阪都構想」2度目の
住民投票実施決定

政令指定都市の大阪市を廃止して4つの特別区に再編するとしたいわゆる「大阪都構想」の協定書が、大阪市議会で賛成多数によって承認され、大阪市の有権者による住民投票の実施が決まりました。
住民投票が行われるのは、5年前の平成27年以来、2度目です。

いわゆる「大阪都構想」の協定書を審議する大阪市の臨時市議会は、閉会日の3日、本会議が開かれ、市議会の5つの会派が、賛成、反対それぞれの立場で討論を行いました。

このあと、記名投票による採決が行われ、協定書は、大阪維新の会と公明党の賛成多数で承認されました。

一方、自民党と共産党などは反対しました。

協定書をめぐっては、先月28日に大阪府議会でも賛成多数で承認されていて、これにより、大阪市の有権者による住民投票の実施が決まりました。

住民投票が行われるのは、5年前の平成27年以来、2度目です。

大阪維新の会の代表を務める大阪市の松井市長は、11月1日に住民投票を行うことを目指していて、新型コロナウイルスの感染状況や国政をめぐる情勢などを見極めたうえで最終決定したい考えです。

各会派の反応

大阪維新の会の代表を務める大阪市の松井市長は、記者団に対し、「2015年の住民投票の時は、あまりにもエキサイティングな形でぶつかり合った。今回は住民に冷静に判断してほしいので、中身を丁寧に説明し、エキサイトしすぎない行動をしていきたい。気を引き締めて丁寧に説明し、住民投票で賛成多数を勝ち取りたい」と述べました。

公明党大阪市議団の西崎幹事長は記者団に対し、「一つの通過点を過ぎたという思いだ。これまで『住民のために』という思いで、信念を持って議論を進めてきたので、これからは、さらに丁寧に説明をしていかなければならないと思っている」と述べました。

自民党大阪市議団の北野幹事長は記者団に対し、「大阪市を残さなければ、市民サービスは維持されない。かくなるうえは、市民と一緒になって、『今度は、市民の皆さんが決めることだ』と訴えていきたい。わざわざ苦しい自治体になりたいのか。市民にメリットはないと訴えていく」と述べました。

共産党大阪市議団の山中団長は記者団に対し、「議会人として本当に情けない思いでいっぱいだが、いよいよ市民と一緒に決めていくときが来た。市民の力で跳ね返していくため、草の根の戦いを一日でも早く、1人でも多く広げていくことに尽きる」と述べました。

立憲民主党大阪府連は3日夕方、大阪市役所で記者会見を開き、府連の尾辻副代表は、「私たちは大阪市の廃止分割には反対だ。デメリットがどういう部分かをしっかりまとめて、市民に理解してもらえるよう、サイトやツイッターなどあらゆる方法を使って発信していきたい」と述べました。

都構想 何がどう変わるのか

いわゆる「大阪都構想」は、東京23区をモデルに政令指定都市の大阪市を廃止して4つの特別区に再編し、この特別区が子育てや福祉など住民に身近な行政を担う一方、成長戦略や消防などの広域行政を大阪府に一元化する構想です。

大阪府と大阪市の協定書では、現在の大阪市を廃止して、新たに「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」の4つの特別区を設置するとしています。

特別区への移行日は、「大阪・関西万博」が開催される年の令和7年1月1日としています。

4つの特別区には、淀川区に新大阪、北区には梅田、中央区はミナミ、天王寺区には天王寺と、それぞれ拠点となる商業地などが含まれています。

また、大阪市役所をはじめ現在の24区の庁舎を、特別区の本庁舎や行政窓口などとして活用し、住民の利便性を維持することとしています。

財政面では、住民サービスを安定的に提供できるよう、最初の10年間は、大阪府から毎年、特別区に一定額を支出するとしています。

また、4つの特別区のすべてに児童相談所を設置するほか、大阪府に、特別区との調整業務を担う「特別区連携局」や、消防を統括する「消防庁」などの新しい組織を新設するとしています。

さらに、特別区ごとの区議会議員の数は、「淀川区」が18人、「北区」と「中央区」が23人、「天王寺区」が19人としています。

一方、特別区への移行にかかる当初のコストは、システム改修費に182億円、庁舎の整備費に46億円、まちの案内表示などを変更する費用などに13億円の合わせて241億円を見込んでいます。

これに対し、反対派からは、大阪市の廃止によって、福祉や教育などの住民サービスが低下するおそれがあるという意見や、特別区が財政的に成り立つのか疑問だといった指摘も出ています。

官房長官「関係者間の真摯な議論期待」

菅官房長官は、午後の記者会見で、「『大阪都構想』は、大阪市を廃止して特別区を設置することにより、二重行政の解消と住民自治の拡充を図ろうとするものと認識している。特別区設置の成否は、法令の手続きに沿って地域の判断に委ねられることになっている。関係者間の真摯(しんし)な議論を期待している」と述べました。