安倍元首相「国葬」費用 総額16億6000万円程度の概算公表 政府

安倍元総理大臣の「国葬」にかかる全体の費用の概算について、政府は、今年度予算の予備費から支出を決めているおよそ2億5000万円に、警備費や外国要人の接遇費など14億円あまりを加え、総額で16億6000万円程度となる見通しを示しました。

これは、松野官房長官が、6日の記者会見で明らかにしました。

それによりますと「国葬」の実施には、政府が、会場設営費などとして、今年度予算の予備費からすでに支出を決めているおよそ2億5000万円に、警備や外国要人の接遇費などとして、14億円あまりが追加される見込みだとしています。

追加となる費用の内訳は、
▼警備費が、各地からの警察官の派遣旅費や超過勤務手当などにあわせて8億円程度、
▼外国要人の接遇費が、車両の手配や空港の受け入れ体制の構築などにあわせて6億円程度、
▼自衛隊の儀じょう隊が使用する車両の借り上げなどに1000万円程度としています。

これにより「国葬」にかかる費用の総額は、16億6000万円程度となる見通しです。

一方、これまでのまとめでは、参列に訪れる海外の代表団は190以上で、特に接遇を要する首脳級などの代表団は50程度と見込まれるとしています。

安倍元総理大臣の「国葬」の費用について、政府は、全体の詳細は実施後に示すとしてきましたが、野党側が、国会の閉会中審査を前に、大枠を示すよう求めていました。

概算を公表した理由について、松野官房長官は、記者会見で「岸田総理大臣から丁寧に説明するよう指示を受けたうえでの判断だ。引き続き国民に理解してもらえるよう努めていく考えだ」と述べました。

「国葬」流れ決定 菅前首相が追悼の辞

安倍元総理大臣の「国葬」の式次第にあたる流れが決まり、友人代表として、第2次安倍政権で一貫して官房長官を務めた菅前総理大臣が追悼の辞を述べることになりました。

9月27日に東京の日本武道館で行う安倍元総理大臣の「国葬」について、葬儀委員長を務める岸田総理大臣は、6日、式次第にあたる流れを決め、松野官房長官が記者会見で発表しました。

それによりますと「国葬」は、葬儀副委員長を務める松野官房長官による開式の辞に続いて、国歌の演奏や黙とうが行われたあと、安倍元総理大臣の生前の活動をまとめた映像を上映するとしています。

そして、岸田総理大臣のほか、衆・参両院の議長、最高裁判所長官の三権の長に加え、友人代表として、第2次安倍政権で一貫して官房長官を務めた菅前総理大臣が追悼の辞を述べることになっています。

さらに、天皇皇后両陛下と上皇ご夫妻の使いによる拝礼が行われたあと、参列者による献花などが行われることになっています。

菅前総理大臣が追悼の辞を述べる理由について、松野官房長官は、記者会見で「遺族の意向を聞き、長きにわたり総理大臣の職にある間、密接に仕事をともにした方が、友人を代表して追悼の辞を読むのにふさわしいと考えた」と述べました。

葉梨法相「法務省は弔旗 黙とう」

葉梨法務大臣は閣議のあとの記者会見で「法務省としては、葬儀委員長の決定に基づき、国葬の当日は弔旗を掲げること、一定の時刻に黙とうをささげることを考えている」と述べました。

そのうえで「もちろん職員全員に強制することではないが、ここの施設で職員にアナウンスをして弔意を捧げるということだ」と述べました。

自民 茂木幹事長「丁寧に説明続けていくこと重要」

自民党の茂木幹事長は、記者会見で「一定の前提を置いたうえでの概算の見通しとして、政府からすでに概要の報告を受けた。国民に対して『国葬』の意義や内容、かかる費用について、丁寧に説明を続けていくことが重要だと考えている」と述べました。

公明 山口代表「外国要人参列や警備でより費用かかる面も」

公明党の山口代表は、記者会見で「外国からの要人が多数、参列されると見込まれ、きちんと接遇するには。それなりの費用がかかる。また、安倍元総理大臣が銃撃で命を落としたこともあり、警備に対する手厚い対応が求められ、より費用がかかる面もある。国会での審議の機会があれば、岸田総理大臣から丁寧にわかりやすく説明を尽くしてもらいたい」と述べました。

また、友人代表として、菅前総理大臣が追悼の辞を述べることについて「長い間、官房長官として、安倍元総理大臣とともに活動し、政権を支える大事な役割を担ったことや、遺族の意向も踏まえてお願いすることになったと岸田総理大臣から連絡をいただいていた。判断を尊重したい」と述べました。

衆院議運 与党側筆頭理事 盛山氏「費用の概算 野党に示す」

安倍元総理大臣の「国葬」にかかる全体の費用の概算について、政府が見通しをまとめたことを受け、「国葬」をめぐる閉会中審査の日程協議を続けている衆議院議院運営委員会の与野党の筆頭理事が会談しました。

このなかで、与党側は政府がまとめた資料を説明したうえで、閉会中審査を速やかに開催したい考えを伝えたのに対し、野党側は、費用の概算の積算根拠を示すよう求めました。

そして、閉会中審査の日程や質疑時間については、引き続き協議することになりました。

このあと、与党側の筆頭理事を務める自民党の盛山正仁氏は記者団に対し「野党側から、国葬の費用の概算を明らかにしないと閉会中審査に応じられないと言われていたので、政府がまとめた資料を示した。閉会中審査の協議については、お互い党に持ち帰って今後の方針を検討することになった」と述べました。

野党 さらに精査求めること確認

衆議院議院運営委員会の与野党の筆頭理事による会談のあと、立憲民主党、日本維新の会、共産党、国民民主党の理事らが、今後の対応を協議しました。

この中では、政府が示した費用の概算は、警備にかかる費用の積算根拠などが不十分だとして、政府に対し、さらに精査するよう求めていくことを確認しました。

立民 安住国対委員長「国民に対し不誠実な対応で残念」

立憲民主党の安住国会対策委員長は、記者団に対し「最初からよく調べた上で出してくればよいのに小出しにしていて『国葬』に反対が強いからできるだけ税金はかからないように小さく見せかけようという、姑息なやり方に見えてしかたない。国民に対して不誠実な対応で残念だ。政府はもっと堂々とやってほしい」と述べました。

その上で「野党が連携した結果、政府が当初支出を決めた費用の6.6倍に跳ね上がったが、これで『ファイナルアンサー』だとは思っていないので、国会の閉会中審査までにもう少し踏み込んだ額を出すよう野党全体で要求していく」と述べました。

国民 玉木代表「政府の説明 後手後手」

国民民主党の玉木代表は記者会見で「経費の全体像が示されたことは評価するが、なぜもっと早く出せなかったのか。不信感を招いているし、世論調査で『国葬』に反対の人が増えている原因の1つなっている。政府の説明が後手後手になっていることは遺憾だ」と批判しました。

そのうえで、岸田総理大臣に対し、国民が納得できる丁寧な説明を求めていく考えを示しました。

また、みずからの「国葬」への対応について「国内外から弔意が多数示されており、『国葬』を行うことは理解する」と述べ、招待があった場合は出席する意向を示しました。

社民 福島党首「法的根拠がない」国葬出席せず

安倍元総理大臣の「国葬」について、社民党の福島党首は「法的根拠がない」などとして、出席しない考えを示しました。

安倍元総理大臣の「国葬」をめぐり、社民党の福島党首は記者会見で「『国葬』に反対で、最大の理由は法的根拠がないことだ。『法の下の平等』や思想・良心の自由を侵害する可能性がある」と指摘しました。

その上で「国民の半数以上が反対し、法的根拠がないなかで、出席することはできない」と述べ「国葬」に出席しない考えを示しました。

また「国葬」にかかる全体の費用の概算を政府が示したことについて、福島氏は「本当にこれで済むのか。初めは低く見積もり、終わったら実は多額だったとか、多額だったことを隠すということも起こりうるのではないか」と述べました。