橋本聖子氏 組織委新会長
就任 関係者の反応

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の新しい会長に橋本聖子氏の就任が決まったことについて関係者の反応です。

母校後輩が期待

北海道苫小牧市にある母校の駒大苫小牧高校スピードスケート部の部員や監督からは、期待の声が相次ぎました。

2年生の男子部員は「率直にびっくりしました。橋本さんの講演を聞いたときは、芯の通ったかっこいい女性だと思いました。戸惑うこともあると思いますが先頭に立って頑張ってほしいです」と話していました。

2年生の女子部員は「先輩にすばらしい人がいることが誇りでうれしく思います。若いころから努力されてかっこいい人で、すごく楽しみです」と話していました。

また、スピードスケート部の監督を務め、1994年のリレハンメルオリンピックには橋本新会長とともに出場した田畑真紀さんは「困ったときにどうしたらいいか相談すると親身になって考えてくれる頼りになる方です。オリンピックに安心して向かえるよう導いてくれると期待しています」と話していました。

金メダリスト 清水宏保さん「非常に実行力ある」

橋本聖子新会長と30年以上の親交があるという長野オリンピックのスピードスケート、金メダリストの清水宏保さんは「強い女性というイメージがあると思うが、本当に優しい方で、みずからがやっていることを一切公言せず、陰で尽力してくれる。何があってもやり遂げるという強い気持ちと選手を思いやる気持ちがある方なので、選手目線の組織を作ってくれるのではないかと感じている。いろいろな経緯があったと思うが、やると決めたからにはしっかりやってくれる方だ」と話しました。

また、橋本新会長が日本スケート連盟の会長を務めていたときに理事としてともに仕事をした経験から「ことばに力がある方なので、その場の空気を変える発信力がある。日本スケート連盟の新しい組織体制や新しいナショナルチームの体制も作られた方なので、非常に実行力もある」と組織のトップとしての力も評価しました。

そのうえで、開幕まで5か月余りに迫った東京大会に向けて「選手目線としてはオリンピックをやってもらいたいが、国民などから批判されるようなオリンピックにはしてもらいたくない。無理なものは無理と判断すべきだし、そのあたりの客観的な温度感を持たれているのが橋本聖子さんだと思う」と期待を寄せていました。

日本パラ陸上競技連盟 増田会長「心はいつも選手のそばに」

日本パラ陸上競技連盟の増田明美会長は「橋本聖子さんは人の話に真剣に耳を傾けてくださり選手のことが好きで『オリンピックとパラリンピックの経験者が、力を合わせて社会貢献できるような環境をつくりたい』と言われます。組織のトップとしてさまざまな決断をしなければいけないと思いますが、心はいつも選手のそばにあることでしょう」というコメントを出しました。

五輪代表内定 皆川博恵選手「アスリートも含め一致団結」

レスリング女子76キロ級で東京オリンピック代表に内定している皆川博恵選手がオンラインでNHKの取材に応じ「新型コロナウイルスの感染拡大も含めたいろんな問題がある中でトップに立つのはすごく大変なことだと思う。アスリートも含め一致団結してよりよい状況を目指していきたい」と話しました。

皆川選手は橋本新会長と直接の面識はないものの1年ほど前に講演を聞いたことがあるということで「夏と冬、両方のオリンピックに出場していて、オリンピックにかける強い思いのある人だと思う。すごく自分に厳しい方という印象があり、アスリートとしても尊敬している。選手としての経験と政治家としての経験の両方を生かしてほしい」と話しました。

さらに大会の開催に対して厳しい声がある中での就任について「オリンピックにいいイメージを持っていない人もいるかもしれないけれど、トップが変わることをチャンスと捉え、雰囲気を変えてほしいと思う」と話し、機運の高まりに向けたきっかけとなることに期待感を示しました。

トヨタ自動車 豊田章男社長「心より歓迎」

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の新しい会長に橋本聖子氏の就任が決まったことについてスポンサー企業のトヨタ自動車の豊田章男社長はオンラインで記者団の取材に応じ「心より歓迎したい」と述べ期待感を示しました。

また、豊田社長は、今回の人事をめぐる混乱について、国民とアスリートが不在になっていると指摘したうえで「国民とアスリートがオーナーシップを持っているような大会にしていくよう、みんなが努力していくべきではないか」と述べました。

署名提出の大学生「積極的に改革を」

森氏の発言を受けて15万人余りの署名を提出した、大学生の能條桃子さんは「橋本さんは女性活躍担当大臣として私たち若者の声にも耳を傾けてくれた。“わきまえず”に積極的に改革をしてきた人だと思うので、大会組織委員会の中でもジェンダー平等に向けた取り組みをしてくれることを期待している」と話していました。

一方で「会長選考の議論は非公開で透明性はなく不信感が残る。結局、最初から名前があって、なんとなくみんなからの理解が得られそうな人を選んだのかなと思ってしまう。大会組織委員会には問題の発言があった会議の議事録を公開するなどして、今回の事案をしっかり清算し原因を公表してほしい。今後、同じことが起きないよう差別的な発言を一切許さないという姿勢を示し、トップ層への研修なども行ってほしい」として、今後の対応を注視していきたいと話しました。

聖火ランナー 大会の成功を願う

聖火ランナーからは期待や大会の成功を願う声が聞かれました。

東京オリンピックの聖火ランナーで豊丘村に住む酒井浩文さん(56)は、1988年のソウルオリンピックで陸上の20キロ競歩に選手として出場しました。

大会5か月前の会長の交代について「世界的に見ると、女性蔑視であるとか、差別などの発言は非常によくない印象を与えてしまった。もう少し早く森さんが辞任し対応すべきだったと思います」と話していました。

新たに会長に就任する橋本氏については「すばらしいリーダーシップを発揮してくれると期待している。オリンピックの成功は選手と応援する人、そして大会を支える人の3者がそろうことで成功すると思うので、ぜひみんなで盛り上げてすばらしいオリンピックにしてほしい」と話しています。

福島県在住 大会ボランティア「復興五輪 思い出して」

大会組織委員会の新しい会長に橋本聖子氏の就任が決まったことについて、福島県在住で、東京大会の大会ボランティアとして活動する予定の齋藤道子さん(56)に聞きました。

齋藤さんは、「スポーツの魅力は『する、見る、支える』だと思っています。橋本さんは本当のスポーツの魅力を知っている方だと思いますので、その基本に立ち返って進めていってもらえれば、大会を支えるボランティアにとっても期待できると思います」と話していました。

また、「東日本大震災の被災地を支援してくれた人へのお礼の気持ちで活動しているボランティアが福島にはたくさんいるので、新会長には復興五輪という点も思い出してもらえるとうれしいです」と話していました。

都市ボランティア「一緒に活動ができるのでは」

埼玉県三郷市の会社員、加藤圭寿さんは東京オリンピックで会場周辺や駅で観光案内などを行う「都市ボランティア」の1人で、ほかのボランティアとオンラインで積極的に交流を続けています。

加藤さんは「政治家の目線、選手の目線、そして運営の目線の3つの視点を持つ方はなかなかいないと思う。そういう意味ではボランティア活動についてよく理解してもらいながら、一緒に活動ができるのではないかと期待しています」と話していました。

そのうえで「これまでの騒動でボランティアを辞退する人が出たり、日本が世界からマイナスな見方をされたりしているのは事実ですが、だからこそ新会長の就任を機会に『多様性と調和』という大会のコンセプトを改めて世界にPRしてほしいです。私たちボランティアは老若男女、あらゆる人が集まっていますが、これからも多様性というものを意識して活動を続けていきたいです」と話していました。

中国外務省 報道官「成功するよう期待」

中国外務省の華春瑩報道官は、新たな会長の人選は日本の国内問題だとして論評を避けつつも「中国は、東京オリンピック・パラリンピックが日本の努力によって安全で滞りなく成功する大会になるよう期待し、信じている。われわれも大会が成功するよう日本と緊密に協力していきたい」と述べ、期待を示しました。

海外メディア 相次いで報道

海外のメディアも相次いで伝えました。

AP通信は、橋本氏が冬と夏合わせて7回オリンピックに出場した経歴などを紹介し「組織の重要な役職や政治力のある地位に就く女性が依然として少ない日本で、橋本氏は歴史にさらに名を刻んだ」と伝えました。

そのうえで「会長に女性を選ぶことは、日本のジェンダーの平等にとって突破口になりうる」と評価しました。

アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは、森氏の後任に当初、同じ80代の川淵三郎氏が起用される予定だったなどとこれまでのいきさつに触れながら「56歳の橋本氏が選ばれたことは、組織委員会が明らかに世代交代とジェンダー重視の姿勢にシフトしたことを表している」としたうえで、今回の会長交代について「ソーシャルメディアと、性差別の解消を訴える人たちの力が増してきたことを反映している」と分析しました。

イギリスの新聞、ガーディアンは「橋本氏の最初の仕事は、東京大会への日本国民の強い反対と、パンデミックのさなかに開催することに対して高まる疑念に対処することだ」と伝えました。

また、韓国の有力紙、中央日報は、橋本氏について「選手出身の50代の女性で、これまでの状況をよく知っているという点で、森氏の辞任表明直後から有力だった」と伝えています。

一方で、複数のメディアは、橋本氏が7年前のソチオリンピックで日本選手団の団長を務めたとき、フィギュアスケートの男子選手とキスをした写真が週刊誌に掲載されたことについて「過去の行動が議論を呼んでいる」などと指摘しています。

川淵三郎氏「誰もが望む人が就任」

大会組織委員会の会長就任をいったん引き受ける意向を示し、その後、辞退した川淵三郎氏がコメントを発表し「評議員会では満場一致で橋本聖子さんの理事選任が決まった。誰もが望む人が就任し、よかったと思う。今後はみんなで橋本新会長をもり立て、協力し合いながら国民に支持してもらえるよう東京オリンピック・パラリンピックの成功に向けて取り組んでいってほしい」としています。

大坂なおみ「不平等なことはまだまだたくさんある」

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の新しい会長に橋本聖子氏が就任したことについてテニスの大坂なおみ選手は「いいことだと思う。これまで受け入れられていた概念を受け入れられない、新しい世代が出てきている。特に女性に対する障壁を壊していくことはとてもいいこと。不平等なことはまだまだたくさんあり、平等を手にするためには、たくさんのものと戦っていかないといけない」と話しました。

ヨーコ・ゼッターランド「ジェンダー発信を」

大会組織委員会の会長に橋本聖子氏が就任したことについて、組織委員会の理事を務める元バレーボール選手のヨーコ・ゼッターランド氏がオンラインで取材に応じ「長い空白期間を作らずに新会長が決定したことに安どした。橋本新会長はアスリートにとってオリンピックがどれだけ重みのあるものか最大の理解者だと思う。取り組む課題は山積しているので短い期間で進めるためにワンチームでもり立て、サポートしていきたい」と話しました。

また、橋本新会長の人柄については「オリンピック出場を目指していた私にとって本当に尊敬する方だ。スポーツに関連する話になると本当に思いがあふれるのが印象的でオリンピックに強い情熱を持っている。社会のために東京オリンピックが何ができるのか、これからしっかりと考えていってほしい」と話しました。

また、今回、注目されたジェンダーの問題については「オリンピック憲章や東京大会の理念についてアスリートとしてだけでなくさまざまな立場で携わってきた方なので社会が抱えているジェンダーなどの課題についてスポーツ界から発信しないといけないことをいちばん理解している人だと思う」と述べ、積極的な発信に期待を寄せました。

また、会長の候補者選定で透明性の確保が課題になったことについては「検討委員会のメンバーの重責は想像するに絶するし、難しいハンドリングが求められた。議論やメンバーの公表は先かあとかではなく、整ったときにきちんと経緯を説明することが大変重要だと思う」と話しました。