HO「緊急事態」を宣言
 

新型のコロナウイルスの感染拡大を受けて、WHO=世界保健機関は専門家による緊急の委員会を開き、感染がほかの国でも拡大するおそれがあるとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。

WHOは医療態勢のぜい弱な国への感染拡大を懸念しているとしたうえで、ワクチンや治療法の開発を促進するとともに、そうした国への支援を行うべきとしています。

スイスのジュネーブにあるWHOの本部で、30日行われた緊急の委員会には各国の専門家や保健当局の担当者が参加し、中国を中心に感染が拡大する新型のコロナウイルスの状況について協議しました。

委員会のあと記者会見したテドロス事務局長は、感染がほかの国でも拡大するおそれがあるとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」だと宣言しました。

そして貿易や人の移動を制限することは勧告しないとしたうえで、医療態勢がぜい弱な国を支援すること、ワクチンや治療法、それに診断方法の開発の促進、風評や誤った情報が拡散することへの対策、データの共有などを行うべきだとしています。

WHOは今月22日と23日にも緊急の委員会を開きましたが、緊急事態にはあたらないと判断していました。

緊急事態の宣言は、2009年の豚インフルエンザや2014年のポリオ、そして去年7月のアフリカ中部でエボラ出血熱の感染が拡大した際などこれまでに5回出されています。

日本政府 これまで実施の取り組みを徹底

日本政府は、国内ではすでに今回のウイルスによる肺炎を感染症法に基づく「指定感染症」などに指定しており、水際対策の強化や、中国・武漢に滞在歴がある人の健康状態の確認などを先行的に実施しているとして、これまで実施している取り組みを徹底するとしています。

専門家「封じ込め SARSより難しいと見ている」

WHOで感染症対策を指揮した経験のある東北大学の押谷仁教授は「この1週間で、日本などでヒトからヒトに感染したケースが複数確認されるなど、国境を越えてこれからも感染が広がっていくリスクが高いということを鑑みたと思う」と述べました。

そのうえで、「2003年に感染が拡大したSARSと決定的に異なるのは、軽症や、症状が出ないケースが一定程度あることだ。そうした人たちから感染するリスクが否定できず、知らず知らずのうちに広がるおそれがあり、WHOも、封じ込めはSARSより難しいと見ていると思う。今後は、医療体制がぜい弱な国の支援を含めて、国際社会が連携して対策にあたる必要があるほか、日本を含めて、感染拡大を前提にした医療体制の整備を真剣に考える時期に来ている」と指摘しました。