日本学術会議
これまでの意見表明は?

政府から独立して政策提言や科学の啓発活動などを行う国の特別な機関である日本学術会議。これまでにどのような意見を表明してきたのかをまとめたうえで専門家に話を聞きました。

日本学術会議は「学者の国会」とも言われ、政府から独立して政策提言や科学の啓発活動などを行う国の特別な機関です。およそ87万人の科学者を代表していて、210人の会員からなります。

学術会議が専門的な立場から意見を表明する方法として、「答申」、「回答」、「勧告」、「要望」、「声明」、「提言」、それに「報告」の7つがあります。

このうち、「答申」は政府からの諮問を受けて出され、「回答」は省庁から審議依頼を受けて出されるものです。平成19年にまとめられた答申は国土交通大臣からの「地球規模の自然災害の変化に対応した災害の軽減のあり方」についての諮問を受けたもので、ことし6月にはスポーツ庁からの審議依頼を受けて「スポーツの価値」の普及のあり方に関して「回答」をしています。

そのほかの「勧告」と「要望」、それに「声明」、「提言」、「報告」の5つは、学術会議から自発的に行うものです。

このうち最も頻繁に出されているのが「提言」で、ことしだけで68件が出されています。その「提言」の中でも特に関係者に注目されているのが「マスタープラン」と呼ばれるもので、国内の大型の研究を網羅的に体系化して3年に1度、発表されています。ことし1月にも発表され予算措置に考慮される国の学術政策の参考になっているとされています。

また、ことし8月に出された「提言」では、ゲノム編集技術のヒトへの応用をめぐる倫理的な課題についてまとめていて、最先端の科学をめぐる問題を審議しています。

その一方で諮問を受けて行う「答申」はこの50年で3件で、この13年間は出されていません。

専門家「存在価値はあると思う」

日本の科学史に詳しい総合研究大学院大学の伊藤憲二准教授によりますと、日本学術会議の設立当初である1950年ごろには共産主義的なイデオロギーに基づいた主張をする研究者が影響力を持つ傾向があったと言われています。

そして、国は科学について検討する別の審議会や会議を設けるようになったということです。伊藤准教授は「長い経緯の中には政府に批判的な学者の影響力をなるべく減らしたいという思いがあったと思うし、学術会議の影響や権限を減らす方向に動いていたと思う」と歴史的な経緯と「答申」が少ない背景を解説しました。

伊藤准教授は、日本学術会議に改善すべき点があるとしながらもその存在意義について「学術会議の報告書や声明などは政府だけでなく国民全体に出されている。政府は、政府に近い諮問機関をもっているので、それとは別の意見を出せる機関として学術会議の存在価値はあると思う」と指摘しています。