き過ぎた「自粛警察」
“感情のコントロールを”

外出の自粛や休業の要請に応じていない商店街や店舗などに対し、嫌がらせのような電話や貼り紙を貼るといった行為が相次いでいます。専門家はこうした行為は今後も繰り返されるおそれがあるとしたうえで、「非常事態だからこそ多様な価値があることを認識することが重要で、自分にとって耳障りのよくない情報にも触れるなどして、感情をコントロールすることを心がけてほしい」と話しています。

新型コロナウイルスへの感染が拡大していた先月、首都圏では人出が多いと報道があった東京 吉祥寺の商店街に抗議の電話や手紙が相次いだり、休業を続けていたにもかかわらず千葉県八千代市の駄菓子屋に店を閉めるよう脅迫するような貼り紙が貼られたりしたということです。

こうした「自粛警察」と呼ばれる行為について、集団と個人の心理に詳しい同志社大学の太田肇教授は、「経験したことがない非常事態で、閉ざされた家の中にずっといるとどうしても1つの考え方が暴走してしまう。やっている側は正義感に駆られて行動していてやりすぎているという意識を持ちにくい」として、多くの場合、気付かないうちに人権を侵害していると分析しています。

さらに、再び感染が広がったときにはこうした行為が繰り返されるおそれもあると指摘したうえで、「多様な価値があることを認識することが重要で、自分にとって耳障りのよくない情報にもあえて触れてほしい。そして、感情が高ぶったときにすぐに行動するのではなく、一呼吸置いて冷静になるなど、感情をコントロールすることを心がけてほしい」と話しています。

商店街では…

東京 吉祥寺の商店街では先月下旬、「多くの人が訪れている」という報道があり、抗議の電話や手紙が相次ぎました。

抗議の内容は「商店街のすべての店を閉めさせろ」、「ほかの店は閉めているのに利益をあげているのは最低だと思う」、「人出が多い商店街は武蔵野市の恥」というものでした。

中には、電話で「何考えてんだ馬鹿野郎!」とどなられるケースもあったということです。

吉祥寺サンロード商店街振興組合で事務局長を務める水野健造さんは「いきなり罵声を浴びせられて怖くなりました。外に出たときに暴力をふるわれないか不安になりました」と話していました。

商店街では、今月1日までには全体の3分の2の店舗で休業や時間短縮を行うなどして一時期、人出が減りました。

しかし、大型連休が明けた頃には再び人出が増えたということで、水野さんは「急激に人出が増えると再び抗議が来るかもしれないと不安です」と話していました。

個人経営の小規模店にも…

「自粛警察」と呼ばれる行為は個人が経営する小規模な店にも及んでいます。

中には営業を自粛しているのに脅迫的な内容の紙が貼り付けられたケースもありました。

千葉県八千代市の駄菓子屋は緊急事態宣言が出される前の3月下旬から自主的に休業を続けています。ところが、先月28日、店の入り口に「コドモアツメルナオミセシメロマスクノムダ」と書かれた1枚の紙が貼り付けられているのを見つけたということです。

カタカナの文字はすべて赤色で定規をあてて書いたような直線的な形をしていました。

店をほぼ1人で切り盛りしている村山保子さん(74)は、紙を貼ったのが誰なのか分からず、脅迫するような内容に恐怖を感じました。

以前は駄菓子のほか、焼きおにぎりや揚げパンなどの軽食も販売し、地域の子どもたちでにぎわっていましたが、この事態を受けて緊急事態宣言が解除された後も当面は休業を続けるということです。

村山さんは「最初に見たときは血の気が引きました。本当に怖かったですし、今後もさらに行為がエスカレートするのではと不安に感じています。子どもたちのために開けてあげたいですが、その思いもしばらくはかなえることができません」と話していました。