発事故時の国などの
専用通信回線に不備が発覚

原子力発電所で事故や災害が起きた際、国や関係する自治体などを結ぶテレビ会議などの専用の通信回線が、一部の県では正常に機能しないおそれがあるほか、別の県では必要のない通信機器を設置するなど不適切な実態があることが会計検査院の調査で分かりました。

原発での事故や災害が起きた際、国や自治体などの関係機関は、一般の電話やネットが使えない場合でも専用の回線によるテレビ会議システムなどでやり取りできる仕組みになっています。

内閣府は自治体が整備する回線の費用を補助していますが、会計検査院が関係する24の道府県を調べたところ、伊方原発がある愛媛県では通信回線の容量が足りず、いざという時にシステムなどが正常に機能しないおそれがあることがわかりました。

一方、およそ10の県では必要以上の容量の回線を整備したり、本来は必要のない通信機器を設置したりしていたということです。

全国で不適切に使われた補助金の額は1億6000万円余りに上り、会計検査院は近く、内閣府に対して改善を求めることにしています。

内閣府は「検査の対象になっていることは事実だが、現時点ではコメントできない」としています。

「統合原子力防災ネットワークシステム」とは

原子力発電所での事故や災害が起きた際、国や関係機関が情報を共有するために「統合原子力防災ネットワークシステム」が設けられています。

総理大臣官邸、原発がある自治体、電力会社などを専用の通信回線で結び、一般の電話やインターネットが使えなくなってもIP電話やテレビ会議システムなどを通じてやり取りできる仕組みになっています。

原発がある自治体で震度5弱以上の地震があった時や大津波警報が出された時などにシステムを立ち上げることになっていて、原子力規制庁によりますと、過去5年間に合わせて22回運用した実績があるということです。

東日本大震災の際は、当時、福島県大熊町にあったオフサイトセンターの電源がすべて失われてこのシステムが機能しなくなり、国は専用の通信回線に加えて新たに衛星回線を導入したほか、移動式の電源車から電源を供給できる仕組みを作るなど、システムの見直しや強化を進めています。