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NHK静岡 放送を支える鉄塔! 色や形の違い知っていますか?

技術のお仕事シリーズ
  • 2023年10月02日

技術のお仕事シリーズ。今回は静岡県内各地に建てられている鉄塔について紹介します。鉄塔はテレビやラジオ放送を届けるための重要設備です。近くで見ることは少ないかもしれませんが、色や形の違いなど、それぞれの役割をお伝えしながら鉄塔の魅力に迫っていきます。(NHK静岡 技術グループ)

鉄塔の役割は?

NHKはテレビやラジオの番組を制作し、視聴者に届けるまでが仕事です。番組を電波に乗せてみなさまに届けるために、鉄塔は欠かせない存在です。電波が遮られないように高い位置にアンテナを設置します。

伊東市 伊東池TV中継放送所の鉄塔

静岡県では日本平デジタルタワーや浜松放送所の鉄塔などは市内からも見えるので、目にしたことがあるのではないでしょうか。 静岡県内でNHKの関わっている鉄塔の数は、およそ100本あります。テレビやラジオ放送用のほか、ロボットカメラや取材映像の伝送用など目的は様々です。

下田市 爪木崎 取材映像伝送用鉄塔

建っている場所に違いはあるの?

鉄塔が建てられている場所は静岡県の人口分布や地形をはじめ、電波の強さや鉄塔の高さを計算して適切な場所を選んでいます。現在は、新しく建設することは少ないのですが、放送が始まった当時は、土地を管理している方の協力を得て、多くの鉄塔が建てられていったことを思うと感慨深いものがあります。

テレビとラジオでは割当られている周波数の違いによって、波の伝わり方が異なり電波の届き具合も変わってきます。少し詳しくなりますが、
・テレビ(UHF帯)やFMラジオ(VHF)は見通せる距離や場所に届く直接波 
・AMラジオ(MF帯)は地表面に沿って電波が届く地表波 という特性の違いがあります。
そのためテレビの鉄塔は見通しがよい高台に、AMラジオの鉄塔は市街地に建てられていることが多いです。

菊川市 小笠TV中継放送所の鉄塔(山頂にあります)

鉄塔の色の違いは?

鉄塔によって赤と白の模様であったり、銀一色であったりしますが高い鉄塔の色には 意味があります。

5月ころの浜松放送所 新旧鉄塔が並ぶ
*赤白鉄塔については10月には撤去

高い鉄塔は航空機の航行の安全を確保するために、色を塗ることが法律で定められています。 ただし60m以上の鉄塔では中光度以上のライト(白色航空障害灯)を設置する場合に、色をつけなくても良いとされています。 最近建て替えを行った浜松放送所の鉄塔ではライトを設置したため以前の赤白塗装でなく銀色の鉄塔となりました。

浜松放送所 航空障害灯
中光度航空障害灯

色については塗る範囲は鉄塔の高さによって数や順番が決まっています。

赤白の塗装は、経年劣化で剥がれてしまうので定期的に人の手で再塗装しています。 写真は静岡市内にある宮竹ラジオ放送所の塗装作業です。

鉄塔上部にある頂冠(ちょうかん)と呼ばれる部分も塗装していきます。また鉄塔自体も経年劣化するので、そちらの補修も行っています。塗装は、およそ10年に一度点検しています。

2019年 鉄塔補修時の様子

鉄塔の形の違いは?

NHKでは設置場所や電波の種類によって、鉄塔の構造を使い分けています。 
・テレビ用か、ラジオ用か
・確保できる敷地の面積はどれくらいあるのか
・鉄塔の高さは何m必要か 
静岡県では主に2種類(トラス式と支線式)の構造で、鉄塔が建てられています。

トラス式鉄塔は代表的なもの。安定性に優れており、高い鉄塔を立てるときに採用される傾向があります。東京タワーやエッフェル塔がこのタイプです。静岡県内の TV放送所の多くもトラス式鉄塔が採用されています。

島田市 大代局(放送電波を中継する役割)
掛川市 粟ヶ岳 取材映像伝送用基地

支線式鉄塔は三方からワイヤーで鉄塔を支えているのが特徴です。ワイヤーが広がる分だけ広い敷地 が必要で、主にAMラジオ用の鉄塔として使用されています。静岡県では宮竹ラジオ放送所(静岡市)、鼠野ラジオ放送所(浜松市)等のAMラジオ用放送所で支線式鉄塔が採用さ れています。

浜松市 鼠野ラジオ中継局

なぜ形が違う?

鉄塔の形の違いは、周波数(波長)の違いに由来しています。AMラジオの波長は、テレビと比べると、最大で500倍以上にもなります。この長い波長を実現するには、アンテナも長くする必要があります。例えば、NHK静岡のラジオ第一の周波数882kHz(県中部の場合)を発信するのには、アンテナの長さは最低でも85m。このため鉄塔全体をアンテナとして利用するので、細長い構造になっているんです。鉄塔全体に電気を流しているので、触ると感電します。

静岡市 宮竹ラジオ放送所

災害対策

鉄塔には災害時でも放送が継続できるように様々な対策が施されています。 
・落雷対策 
これだけ高い鉄塔には落雷のリスクもあります。テレビやFMラジオの鉄塔には避雷針を設置、AMラジオ鉄塔は支線等を通して、雷を地面に逃がすことで放送設備に影響がでないように落雷対策を施しています。

・地震、台風対策
支線式鉄塔は3方向から引っ張ることで鉄塔を固定しています。地震や台風の際でも鉄塔が倒れないように適切な張力を管理しています。

目に見える部分より大きなコンクリートが地中に埋まっており、支線アンカーが抜けない構造になっています。東日本大震災時でも東北地方の支線式鉄塔は倒れることはありませんでした。

支線アンカー部分

・津波対策 
AMラジオ放送所は海岸から比較的近い位置にあるため、津波の危険も考慮し、放送設備や電源設備等、重要な設備は高い位置に設置しています。

宮竹ラジオ 放送所

県内あまねく場所に放送を届けるために、鉄塔は建てられています。 無機質な鉄塔ですが、見かけた時にはその形から役割を想像してみると愛着が沸いてくるかもしれませんね。

  • 尾関 俊紀

    静岡・技術

    尾関 俊紀

    2011年入局
    電波を守る仕事を担当しています

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