解説 安倍晋三元首相死去 政界に強い衝撃 各党予定通り選挙活動

奈良市で演説をしていた安倍元総理大臣が、男に銃で撃たれ亡くなりました。政界には強い衝撃が広がっていて、与野党双方から選挙期間中の卑劣な犯行で断じて許してはならないなどと、非難の声が相次ぎました。

7月8日昼前、奈良市で参議院選挙の応援演説をしていた安倍元総理大臣が男に銃で撃たれ、病院に運ばれましたが、午後5時すぎに死亡が確認されました。

通算で歴代最長の8年8か月、総理大臣を務めた自民党の実力者が銃撃されて亡くなったことに、政界には強い衝撃が広がっています。

与野党9党の党首らは、哀悼の意を示すとともに、今回の犯行を強く非難しました。

自民党総裁の岸田総理大臣は「民主主義の根幹たる選挙が行われている中、卑劣な蛮行が行われた。断じて許せるものではなく最も強いことばで非難する。偉大な政治家をこうした形で失い、残念でならない」と述べました。

立憲民主党の泉代表は「心からご冥福をお祈りするとともに、断固として非難したい。このようなテロ行為に屈してはならず、言論や政治活動の萎縮はあってはならない」と述べました。

公明党の山口代表は「このような結果になり激しい憤りを感じている。暴挙を断じて許してはならない。言論封殺をはね返し民主主義の本来あるべき姿を示していきたい」と述べました。

日本維新の会の馬場共同代表は「ユーモアのある、ウィットにとんだ会話もよくしていただいたし日本にとっては非常に貢献いただいた、けうな政治家で、国益を逸し非常に残念だ」と述べました。

国民民主党の玉木代表は「民主主義に対する重大な挑戦であり脅威だと思う。わが党としても強い怒りと悲しみを持って非難する」と述べました。

共産党の志位委員長は「政治的立場は異にしていたが、同時代をともに生きた者として大変悲しくさみしい。卑劣なテロによる言論の封殺は絶対に許してはならない」と述べました。

れいわ新選組の山本代表は「自分の中で整理がつかない。言論を暴力で封じようとすることに対して徹底的にあらがっていかないといけないと誓うしかない」と述べました。

社民党の福島党首は「改めてテロに強く抗議する。そして、心から哀悼の意を表します」と述べました。

NHK党の立花党首は「二度と起きないようにするにはどうしたらいいのか考えなければならない」と述べました。

参議院選挙の選挙戦最終日の9日、政府は、閣僚ら要人の警護や候補者の演説会場などの警備を改めて徹底することにしています。

選挙戦最終日 “選挙は民主主義の根幹 予定通り活動”

参議院選挙は、7月10日投票日を迎えます。選挙戦最終日の9日、各党の党首らは接戦と見ている選挙区などで支持を呼びかけることにしています。

自民党の安倍元総理大臣が演説中に銃で撃たれたことを受けて、多くの党は、8日、幹部らの応援演説を取りやめるなどしましたが、いずれの党も、選挙は民主主義の根幹であり、暴力に屈しない姿勢を示す必要があるとして、9日は予定通りに活動する方針です。

自民党総裁の岸田総理大臣は、接戦と見ている山梨と新潟で街頭演説を行い、ウクライナ情勢に伴う物価高騰や新型コロナの感染拡大に着実に対応するためには、政治の安定を確保することが重要だと訴える方針です。

立憲民主党の泉代表は、福島、京都、神奈川で街頭演説を行い、消費税の時限的な減税をはじめとした物価高騰対策など生活者の目線に立った政治を進めると訴えることにしています。

公明党の山口代表は、重点選挙区に位置づける神奈川で街頭演説を行い、連立政権で進めてきた経済政策や社会保障改革の取り組みを続ける必要があるとして、支持を呼びかける方針です。

日本維新の会の松井代表は、京都と大阪で街頭演説を行い、大阪で進めている行財政改革を全国で行い、教育や出産の無償化など「将来世代への投資」を進めると訴えることにしています。

国民民主党の玉木代表は、神奈川、東京、福岡、大阪、愛知で街頭演説を行い、積極財政と金融緩和によって「給料が上がる経済」を実現すると訴えることにしています。

共産党の志位委員長は、埼玉、神奈川、東京で街頭演説を行い、憲法9条をいかした平和外交や物価高騰対策としての、消費税の減税を訴える方針です。

れいわ新選組の山本代表は、東京都内で街頭演説を行い、物価高騰に対する最も有効な対策は消費税の廃止だと訴えることにしています。

社民党の福島党首は、神奈川と東京で街頭演説を行い、防衛力の大幅な増強や憲法改悪には反対だと訴えることにしています。

NHK党の立花党首は、東京都内で街頭演説を行い、年金受給者のNHK受信料の無料化を訴えることにしています。

街頭演説ができるのは9日夜8時までで、各党の党首や候補者らは、ぎりぎりまで支持を呼びかけることにしています。

解説 政権運営や参議院選挙への影響は

今後の政界への影響は
安倍氏は歴代最長政権を築き、当時「安倍1強」とも言われた。
総理大臣退任後は自民党最大派閥のトップを務め、政策面でも積極的に発言し、影響力と存在感を示してきた。
岸田総理としても、内政・外交ともに、安倍氏の求心力を頼りにしながら、政権を運営してきた面がある。
ある政府関係者も「政治の大きな流れが変わることは確かだ」と話し、自民党内の力学や政権運営の手法などに変化が生じてくることも予想される。

参議院選挙への影響
事件が起きた当日は選挙運動を見合わせた党もあったが、選挙戦最終日の9日は与野党とも暴力に屈しない姿勢を示す必要があるとして、通常どおり行う予定。
政府としても、閣僚や与野党幹部の警護や、各候補者の演説会場などの警備も改めて徹底する方針。
背景には、今回の事件が選挙の実施に影響すれば民主主義の根幹を揺るがしかねないという与野党超えた共通の理解があると思われる。
有権者も、自由で公正な選挙を守ることの意味をいま一度考えることが求められている。