北朝鮮弾道ミサイル 岸田首相「許せない暴挙で断固非難」

24日午後、北朝鮮から弾道ミサイル1発が発射され、北海道の沖合の日本のEEZ=排他的経済水域の内側に落下したとみられます。これまでのところ、日本の航空機や船舶の被害などの情報は確認されていないということです。
防衛省は、発射されたのは、新型のICBM=大陸間弾道ミサイル級とみて情報収集と分析を続けています。

飛行時間は71分 北朝鮮の発射したミサイルで最長

防衛省によりますと、24日午後2時33分ごろ北朝鮮の西岸付近から弾道ミサイル1発が東の方向に発射されました。

弾道ミサイルは午後3時44分ごろ、北海道の渡島半島の西、およそ150キロの日本海、日本のEEZの内側に落下したとみられるということです。

一方、防衛省関係者によりますと、発射後、弾道ミサイルの一部が日本のEEZの外側に落下したということで、推進装置などの可能性があるとみられています。

北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本のEEZの内側に落下したとみられるのは、去年9月15日以来です。

防衛省によりますと、発射された弾道ミサイルは、飛行距離がおよそ1100キロ、最高高度は6000キロを超えてこれまで発射された弾道ミサイルの中で最も高かったと推定され、新型のICBM=大陸間弾道ミサイル級のものが、通常より角度をつけて打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射されたとみられるということです。また、71分という飛行時間はこれまでの発射で最長だということです。

防衛省によりますと、これまでのところ、日本の航空機や船舶の被害などの情報は確認されていません。

防衛省は、引き続き情報収集や分析を進めるとともに警戒・監視に万全を期すことにしています。

北朝鮮 朝鮮中央通信「新型ICBM『火星17型』発射実験に成功」

北朝鮮は24日、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の立ち会いのもと、新型のICBM=大陸間弾道ミサイル「火星17型」の発射実験に成功したと25日発表しました。
北朝鮮が「火星17型」の発射を発表したのは初めてです。

これは、25日付けの北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」が1面で伝えたものです。

それによりますと「きのう、キム・ジョンウン総書記の立ち会いのもと、新型のICBM=大陸間弾道ミサイル『火星17型』の発射実験に成功した」ということです。

発射はキム総書記が23日に下した命令を受け、首都ピョンヤン郊外のスナン(順安)にある国際空港から日本海に向けて、通常より角度をつけて高く打ち上げる「ロフテッド軌道」で行われ「最高高度は6248.5キロに達し、1090キロの距離を1時間7分32秒飛行して、予定された水域に正確に着弾した」としています。

キム総書記は「強力な核戦争抑止力を質・量ともに持続的に強化する。アメリカ帝国主義との長期的な対決に徹底して準備していく」と述べ、アメリカを強くけん制しました。

1面から4面にかけて掲載された写真では、片側11輪の移動式発射台に搭載された弾道ミサイル1発が、垂直に立ち上げられたあと、オレンジ色の炎を吹き出しながら上昇していく様子などが確認できます。

北朝鮮が「火星17型」の発射を発表したのは、これが初めてで、きのう午後に発射され、北海道の渡島半島の西、およそ150キロの日本のEEZ=排他的経済水域の内側に落下したとみられるICBM級の弾道ミサイルを指すとみられます。

北朝鮮は、アメリカとの史上初の首脳会談を前にした2018年4月にICBMの発射実験と核実験の中止を表明していて、ICBM級の本格的な発射は2017年11月の「火星15型」以来です。

今回の発射によって、北朝鮮がことし1月に示唆したとおり、ICBMの発射実験の中止を見直したことが明確になった形です。

北朝鮮は、来月にキム総書記の祖父キム・イルソン(金日成)主席の生誕110年などの重要な節目を控え「偵察衛星の打ち上げ」と称してICBM級のさらなる発射を強行する可能性も指摘されていて、関係国の警戒が一段と強まっています。

「火星17型」とは

北朝鮮が24日発射したと発表した新型のICBM=大陸間弾道ミサイル級の「火星17型」は、おととし10月、朝鮮労働党の創立75年に合わせてピョンヤンで行われた軍事パレードで初めて公開されました。

パレードでは、これまでの北朝鮮のミサイルの中で最も長い片側11輪の車両に載せられ「巨大な核戦略兵器」と紹介されていました。

その大きさは、2017年11月に片側9輪の移動式発射台から発射されて最高高度が4000キロを超え、北朝鮮が「アメリカ本土全域を攻撃できる」と主張したICBM級の「火星15型」を上回っていました。

去年10月にピョンヤンで最新の兵器を集めて開かれた「国防発展展覧会」でも、このミサイルが展示されていたのが確認され、関係国が警戒と監視を強めていました。

首相「EEZ内落下 許せない暴挙であり断固として非難」

G7=主要7か国の首脳会議に出席するためベルギーを訪れている岸田総理大臣は、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを受けて、日本時間の午後5時すぎに記者団の取材に応じました。

この中で岸田総理大臣は「先ほど、北朝鮮が新型ICBMと思われる弾道ミサイルを発射し、わが国の領海に近いEEZ内に落下した。許せない暴挙であり断固として非難する」と述べました。
また政府専用機の機内で松野官房長官から電話で状況報告を受け、NSC=国家安全保障会議の閣僚会合を速やかに開催するよう指示したと説明しました。
そのうえで「北朝鮮はことしに入ってから、新型ICBMを含め、高い頻度で弾道ミサイルの発射を繰り返しており、一連の北朝鮮の行動はわが国や地域、国際社会の平和と安全を脅かすもので、断じて容認することはできない」と述べました。
そして「今回の弾道ミサイル発射は関連する安保理決議に違反するもので強く非難する。すでに北朝鮮に対しては抗議を行っている。引き続きアメリカなどとも緊密に連携しながら、情報収集、警戒監視に全力をあげ、わが国の平和と安全の確保に万全を期していく」と強調しました。
さらに岸田総理大臣は北朝鮮への制裁を含めアメリカや韓国をはじめとする関係国と連携して対応するとともに、G7首脳会議でも北朝鮮の弾道ミサイル発射への対応で連携を確認したいという意向を示しました。

防衛相「新型ICBM級弾道ミサイルであると考えられる」

北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを受けて開かれたNSC=国家安全保障会議のあと、岸防衛大臣は参議院外交防衛委員会に出席し、今回の発射について報告しました。

このなかで岸大臣は「北朝鮮は、きょう午後2時33分ごろ、北朝鮮の西岸付近から1発の弾道ミサイルを東方向に向けて発射した。詳細については現在、分析中だが、発射された弾道ミサイルは、およそ71分、飛しょうし、午後3時44分ごろ、日本海のEEZ=排他的経済水域内に落下したものと推定される」と述べました。

そのうえで「弾道ミサイルの飛しょう距離は1100キロ、最高高度は6000キロを超えると推定される。落下地点は、北海道渡島半島西方150キロだ」と述べました。また岸大臣は「今般の発射はわが国の安全保障に対する深刻な脅威だ。何らの事前の通報もなく、わが国のEEZ=排他的経済水域内に着弾させたことは、航空機や船舶の安全確保の観点からも極めて問題がある行為で、深刻な懸念を表したい」と述べました。

そして「今回の弾道ミサイルが、2017年11月のICBM=大陸間弾道ミサイル級の弾道ミサイル『火星15号』の発射時を大きく超えるおよそ6000キロ以上の高度で飛しょうしたことを踏まえれば、今回、発射されたものが新型ICBM級弾道ミサイルであると考えられるが、詳細については引き続き分析中だ」と述べました。

官房長官「わが国の安全保障に対する深刻な脅威」

松野官房長官は、記者会見で「北朝鮮はきょう午後2時33分ごろ、北朝鮮西岸付近から、1発の弾道ミサイルを東方向に発射した。詳細には現在分析中だが、発射された弾道ミサイルはおよそ71分飛翔し、午後3時44分ごろ北海道渡島半島の西方、およそ150キロの日本海、わが国の排他的経済水域に落下したものと推定される。飛翔距離はおよそ1100キロメートル、また最高高度は6000キロメートルを大きく超えると推定される」と述べました。

そして「今般の発射は、わが国の安全保障に対する深刻な脅威だ。また、何らの事前の通報もなくわが国のEEZ=排他的経済水域内に着弾させたことは、航空機や船舶の安全確保の観点から極めて問題のある危険な行為であり深刻な懸念を表する」と述べました。
そのうえで「付近を航行する航空機や船舶への情報提供を行ったところ、現時点で被害報告などの情報は確認されていない」と述べました。

また「岸田総理大臣に直ちに報告し、情報収集と分析に全力をあげ、国民に対して迅速的確な情報提供を行うこと、航空機や船舶などの安全確認を徹底すること、不測の事態に備えて万全の体制をとることとの指示があった」と述べました。
そのうえで「官邸危機管理センターに設置している北朝鮮情勢に関する官邸対策室で、関係省庁間で情報を集約するとともに、緊急参集チームを招集し対応を協議した。岸田総理大臣からはNSC=国家安全保障会議を開催するよう指示があり、先ほど国家安全保障会議の4大臣会合を開催した」と述べたほか「国民の生命や財産を守り抜くため、引き続き情報の収集分析や警戒監視に全力を挙げ、今後追加して公表すべき情報を入手した場合は、速やかに発表したい」と述べました。

そして「今回の弾道ミサイルが2017年11月のICBM級弾道ミサイル『火星15号』の発射時を大きく超えるおよそ6000キロメートル以上の高度で飛しょうしたことを踏まえれば、今回発射されたものが、新型のICBM級弾道ミサイルであると考えられるが、詳細については引き続き分析中だ」と述べました。

北朝鮮の「ICBM」級とみられる新型ミサイルとは

北朝鮮のICBM=大陸間弾道ミサイル級とみられる新型ミサイルは、おととし10月、朝鮮労働党の創立75年に合わせてピョンヤンで行われた軍事パレードで初めて公開されました。

このミサイルの名称は明らかにされていませんが、これまでの北朝鮮のミサイルの中で最も長い片側11輪の車両に載せられ「巨大な核戦略兵器」と紹介されていました。その大きさは、2017年11月に、片側9輪の移動式発射台から通常より角度をつけて高く発射されて最高高度が4000キロを超え、北朝鮮が「アメリカ本土全域を攻撃できる」と主張したICBM級の「火星15型」を上回っています。

去年10月にピョンヤンで最新の兵器を集めて開かれた「国防発展展覧会」でも、このミサイルが展示されていたのが確認されていて、「火星17型」と呼ばれているという見方も出ていました。北朝鮮は、先月27日と今月5日に、ピョンヤン郊外のスナン付近から弾道ミサイルが1発ずつ発射し「偵察衛星の開発のための重要な実験を行った」と発表していて、防衛省はいずれもICBM級だったと分析しています。

さらに北朝鮮は、今月16日にも再びピョンヤン郊外のスナン付近から弾道ミサイルと推定される飛しょう体を発射したものの、高度20キロ以下で爆発し失敗したとみられていますが、韓国軍は、ICBMに関連した発射だった可能性があるとの見方を示していました。

最近の北朝鮮のミサイル発射は

北朝鮮は、先月末から今月にかけて、ICBM=大陸間弾道ミサイル級の弾道ミサイルを3回にわたって発射していました。

1回目は先月27日、首都ピョンヤン郊外のスナン付近から弾道ミサイル1発を発射し、北朝鮮は翌日「偵察衛星の開発のための重要な実験を行った」と発表しました。

その6日後の今月5日にも、同じスナン付近から弾道ミサイル1発を発射し「再び偵察衛星の開発のための重要な実験を行った」と発表し、防衛省はいずれも、ICBM級だったと分析しています。

さらに今月16日には、同じスナン付近から弾道ミサイルと推定される飛しょう体を発射しましたが、直後に空中爆発して失敗したとみられていて、韓国軍は、ICBMに関連した発射だった可能性があるとの見方を示していました。

北朝鮮のICBMをめぐっては、おととし10月、朝鮮労働党の創立75年に合わせてピョンヤンで行われた軍事パレードで、ICBM級とみられる新型ミサイルを初めて公開しました。

このミサイルの名称は明らかにされていませんが、これまでの北朝鮮のミサイルの中で最も長い片側11輪の車両に載せられ「巨大な核戦略兵器」と紹介されていました。

その大きさは、2017年11月に最高高度が4000キロを超え、北朝鮮がアメリカ本土全域を攻撃できると主張したICBM級の「火星15型」を上回っていました。

また、去年10月にピョンヤンで最新の兵器を集めて開かれた「国防発展展覧会」でも、このミサイルが展示されていたのが確認されていて、関係国が警戒を強めていました。

海自元海将「新型ICBM級か 意図して落とした可能性も」

海上自衛隊で司令官を務めた元海将の香田洋二さんは、「ミサイルの飛行時間を考えると、おそらく通常より角度をつけて高く打ち上げるロフテッド軌道で新型のICBM級の発射実験を行ったと考えられる」と述べました。

また「今までは日本のEEZのできるだけ外側に落としている傾向があった。今回は非常に射程の長い超大型で、性能上EEZの内側に落ちざるを得なかったかもしれないが、意図して落とした可能性もありもう少し詳しい情報が必要だ」と述べました。

そのうえで「今回の大きな目的は、おそらく3段ロケットとして全部を組み上げたものの飛行性能の確認だと考えられる。そのためにロフテッド軌道で非常に高く打ち上げて飛行中のデータを確認したとみられる」と指摘していました。

専門家「既定路線の行動」

北朝鮮政治が専門の慶應義塾大学の礒崎敦仁教授は「国防力の強化を掲げる北朝鮮にとっては既定路線の行動だ」と指摘したうえで、去年1月に打ち出された「国防5か年計画」に沿って今後も発射実験を継続して、核・ミサイル開発を強化していくとする見方を示しました。

北朝鮮が相次いでミサイルを発射している背景について「3回もの首脳会談を行ったトランプ政権が終わり、現在のバイデン政権はどうやら北朝鮮の問題に関心がないとわかってきた。北朝鮮としては、何に対しても遠慮することなく軍事力の強化を進めていると考えられる」として、アメリカに対する抑止力を強化することが目的だとしています。

一方、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻との関連については「兵器開発の計画はすでにあって、侵攻がなくても発射に至ったとみるべきだ」とする見方を示した一方「北朝鮮はウクライナ情勢を非常に注意深く観察している」としました。

そのうえで「核兵器を持ち、軍事力を強化してこそ、国外からの侵略から自国を守ることができるとの思いを強くしたことは間違いない」と述べ、ウクライナ情勢が北朝鮮の軍事力強化の姿勢をいっそう後押ししていると指摘しました。