「大阪都構想」賛否を問う
住民投票向け 説明会始まる

政令指定都市の大阪市を廃止して4つの特別区に再編する、いわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票に向けて、市民に直接、制度案を説明する大阪市主催の住民説明会が26日から始まりました。

いわゆる「大阪都構想」をめぐっては、大阪市の有権者による2度目の住民投票が来月12日告示、11月1日投票の日程で行われます。これに向けて、大阪市主催の住民説明会が始まり初日の26日は、大阪 北区と天王寺区の2つの会場で開かれました。

説明会では、都構想を推進する松井市長が、「大きな広域行政は府が担い、住民に身近な行政は特別区が担うことで二重行政を解消し、2度と府と市が対立しないように制度を見直すというのがわれわれの考え方だ」と述べ、意義を強調しました。

また吉村知事は、「市と府の広域行政を1つにする方が大阪の成長の可能性がある。住民サービスを身近なところで決定できる仕組みも必要だ」と述べました。

これに対し、出席した市民からは、「全国の自治体の中で、なぜ大阪だけが取り組むのか」といった質問や、「特別区になると政令指定都市のステータスがなくなり、失うものも多いのではないか」などといった意見が出ていました。

5年前の前回の住民投票の際には、説明会が39回開かれましたが、今回は新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、来月4日までに合わせて8回の開催となりました。

説明会は、動画投稿サイト「YouTube」で同時に配信され、一部の区役所にはオンラインで傍聴できるスペースも設けられました。

一方、前回は、各党の賛成・反対双方の意見を載せた資料が配られましたが、今回は、「住民に冷静に判断してほしい」などとして配布されず、反対派からは批判の声が出ています。

市民からは賛否の声

大阪 北区で開かれた住民説明会に参加した50代の女性は、「現在の知事と市長の人間関係で成り立っている『バーチャル都構想』を制度化する必要性がよくわかった。子どもや孫の若い世代のためには、二重行政をなくした新しい制度に移行した方がよいと思う」と話していました。

また、60代の男性は、「府と市の競争はよい意味もあるが、悪い意味が出ていたと思うし、新型コロナウイルス対応の説明を知事に一本化しているのを見ても、制度の必要性は納得している」と話していました。

一方、50代の男性は、「二重行政の問題点などは丁寧に説明していてよくわかったが、歴史的、文化的な背景がある大阪市を4つに分割する必要があるのかわからない。壮大な実験ともいえる中で、時間も説明も不足しているのではないか」と話していました。

また、別の50代の男性は、「都構想が実現すれば多額の移行費用がかかる。ランニングコストをかけながらこれまでの大阪市の住民サービスを維持するのは難しいのではないか」と話していました。

モニター傍聴の市民は

大阪 旭区の旭区役所では、会議室にモニターが用意され、およそ30人の市民がオンラインで説明会を傍聴しました。

70代の女性は、「松井さんや、吉村さんの話を聞いているかぎりではよくわかるし、やったらええんちゃうと思った。私らが生きている間に変わったということを見せてほしい」と話していました。

一方、70代の男性は、「通りいっぺんと言ったら失礼だけど、そういう説明会だったと思う。今の時点では、歳入や歳出のことを考えると、賛成はしがたい。もっと突っ込んだ資料がほしかった」と話していました。

吉村知事「5年前と違う」

住民説明会のあと、大阪市の松井市長は、記者団に対し、「新型コロナウイルスで、密の状況を作らないという制約がある中でやっているのでオンラインを駆使してできるだけ住民の質問や疑問には丁寧に答えていきたい」と述べました。

また、大阪府の吉村知事は、「5年前は、ばり雑言が非常に多かったが、今回は『これを聞きたい』という方や、冷静な立場での質問、賛成反対にとらわれない意見が多かった。二重行政の解消などの実績が、市民にも肌で伝わりつつあるのかなというところが、5年前と違うところかもしれない」と述べました。

自民党大阪府連 反対の強化発信を

いわゆる「大阪都構想」に反対する自民党大阪府連は、対策本部の会合を開き、ことし11月に行われる住民投票での否決を目指し、党の主張に幅広い賛同を得られるよう、情報発信を強化していく方針を確認しました。

大阪 中央区の自民党大阪府連で開かれた会合には、党所属の国会議員や地方議員ら30人余りが出席し、ことし11月1日に行われる、いわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票への対応を協議しました。

そして、府連をあげた態勢を構築するとともに、住民投票での否決を目指し、コストや住民サービスの低下などリスクが大きいとする党の主張に、幅広い賛同を得られるよう、インターネットなどを使って、情報発信を強化していく方針を確認しました。

会合のあと、自民党大阪府連の左藤章政務調査会長は、記者団に対し、「国も政令指定都市の強化を目指そうとしている中で大阪市をなくす議論は間違っている。都構想よりも新型コロナウイルスへの対応を優先すべきだと訴えたい」と述べました。