゃんは自然に寝てくれるものだと思っていませんでしたか?
しかし実際には、パパママたちは寝かしつけに大苦戦しています。

「どうして寝てくれないの?」「5分で寝る?寝かしつけ法」など、寝かしつけに関する悩みにお答えします。

※すくすく子育て「寝かしつけ大作戦」より

専門家:
黒田公美(理化学研究所・脳科学総合研究センター 脳神経科学)
清水悦子(東京大学大学院後期博士課程・乳幼児の睡眠を研究)

どうしたらスムーズに寝かしつけられるの?

息子がなかなか寝てくれず、寝かしつけるのに毎日2時間以上かかっています。新生児の時から、寝かしつけても寝てくれず、寝ても起きてしまいます。「眠るのが下手な子」と「寝かしつけが下手な親」なようです。
これまで、寝かしつけるために試行錯誤してきましたが、うまく寝かしつけられません。どのようにしたらいいのか悩んでいます。

<ある日の寝かしつけ>
所要時間:2時間38分

夕方、ぐずり始めたため、寝かしつけを始めました。授乳、おもちゃ、絵本、寝たふりと、いろいろな方法を使って寝かしつけを試みましたが、効果はありません。
寝かしつけを始めて1時間が経ったころには、むしろ息子の目が覚めてしまっていました。そのため、一度あきらめて食事の準備などをし、30分後くらいにまた寝かしつけを再開しました。授乳と子守歌でもなかなか寝てくれませんでしたが、おしゃぶりをくわえさせたらやっと寝てくれました。
(8か月の男の子をもつママより)

同じ寝かしつけの方法を毎日繰り返す

回答:清水悦子さん

赤ちゃんにとって、寝方が決まっていないというのは不安な状態です。寝かしつけの方法をいろいろと変えてしまうと、赤ちゃんはどのタイミングで安心して寝てもいいのか、わかりづらくなってしまいます。
「寝る時間」を決め、「毎日同じ寝かしつけの方法」を繰り返しましょう。毎日同じ時間に同じことを繰り返すことが、赤ちゃんにとって安心につながり、寝る合図にもなりますよ。

寝かしつけは外が暗くなってから

回答:黒田公美さん

一昼夜を周期とするリズムを「日周期リズム」といい、このリズムは生後2か月ごろから発達していきます。そして8か月ごろになると、「日周期リズム」が発達し、外が明るい状態ではなかなか眠りにくい状態になります。そのため、特別な事情が無ければ、外が暗くなってから寝かしつけを始めたほうが、寝かしつけがスムーズにいきますよ。

「寝る子」と「寝ない子」の違い
「離乳食の食べ具合」や「ミルクの飲み具合」に赤ちゃんによって個人差があるように、寝つきが難しい子もいます。
赤ちゃんにとってスムーズに寝つくことは、すぐにできることではありません。赤ちゃんは「寝る練習中」です。
他のお子さんと寝付き具合を比べるのではなく、日中の赤ちゃんの機嫌や様子を見て、「これで大丈夫なのかな」と判断してあげてください。


夜泣きの繰り返しは、成長に影響はあるの?

1歳になる息子が、まだ夜中に頻繁に起きています。
「寝ている間に脳の成長が促される」と聞きますが、夜泣きを繰り返すことで成長に影響はあるのでしょうか。
(1歳の男の子をもつママより)

夜泣きによる親のストレスに注意してください

回答:黒田公美さん

夜泣きの多くは一時的なもので、それが将来の子どもの発達や学校の成績に関係することは、ほとんどありません。
しかし、夜泣きがあまりにひどいと、親がストレスのためにまいってしまったり、ひどい場合はうつ状態になってしまったりします。そのことが子どもに伝わり、発達に影響を与えてしまうということはあります。
大切なことは「親が夜泣きによってストレスを溜めない」ということです。
「夜泣きのために、子どもとの関係が難しくなったな」と思うほど夜泣きがつらい場合は、専門家に相談してみてください。

夜泣きには親の負担が少ない対処法を

回答:清水悦子さん

赤ちゃんが夜泣きを繰り返す理由の1つとして、「夜中に起きても親が一生懸命寝かせてくれる」ということが繰り返されたことにより、「起きたらかまってもらえる」と思い起きる、ということがあります。つまり、悪循環が繰り返されているのです。
そのため、「子どもが起きたとしても少しの間気づかないふりをする」ということも1つの方法としてオススメです。とはいえ、気づかないふりをする場合、気づかないふりを何分間続けるのがちょうどいいかは、泣き声に対する強さや弱さは人によって異なりますし、各ご家庭の住宅事情もあるため、一概には言えません。
夜泣きに耐えたほうが楽なのか、おっぱいをくわえさせたら赤ちゃんが寝るのであればそのほうが楽なのか、「どちらがより親の負担が大きいか」という視点を持つことが大切です。
子どもは自分で寝る練習をしてくれます。それを応援しながら待ってあげるというのも、1つのやり方です。

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おっぱいがないと寝てくれない! どうしたらいい?

娘が3か月のころから、添い寝をしておっぱいをあげる寝かしつけをしています。
しかし、夜中に2、3時間に1回は起きてしまうため、体がしんどく、この方法のままでいいのか悩んでいます。
(9か月の娘をもつママより)

赤ちゃん側の事情も理解してみる

回答:黒田公美さん

実は、赤ちゃんが夜中におっぱいを欲しがるのには、2つの理由があります。

【理由1】
授乳をするためには、乳腺が発達していないといけません。しかし、夜間などのようにあまりにも長い間おっぱいを吸わないでいると、多くのママは母乳の量が減ってしまいます。
そのため赤ちゃんは、定期的に起きて乳腺を刺激し、明日飲むおっぱいを作っているのです。これは、赤ちゃんにとって仕事なのです。
そういった意味では、2、3時間おきに必ず起きておっぱいを飲む赤ちゃんというのは、真面目な頑張り屋といえます。

【理由2】
赤ちゃんは定期的に起きることで、親がそばにいることを確認しています。

現代社会では、寝るときは安全な場所で寝ていますし、これらの赤ちゃんの行動は必要不可欠なものではありません。しかしこれらは、2億年近い哺乳類の歴史の中で、赤ちゃんが生きるために続けてきた行動です。
そのため、「今は赤ちゃんにとって大事な仕事をしている時期」、と赤ちゃん側の事情を察してあげましょう。そうすると、親も夜泣きに対して納得がいきやすいですよ。

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きちんと言い聞かせ、新しい寝かしつけ法を

回答:清水悦子さん

添い乳で赤ちゃんが夜泣きを繰り返してしまう理由の1つとして、赤ちゃんがビックリしてしまうということが挙げられます。赤ちゃんはおっぱいが口に入ったまま寝入ってしまうと、おっぱいが口に入っていることで安心して寝ていたのに、起きたときにおっぱいが口に入っていないとビックリして、泣いてしまうのです。
しかし、「添い乳はしんどい」というママの声は多くきかれます。多少赤ちゃんが泣くことは理解したうえで、新しい寝かしつけを試してみることもオススメです。
「新しい寝かしつけにするよ」と赤ちゃんに宣言し、1週間ほど続けると、赤ちゃんも新しい寝かしつけに慣れて、寝てくれるようになってくれます。
一般的な寝かしつけの方法としては、下記のような方法があります。
(1)おなか・背中を優しくトントン
(2)ピッタリと添い寝をして、大きくママの寝息を聞かせてあげる
など、なるべくママの負担にならない方法を1つ選んで、継続するということが大切です。

他にも、赤ちゃんの眠りのためにできることがあります。
次の「赤ちゃんの眠りのために親ができる5つのこと」をご覧ください。

赤ちゃんの眠りのために親ができる5つのこと

お子さんが夜泣きした経験をきっかけに、子どもの眠りを研究するNPOを立ち上げた清水悦子さん。
清水さんオススメの赤ちゃんの眠りのために親ができる5つのことを紹介します。

赤ちゃんの眠りのために親ができる5つのこと

(1)生活リズムを整える

朝は光を浴び、日中は活動的に過ごしましょう。
起きてからの過ごし方が、夜眠くなる時間を左右します。

(2)携帯電話・DVD・パソコンは寝かしつけに使わない

「携帯電話を使ったほうがうちの子は寝てくれる」と思っているママもいるかもしれませんが、かえって興奮して眠れなくなることもあります。
携帯電話などで寝かしつけをされている場合は、なるべく早い段階でやめて、静かな寝かしつけ方法に切り替えましょう。

(3)寝かしつけるときは明かりを消す

明かりをつけるのはお世話をするときだけにし、なるべく暗い環境を心がけましょう。

(4)おやすみ前の行動を決めておく

赤ちゃんはそれぞれに寝る前のこだわりや、こうなったら寝るという予測をしながら生活をしています。夕方あたりからのおおよその「寝かせる流れ」を決めておくと、赤ちゃんも寝かされることを理解しやすくなります。そうすることで、寝かしつけの短縮にもつながりますよ。

(5)寝る前にスキンシップの時間をもつ

寝かせる前、5分でもいいので、静かにゆったりした時間をもちましょう。例えば、絵本の読み聞かせ、授乳、おしゃべりなどがオススメです。子どもが安心して眠れるために、スキンシップは大切ですよ。

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専門家オススメの寝かしつけ法は?

黒田流寝かしつけ法 『だっこして5分歩く』

回答:黒田公美さん

ふだんの寝かしつけでうまくいかない時や、夜になかなか泣き止まずに困った時には、『だっこして5分歩く』方法を一度試してみるとよいかもしれません。

哺乳類の赤ちゃんは「輸送反応」という反応を生まれつき備えています。「輸送反応」とは、哺乳類の子どもが親に運ばれるときに、泣きやんでおとなしくなる反応です。
動物は移動のとき、敵に見つからないように注意しなくてはいけないため、生き延びるための子どもの本能として、親に協力しておとなしくします。この本能が、人間にも備わっていると考えられています。実際の実験でも、だっこして移動を始めると泣いている赤ちゃんの心拍数が下がり、おとなしくなりました。
「輸送反応」は、「泣いている赤ちゃんを泣きやませる」のに即効性があります。また、「寝かしつけ」や、「赤ちゃんが眠りやすい状態までもっていき、赤ちゃんを落ち着ける」ということにも効果がありますよ。

【対象年齢】
効果が出やすいのは生後1~8か月ごろまでです。
それ以上大きい赤ちゃんの場合、体が重くてしんどいです。また、赤ちゃん自身の眠るリズムが大切になってくるので、眠くないときにやっても、うまくいかなくなります。

【注意事項】
(1)決めた時間よりも、時間を延長しないでください。
10分歩いてもダメな場合は、一度お休みをしてください。

(2)赤ちゃんによって個人差があるので、好みに合わせて調節してください。
歩いている途中で寝てしまう子もいれば、刺激がないのが好きな子などで座ったときにはじめて寝られる子もいます。また、抱き方も横抱きが好きな子、縦抱きが好きな子と、赤ちゃんによって好みがあります。好みに合わせて調節してあげてください。

(3)筋力が弱いなど体の心配がある赤ちゃんには、行わないでください。

(4)首がすわっていない赤ちゃんの場合は、しっかりと支えてください。

(5)部屋の中で行う場合、だっこしている人がつまずかないよう部屋の中の物を片づけ、安全確保をしてください。

★ポイント
(1)寝かしつけようと思って歩くのではなく、「用事があって移動する」という気持ちで5分間歩いてください。
寝かしつけようと思って歩くと、ゆっくりになりがちです。5分間と決めたら、その間はできるだけ止まらないように歩いてください。

(2)だっこしている人の体に赤ちゃんのおなかと胸をピッタリくっつけ、グラグラさせないでください。
だっこしている人の体に赤ちゃんの体がピッタリくっついていれば、だっこでも、だっこひもを使ってもかまいません。また、おんぶでも大丈夫です。これはパパにもオススメの方法ですよ。

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暑いときの寝かしつけのコツ・工夫は?

毎日暑く、寝入りばなに赤ちゃんが汗だくになります。暑いときの赤ちゃんの寝かしつけのコツ・工夫を教えてください。
(7か月の女の子をもつママより)

回答:清水悦子さん

寝るときからクーラーをかけるのではなく、その1~2時間ほど前から寝具や家具を冷やしておくと、いいですね。そのあとは、あまり冷やしすぎると寒くなるかもしれませんので、気をつけてください。

回答:黒田公美さん

私自身がクーラーが苦手なこともあり、寝入りばなにうちわで扇いであげています。そうすると、間接的なスキンシップにもなり、肌が汗ばむ季節にもオススメです。


すくすくポイント
赤ちゃんの覚醒スイッチは背中ではなく、おなか側!

赤ちゃんを寝かしつけて布団に置こうとすると、まるで背中のスイッチが入ったかのように泣き出す、そんな経験ありませんか?
寝ていた赤ちゃんが目を覚ます「覚醒スイッチ」。実は背中ではなく、おなか側にあることが最新の研究でわかってきたのです。

今回は、理化学研究所 黒田公美さんによる「赤ちゃんの心拍数を計った実験」により判明した、赤ちゃんを布団に置こうとすると泣き出す理由を、紹介します。

【理由1】落ちてしまうと感じるため

眠った赤ちゃんをおろすとき、背中がまだ布団についていないのにママから赤ちゃんのおなかが離れると、赤ちゃんはママから離れて落ちてしまうのではと感じ、急に心拍数が上がり、目を覚ますと考えられます。

【理由2】体勢が変わる刺激のため

寝かせるときに、体が丸まった状態から、背中や股関節が伸びると、その刺激で目が覚めやすいと考えられます。

眠った赤ちゃんを布団に置くときのポイント

「赤ちゃんのおなかとママの体を密着させたまま、そっと布団におろす。」
布団におろしたら、赤ちゃんが寝ていることを確認してから、ゆっくりと体を離していきましょう。
目を覚ますスイッチがあるのは背中ではなく、おなか側ですよ。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです