銀が追加金融緩和 上限
なく国債購入 経済対策連動

日銀は27日、金融政策決定会合を開き、新型コロナウイルスの感染拡大で景気は厳しさを増しているとして、追加の金融緩和に踏み切ることを決定しました。当面、国債を上限を設けず買い入れて潤沢な資金を低い金利で供給できるようにすることや、企業の資金繰り支援を強化することが柱で、政策を総動員する姿勢を打ち出しました。

日銀は27日、通常は2日間開く金融政策決定会合を1日に短縮し、追加の金融緩和に踏み切ることを決定しました。前回、3月の会合に続く追加の金融緩和です。

具体的には、政府が国債の新規発行を増やして大規模な経済対策に乗り出すのに連動して、国債を積極的に買い入れます。「年間80兆円をめどとする」としていた買い入れの上限を当面、設けず、市場に一段と潤沢な資金を供給できるようにします。

また、厳しい資金繰りに直面する企業が資金を調達しやすくなるよう支援を強化します。企業が発行する社債やCP=コマーシャルペーパーの買い入れの上限も、合わせて7兆4000億円から合わせて20兆円まで拡大します。

さらに先月導入した、0%の金利で金融機関に資金を貸して積極的な融資を促す制度も拡充します。対象となる金融機関に全国のJAバンクや信用金庫、信用組合などを加え、中小企業や小規模事業者向けの融資を促します。

さらに、金融機関が持っている住宅ローン関連の資産も日銀が担保として受け入れるようにして、企業だけでなく厳しい資金繰りに直面する個人への融資も後押しするねらいです。

また、政府が緊急経済対策で実施する実質無利子・無担保の融資を行った金融機関に対し、日銀が0%の金利で資金を貸し出す新たな制度を次の会合までに検討するとしています。

日銀は国内の景気の現状について、「感染拡大の影響により厳しさを増している」として、先月よりもさらに厳しい判断を示し、今年度の実質の経済成長率もマイナスになるという見通しを示しました。

新型コロナウイルスへの対応では、世界各国の中央銀行が異例の金融緩和を打ち出し、アメリカのFRB=連邦準備制度理事会も国債などを制限なく買い入れる量的緩和策を続けています。

日銀としても追加の金融緩和で政策を総動員する姿勢を打ち出した形です。

黒田総裁「できることは何でもやる」

日銀の黒田総裁は追加の金融緩和を決めた金融政策決定会合のあとの記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で景気は厳しい状態が続くという認識を示し、中央銀行として「できることは何でもやる」と述べ、あらゆる政策を総動員する姿勢を強調しました。

この中で黒田総裁は「新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済は急速に落ち込んでいる。収束に向かうまで経済活動の抑制が続くと予想され、わが国経済は厳しい状態が続くとみられる」と述べました。

また、企業の状況については、「中小企業・大企業問わず2008年のリーマンショックの時より資金繰りは厳しい」と指摘しました。

そのうえで、「非常に危機的な状況で、中央銀行としてできることは何でもやる」と述べ、さらなる金融緩和も含め、今後もあらゆる政策を総動員していく考えを強調しました。

一方、今回の会合では低い金利で潤沢に資金を供給するため国債を積極的に買い入れる方針を打ち出し、年間80兆円をめどとするというこれまでの上限をなくしました。

黒田総裁は「感染拡大が収束したらすぐにやめるということにはならない。当分の間、必要なだけいくらでも買う」と述べました。

金融機関に資金を貸して積極的な融資を促す制度を拡充し、個人向けのローンなども担保として預かることにしたねらいについて、日銀の黒田総裁は「企業向けの資金繰りだけではなく、家計についても資金繰りに問題が生じないように、制度の拡充を図った」と述べ、住宅ローンなど、個人向けの融資も促していく考えを示しました。

官房長官「危機感共有 緊密に連携」

菅官房長官は午後の記者会見で、「新型コロナウイルスの影響を踏まえ、企業金融の円滑確保や金融市場の安定に万全を期すものと受け止めている。今後とも、政府と日銀との間で危機感を共有し、緊密に連携しながら、この難局に立ち向かっていきたい」と述べました。

西村経済再生相「政府と日銀 緊密に連携を」

日銀の金融政策決定会合に出席した西村経済再生担当大臣は、会合の終了後、記者団の取材に対し「今回の日銀の措置は、政府の緊急経済対策における資金繰り支援策を日銀の立場から、さらにしっかり支えてもらえるものだと評価している。政府・日銀のまさにポリシーミックス、政策の組み合わせを強化するものだ」と述べました。

そのうえで西村大臣は「日本経済を早期に回復させるべく、引き続き政府・日銀の間で危機感を共有し緊密に連携をしていく」と述べました。