値上げ相次ぐ 日銀黒田総裁“値上げ許容度”発言を陳謝

ユニクロ 秋冬物の一部商品値上げへ 原材料価格や物流費高騰で

値上げの発表が相次いでいます。
「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、原材料価格や物流費などの高騰を受けて、ことしの秋冬物のユニクロの商品のうち、定番の衣料品の一部を値上げすることを6月7日、明らかにしました。

ファーストリテイリングによりますと、ユニクロで販売することしの秋冬物の一部の定番商品について、素材や機能などを見直したうえで値上げします。

対象品目の数は明らかにしていませんが、主な商品ではいずれも税込みで、フリースがこれまでの1990円から2990円に、ダウンジャケットが5990円から6990円に、それぞれ1000円引き上げられます。

このほか、長袖の機能性肌着「ヒートテック」のうち、より性能の高い2つの商品を490円から1000円引き上げます。

値上げの理由について会社では、化学繊維をはじめとする素材の価格や物流費などが、コロナ禍からの経済の回復やロシアによるウクライナ侵攻などを背景に高騰し、企業努力だけでは吸収できないためだと説明しています。

商品の価格をめぐっては、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長がことし4月の会見で「上場企業なので収益と成長を目指す中で利益がなければできない。考え抜いた価格であれば理解してもらえると思う」と述べ、値上げの可能性を示唆していました。

「コカ・コーラ」10月から値上げ 原材料価格や物流費など上昇

大手飲料メーカーの「コカ・コーラ ボトラーズジャパン」は、ペットボトルの調達コストやエネルギー価格の上昇を受け、ことし10月からペットボトル入りの飲料などの値上げを決めました。

6月7日の発表によりますと、対象となるのは、コーラや緑茶といったペットボトル入りの飲料などおよそ120品目で、ことし10月1日の出荷分から希望小売価格で6%から18%値上げするとしています。

このうち500ミリリットルのペットボトル入りの「コカ・コーラ」は、税抜きで現在の140円から160円になります。

このほか、一部のアルコール飲料も値上げする予定です。

値上げの理由について会社では、ペットボトルの調達コストや砂糖などの原材料価格が上昇しているほか、エネルギー価格の高騰で物流費なども上昇しているためだと説明しています。

会社では5月にも1.5リットルと2リットルのペットボトル入りの商品価格を一部、引き上げていて、コストの上昇分を企業努力だけで吸収することが難しくなっているとしています。

飲料大手では「サントリー」や「アサヒ飲料」、「伊藤園」、それに「キリンビバレッジ」もペットボトル入りの主な商品についてことし10月からの値上げをすでに発表しています。

日銀黒田総裁“値上げ許容度”発言を陳謝

日銀の黒田総裁は、6月6日の講演で「家計の値上げ許容度も高まってきている」などと述べたことについて、7日夕方、記者団に対し「誤解を招き、表現が適切ではなかった」と述べ、陳謝しました。

黒田総裁は6日の講演で「家計の値上げ許容度も高まってきているのは重要な変化と捉えられる。日本の家計が値上げを受け入れている間に、賃金の本格上昇にいかにつなげていけるかが当面のポイントだ」などと述べました。

この発言について、黒田総裁は7日夕方、記者団に対し「家計が自主的に、値上げを受け入れているという趣旨ではなく、むしろ家計としてはいわば苦渋の選択として、やむをえず値上げを受け入れているという状況だと思う。誤解を生じるような言い方は、表現は適切ではなかった」と述べました。

そのうえで「賃上げの必要性がより高まっているという文脈で申し上げたわけで、家計が自主的に値上げを受け入れているという趣旨ではない。誤解を招いた表現だったということで、申し訳ないと思っている」と述べ、陳謝しました。

松野官房長官「景気の下振れリスクに十分注意する必要」

日銀の黒田総裁が講演で食料品などの価格の高騰をめぐり「家計の値上げ許容度も高まってきている」と述べたことについて、松野官房長官は記者会見で、「発言の一つ一つにコメントすることは差し控える。ウクライナ情勢などに伴う原油価格や物価の高騰がマインドの悪化や実質購買力の低下を通じて民間消費や企業活動を下押しするなど、景気の下振れリスクには十分注意する必要がある」と述べました。

そのうえで「ガソリンや小麦などの国内価格の上昇を抑制するとともに、生活困窮者や低所得者など真に困窮されている方々にきめ細かく支援を行うなど、緊急対策に盛り込まれた施策を国民に迅速に届けたい」と述べました。

立民 泉代表「全く生活実感がなく無神経だ」

立憲民主党の泉代表は、党の常任幹事会で「円安がおよそ20年ぶりの水準になり、政府・日銀が何も対策を示さない中、より一層国民の生活は苦しくなってきている。そういう中での日銀総裁の発言は、全く生活実感がなく、無神経だ。国民は値上げされても買わざるをえないものを買っているのであって、何も許容しているわけではない。この感覚の大きなずれがあるのが今の政府・日銀だ」と述べました。

共産 小池書記局長「許しがたい発言だ」

共産党の小池書記局長は、記者会見で「日銀の異次元の金融緩和による異常な円安が物価高の大きな要因であり、みずから物価高を作り出す役割を果たしながら、これは受け入れられると言ってのけるというのは厚顔無恥というほかなく、許しがたい発言だ。日銀がやるべきことは異次元の金融緩和路線を直ちに中止し、今の異常円安に対する手だてを打つことだ。猛省を促し、政策転換を強く求めたい」と述べました。

日銀担当者「真摯に受け止めたい」

立憲民主党は7日午後、日銀の担当者を呼んでヒアリングを行いました。

出席した議員からは「『しぶしぶ』や『やむをえず』値上げを受け入れて買っている人が多く、『許容度も高まってきている』というのは不適切な表現だ」、「発言は国民の生活実感と全くずれている。撤回すべきだ」などといった批判が相次ぎました。

これに対し、日銀の担当者は「物価上昇についていろんな受け止め方があることは真摯(しんし)に受け止めたい」と述べました。