太の方針」閣議決定

政府は、21日の臨時閣議で、ことしの「骨太の方針」や成長戦略の実行計画を決定し、いわゆる「就職氷河期」世代の正規雇用者を30万人増やすための支援プログラムや、希望する人が働き続けられるよう、70歳までの就業機会の確保を図っていくことなどを盛り込みました。

このうち、ことしの経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」では、いわゆる「就職氷河期」に、希望どおりの就職ができなかった30代半ばから40代半ばの人たちへの支援プログラムを盛り込み、約100万人を対象に、支援を通じて正規雇用で働く人を3年間で30万人増やす数値目標を掲げています。

また、最低賃金をめぐっては、引き上げ幅の具体的な数値目標の設定は見送る一方、全国平均で時給1000円の目標の「より早期」の達成を目指すとしていて、過去3年続けて3%程度引き上げられてきた水準を上回る引き上げに期待を示す形となりました。

このほか、社会保障の給付と負担の在り方を含めた総合的な政策を来年夏の「骨太の方針」でとりまとめる方針を明記したほか、消費税率の引き上げをめぐっては、10月に予定どおり10%に引き上げる方針を堅持する一方、今後の海外経済の動向によっては、追加の経済対策を講じる可能性に含みを持たせています。

一方、成長戦略の実行計画では、全世代型の社会保障制度の実現に向け、希望する人が働き続けられるよう、70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする法案を、来年の通常国会に提出するとしています。

政府は、こうした方針に基づいて、来年度予算案の編成などにあたることにしています。

安倍首相「総力結集し早急に実現」

安倍総理大臣は臨時閣議に先立って開かれた経済財政諮問会議と未来投資会議の合同会議で「安倍内閣は経済再生最優先の基本方針を揺らぐことなく堅持し、経済の回復基調を持続させ、経済財政運営に万全を期していく」と述べました。

そのうえで「今回、取りまとめていただいた政策について、次期通常国会への関連法案の提出も含め、政府の総力を結集して早急に実現していく。力強い日本経済の実現に向け、政府一体となって『令和』の新しい時代を切り開いていきたい」と述べ、ことしの「骨太の方針」と成長戦略の実行計画の速やかな実現を関係閣僚に指示しました。

「骨太の方針」 主な施策は

21日の臨時閣議で決定した「骨太の方針」の主な施策です。

就職氷河期支援
いわゆる「就職氷河期」世代への支援プログラムでは、約100万人を対象に、支援を通じて正規雇用で働く人を3年間で30万人増やす数値目標を掲げました。

具体的には、ハローワークなどによる取り組みと、就労のノウハウがある民間事業者の活用を「車の両輪」と位置づけ、教育訓練から採用まで切れ目のない支援を行うとしていて、ハローワークへの専門窓口の設置や人員の配置、短期間で資格を取得できるプログラムの創設、また民間事業者に業務を委託し、採用に結び付くなどの成果に応じて、必要な費用を国が支払う制度の導入などを盛り込んでいます。

さらに、ひきこもりの人たちへの支援をめぐっては、「地域若者サポートステーション」などの自立支援機関の機能を強化するとしているほか、「本人や家族の状況に合わせた息の長い継続的な伴走支援を行う」として、3年という期間にこだわらず、個々の状況に合わせた支援を継続的に行っていく方針を掲げています。

そして、こうした施策の実施に必要な体制を速やかに内閣官房に整備するとしています。
消費増税は予定どおり
10月に迫った消費税率の引き上げをめぐっては、「社会保障の充実と財政健全化にも資するよう、10%への引き上げを予定している」として、予定どおり引き上げる方針を堅持しました。

一方、米中の貿易摩擦が激しさを増す中、景気が下振れするリスクが顕在化する場合には、「機動的なマクロ経済政策をちゅうちょなく実行する」と明記し、今後の海外経済の動向によっては追加の経済対策を講じる可能性に含みを持たせています。

最低賃金の引き上げ
企業が従業員に支払わなければならない最低賃金をめぐっては、経済財政諮問会議の民間議員が5%程度の大幅な引き上げの必要性に言及する一方、負担が増える中小企業などからは反対の声も上がり、調整が難航しました。

最終的には、引き上げ幅の具体的な数値目標の設定は見送る一方、全国平均で時給1000円の目標の「より早期」の達成を目指すとしていて、過去3年続けて3%程度引き上げられてきた水準を上回る引き上げに期待を示す形となっています。

社会保障改革
全世代型の社会保障制度の実現に向けて、社会保障の給付と負担の在り方を含めた総合的、かつ重点的に取り組むべき政策を来年夏の「骨太の方針」で取りまとめる方針を明記しました。

このうち、年金と介護については、必要な法改正も視野に、ことしの年末までに結論を得るとしています。

また、議論にあたっては、「年齢などにとらわれない視点から検討を進め、負担能力や世代間のバランスを考慮する」としていて、高齢化の進行で社会保障を支える現役世代の負担が増す中、所得が多い高齢者らに一層の自己負担を求める方向性を示唆しています。

さらに、働いて一定の収入がある60歳以上の年金を減らす「在職老齢年金」について、「将来的な制度の廃止も展望しつつ、在り方などを検討する」として、高齢者の就労を促す観点から、廃止する方向性に言及しています。

交通事故対策も強化
このほか、「骨太の方針」では、相次ぐ重大な交通事故を受けて、保育所などの周辺道路に「キッズゾーン」を新たに設けることや、高齢者向けの新たな免許制度の創設に向けた検討を行う方針を明記しました。

また、地方自治体も含めた行政サービスのデジタル化を推進することや、農林水産業の輸出力の強化に向けた司令塔組織、「輸出促進本部」を農林水産省に新たに設置することなども盛り込んでいます。

強くにじむ景気への配慮

閣議決定された、ことしの「骨太の方針」では、政府が「戦後最長となった可能性が高い」としている景気回復を持続させるための配慮が強くにじむ形となっています。

政府は国内の景気について「緩やかに回復している」という判断を維持しているものの、中国経済の減速を背景に、輸出や企業の生産は弱い動きが続き、米中の貿易摩擦などで、先行きについても不透明感が強いのが現状です。

こうした中で「骨太の方針」では、海外経済に端を発する景気の下振れリスクが深刻になった場合には「機動的なマクロ経済政策を躊躇(ちゅうちょ)なく実行する」と明記。

海外経済の動向によっては、追加の経済対策を講じる可能性を示しました。また、消費への影響が懸念される、ことし10月の消費税率引き上げをめぐっては、来年度の予算編成で、歳出改革とは別に適切な規模の「臨時・特別の措置」を講じる方針も盛り込まれました。

「臨時・特別の措置」は、今年度予算にも「キャッシュレス決済でのポイント還元制度」や「プレミアム付き商品券」など総額2兆円以上が計上されましたが、来年度の具体的な対策は予算編成の過程で検討する方針です。

さらに、来年の東京オリンピック・パラリンピックの後の景気の落ち込みを防ぐため、災害に強いインフラ整備などに向けた公共投資を推進する方針も盛り込みました。