染症法の運用見直しへ
保健所などの負担軽減図る

新型コロナウイルスの対応をめぐり、安倍総理大臣は記者会見で、冬に向けて、インフルエンザなどの患者の増加が予想されることから保健所や医療機関の負担軽減を図りたいとして、感染症法にもとづく現在の運用を見直す考えを示しました。

この中で、安倍総理大臣は、新型コロナウイルスへの対応について、「ことし1月から国民の命を守るため、最善の努力を重ねてきたつもりだが、残念ながら多くの方が命を落とされた。亡くなった方々のご冥福をお祈り申し上げる」と述べました。

また、「この半年で多くのことがわかってきた。『3密』を徹底的に回避するといった予防策で社会経済活動との両立は十分可能だ。一人でも多くの命を守るためには高齢者や基礎疾患のある人など重症化リスクの高い患者への対策が鍵になる」と述べました。

そのうえで、冬に向けてインフルエンザなどの流行で、発熱患者の増加が予想され、医療の負担を軽くする必要があるとして、重症化リスクの高い患者に重点を置いた対策に転換する考えを示しました。

そして、1日あたり20万件検査できる体制を目指すことや、高齢者施設などでの集団感染を防ぐため、職員の一斉検査を定期的に行う方針などを説明しました。

また、医療資源も重症化リスクの高い人に重点化する必要があるとして、感染症法に基づいて感染者に入院の勧告などを行っている現在の運用を見直す考えを示しました。

そのうえで「軽症者や無症状者は宿泊施設や自宅での療養を徹底し、保健所や医療機関の負担軽減を図っていく」と述べました。

さらに「患者を受け入れている医療機関や大学病院などでは、大幅な減収となっている」として、経営上の懸念を払拭する万全の支援を行う考えを示しました。

そして、新たな対策には、新型コロナウイルス対策に関係する予備費で措置を行い、直ちに実行していくと説明しました。

また、ミサイル防衛体制のあり方を含む新たな安全保障戦略について「北朝鮮は、弾道ミサイル能力を大きく向上させている。これに対し、迎撃能力を向上させるだけで、本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことができるのか。おとといの国家安全保障会議では現下の厳しい安全保障環境を踏まえ、ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針を協議した。今後、速やかに与党調整に入り、その具体化を進める」と述べました。

専門家「軽症者と無症状者がホテルなどで療養 大きな意味」

国立国際医療研究センターの忽那賢志医師は「医療資源の乏しい地方では、重症者に医療資源を振り分けるためにも、軽症者と無症状者をホテルや自宅での療養とすることは大きな意味がある。ただ、軽症の人の中には重症化する人も一定数いるので、万が一、重症化したときにどうやって治療につなげるか、その仕組みを考えておく必要がある」と話しました。

また、検査について忽那医師は「インフルエンザと新型コロナウイルスは、発熱やせきなど症状が似ているため、適切に診断をして治療につなげるために、検査は多くできたほうがいい。今後、大きな流行があった場合を想定した備えとしては妥当だ。ただ、検査は結果が出て終わりではなく、陽性になった人の隔離の徹底や接触者の追跡が無いと感染拡大を防ぐことができないので、検査の拡大に伴って、こうした対策も強化する必要がある」と指摘しました。

また、ワクチンについては「最近、香港で一度、新型コロナウイルスにかかった人が再び感染した事例が報告されるなど、ワクチンで免疫がどれだけ長く維持できるか分からない部分がある。確実な科学的根拠を基に有効性や安全性を判断していくのが大事だ」と話しています。