皇陛下
最後の全国戦没者追悼式

終戦の日の15日、天皇陛下は皇后さまとともに全国戦没者追悼式に臨み、戦争が再び繰り返されないことを願うおことばを述べられました。来年4月の天皇陛下の退位を前に、両陛下が追悼式に出席されるのはことしが最後になりました。

終戦から73年を迎えた15日、天皇陛下は、皇后さまと東京の日本武道館で行われた全国戦没者追悼式に臨まれました。

そして、正午の時報とともに参列者全員で黙とうをささげたあと、おことばを述べられました。

天皇陛下は、冒頭で例年通り「さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします」と述べられました。

そして、戦没者を追悼し平和を願う結びの一文で「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」としたうえで、戦後70年の平成27年から加えた「深い反省」という言葉を盛り込んで、「ここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」と述べられました。

来年4月の天皇陛下の退位を前に、両陛下が追悼式に出席されるのはことしが最後になり、参列した遺族の代表らは天皇陛下のおことばにじっと耳を傾けていました。

全文

「本日、『戦没者を追悼し平和を祈念する日』に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。

終戦以来既に73年、国民のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、苦難に満ちた往時をしのぶとき、感慨は今なお尽きることがありません。

戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、ここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」

変遷

全国戦没者追悼式での天皇陛下のおことばは、昭和天皇の時のおことばの骨子も踏まえ、即位以来、基本的な内容は毎年踏襲されてきました。

この中で天皇陛下は、戦争の犠牲者を悼み遺族に思いを寄せるとともに、世界の平和と日本の発展を願う気持ちを表されてきました。

戦後50年を迎えた平成7年には、結びの一文に「歴史を顧み、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い」という言葉が加えられました。

その後は、おことばの内容に大きな変わりは見られず、平成13年以降は毎年同じおことばが続きました。

そうした中、戦後70年を迎えた平成27年、天皇陛下は14年ぶりにおことばを変え、戦後の日本の歩みを振り返る部分に、多くの言葉を足されました。

まず今日の平和と繁栄を支えたものとして、「国民のたゆみない努力」に加え、新たに「平和の存続を切望する国民の意識」という表現を使われました。

そのうえで例年、「苦難に満ちた往時をしのぶとき、感慨は今なお尽きることがありません」としていた部分を「戦後という、この長い期間における国民の尊い歩みに思いを致すとき、感慨は誠に尽きることがありません」と言いかえられました。

さらに戦没者を追悼し平和を願う結びの一文に「さきの大戦に対する深い反省と共に」という言葉を加えられました。

戦没者追悼式での天皇陛下のおことばがこれだけ変わるのも、「反省」という言葉が盛り込まれたのも、このときが初めてで、それ以降は結びの一文に「深い反省」という言葉が使われるようになりました。

そして最後の出席となった今回も「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」と戦後を振り返ったうえで、そうしたおことばを述べられました。