弾道ミサイル“ICBM級”
キム総書記は発射場を視察

北朝鮮が2月27日と3月5日に発射した弾道ミサイルについて、防衛省は、いずれもICBM=大陸間弾道ミサイル級だったとする分析結果を発表しました。
北朝鮮が射程が5500キロ以上のICBM級の弾道ミサイルを発射したのは、5年前の2017年の11月以来になります。

防衛省は、北朝鮮が2月27日と3月5日に発射した弾道ミサイルについて、11日、アメリカ政府とも連携して行った分析結果を発表しました。

それによりますと、いずれもICBM=大陸間弾道ミサイル級で、2020年10月に実施された軍事パレードで初めて確認されたものと同じであるとしています。

また、防衛省は、2月27日の弾道ミサイルは、最高高度およそ600キロで、300キロ程度の距離を飛しょうし、3月5日の弾道ミサイルは最高高度およそ550キロで、300キロ程度の距離を飛しょうしたと分析しています。

今回の分析で、防衛省は、ICBM級の弾道ミサイルを最大の射程で発射試験を行う前に、何らかの機能の検証を目的として発射された可能性があるとしています。

北朝鮮が射程が5500キロ以上のICBM級の弾道ミサイルを発射したのは、5年前の2017年の11月以来になります。

防衛省は「事態をさらに緊迫化させる弾道ミサイル発射を含め、一連の北朝鮮の行動は国際社会の平和と安全を脅かすものだ。断じて容認できず、国連安保理決議に違反するものであり、強く非難する」としています。

北朝鮮 キム総書記 衛星発射場を視察 “施設改修や拡張 指示”

北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記は、北西部の「衛星発射場」を視察し軍事偵察衛星などを「大型運搬ロケット」で打ち上げられるよう、施設の改修や拡張を指示したと伝えました。

この発射場では6年前、事実上の長距離弾道ミサイルが発射されていて、関係国は、北朝鮮が今後「衛星の打ち上げ」と称してICBM=大陸間弾道ミサイルを発射する可能性があるとみて警戒を強めています。

11日付けの北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、キム・ジョンウン総書記が北西部トンチャンリ(東倉里)にある「ソヘ(西海)衛星発射場」を視察したと1面で伝えました。

この中でキム総書記は軍事偵察衛星などを「大型運搬ロケット」で打ち上げられるよう、「組み立てや燃料注入などの施設を現代的に改修・拡張するための課題を示した」としています。

紙面には、サングラスにジャンパー姿のキム総書記が、固定式の発射台とみられる構造物や完成予想図などがかかれたパネルの前で関係者に指示する様子の写真が掲載されています。

「ソヘ衛星発射場」では、2016年2月に「地球観測衛星の打ち上げ」と称して事実上の長距離弾道ミサイルが発射されています。

北朝鮮は10日も、キム総書記が国家宇宙開発局を視察し、在日アメリカ軍などの情報を収集するため、多くの偵察衛星を軌道に乗せる考えを示したと伝えていました。

こうしたことから、関係国は、北朝鮮が今後「軍事偵察衛星の打ち上げ」と称してICBM=大陸間弾道ミサイルを発射する可能性があるとみて警戒を強めています。

一方、朝鮮中央通信は、9日投票が行われた韓国大統領選挙について、保守系の最大野党のユン・ソギョル(尹錫悦)氏が「僅差で当選した」と論評抜きで初めて伝えました。

韓国「おととし公開のICBMのシステムと関連したもの」

アメリカと日本にあわせて韓国国防省も11日朝、北朝鮮が2月27日と3月5日に発射した弾道ミサイルについて発表しました。

このなかで韓国国防省は「アメリカとの分析の結果、おととし10月10日に朝鮮労働党の創立記念日にあわせて行った軍事パレードで北が初めて公開した開発中のICBM=大陸間弾道ミサイルのシステムと関連したものだ」と明らかにしました。

また発射された2発の弾道ミサイルは、ICBMの射程には及ばなかったものの、今後「人工衛星の打ち上げ」と称するICBMの発射に向けて、関連する性能を試す意図があったと分析しています。

さらに、北朝鮮のミサイル開発に団結して反対する立場を示す必要があると判断して、こうした情報をあえて公開したと説明しました。

そのうえで国連安全保障理事会の決議に違反する弾道ミサイルの発射を強く非難するとともに、緊張を高める行為を直ちにやめることや対話を再開することを求めました。

米高官「開発中のICBMシステムに関係」

北朝鮮が最近、相次いで発射した弾道ミサイルについて、アメリカのバイデン政権の高官は、開発中のICBM=大陸間弾道ミサイルに関係していたと結論づけ、核・ミサイル開発を阻止するための新たな措置を講じる考えを示しました。

北朝鮮が先月27日と今月5日に相次いで発射した弾道ミサイルについてアメリカのバイデン政権の高官は10日、記者団に「北朝鮮が開発している、比較的新しいICBM=大陸間弾道ミサイルのシステムに関係しているという結論に達した」と述べました。

そのうえで「北朝鮮に対して違法かつ地域を不安定化させる行為には代償がともなうことを明確にする」として、北朝鮮が核・ミサイル開発に必要な外国からの部品や技術を手に入れられないようにする新たな措置を11日に発表すると明らかにしました。

また、この高官は、分析は日本や韓国との緊密な連携のもとに行われたとしたうえで「こうした情報をあえて開示し、同盟国とも共有することを決めた」と強調しました。

アメリカ政府はウクライナ情勢をめぐっても、機密情報をあえて開示することで、相手側に行動の変化を促しつつ国際世論の形成を図ろうとしていて、この高官は、国際社会が結束して北朝鮮の核・ミサイル開発を非難すべきだと訴えました。