ランとしても戦争は
望んでいない」大統領

イランを訪れている安倍総理大臣はロウハニ大統領との首脳会談に臨み、アメリカとの対立で緊張が高まっていることを踏まえ軍事衝突は誰も望んでいないとして、緊張緩和に向けた建設的な対応を働きかけました。これに対し、ロウハニ大統領は「イランとしても戦争は望んでいない」と述べ、日本の取り組みを歓迎する意向を示しました。

アメリカとイランの対立で中東情勢の緊迫の度合いが増す中、日本の総理大臣として41年ぶりにイランを訪れている安倍総理大臣は日本時間の12日夜10時半すぎからロウハニ大統領との首脳会談に臨みました。

会談は少人数会合と拡大会合という形式で行われ、予定していた時間を大幅に超え、およそ2時間半にわたり行われました。

この中で、安倍総理大臣は「中東の平和と安定はこの地域のみならず、世界の繁栄に不可欠であり、軍事衝突は誰も望んでいない。現下の緊張の高まりを受け、緊張緩和を働きかける観点からイラン訪問を決断した」と述べ、緊張緩和に向けた建設的な対応を働きかけました。

これに対し、ロウハニ大統領は「イランとしても戦争は望んでいない」と応じ、日本の取り組みを歓迎する意向を示しました。

また、安倍総理大臣は、イランをめぐる核合意を支持する考えを示し「核合意を引き続き順守することを強く期待している」と述べ、地域の大国であるイランが中東の安定化に向け積極的な役割を果たすよう働きかけました。

これに対し、ロウハニ大統領は、日本が一貫して核合意を支持していることを評価する考えを示したうえで「イランとしても核合意がなくなることは追求しておらず、核兵器を禁止しており、追求していない」と述べました。

さらに、安倍総理大臣は「イランを取り巻く国際環境が整った際の原油取り引きを含め、2国間の経済関係の発展に引き続き関心がある」と述べたのに対し、ロウハニ大統領は「日本がイランからの原油の輸入に関心を示していることに感謝したい」と応じました。

一方、安倍総理大臣は、ことし3月からの洪水でイランで大きな被害が出たことを踏まえ、給水施設の修復や医療品の提供などを目的として、WHO=世界保健機関などを通じ総額2億7000万円余りの緊急無償資金協力を行う考えを伝えました。

これに対して、ロウハニ大統領は謝意を示し、両首脳は、外交関係樹立100周年に向けて関係を着実に発展させていくことで一致しました。

首相「核合意の順守を期待」

安倍総理大臣は、日本時間の12日夜から13日未明にかけて、テヘラン北部の宮殿でロウハニ大統領と会談したあと、そろって記者発表に臨みました。

この中で、安倍総理大臣は「ロウハニ大統領とは、いかにして現下の緊張を緩和し、偶発的な紛争を避けることができるか、率直かつ有意義な意見交換を行った。中東の平和と安定は、この地域のみならず、世界全体の繁栄にとって不可欠だ。誰も戦争など望んでおらず、日本としてできるかぎりの役割を果たしていきたい」と述べました。

そのうえで、安倍総理大臣は地域の平和と安定に向けて、イランが建設的な役割を果たすことが不可欠だという認識を示し、イランをめぐる核合意について「イランがIAEA=国際原子力機関との協力を継続していることを高く評価し、核合意を引き続き順守することを強く期待している」と述べました。

そして、安倍総理大臣は「ここまでの道のりは長かったが、ここからは広くて見晴らしのよい道のりになるはずだ。そのためには、お互いが努力しなければならないが、きょうは、その第1歩となると確信している」と述べました。

米国務省 イラン訪問支持

アメリカとイランの緊張緩和に向けて安倍総理大臣がイランを訪問したことについて、アメリカ国務省は支持する考えを示しました。

アメリカ国務省のオータガス報道官は12日、記者会見で、安倍総理大臣がイランを訪問したことについて問われると「イランによる地域を不安定化させる、悪意ある活動はやめさせなければならないという点で同盟国とわれわれは同じ考えだ」と述べました。

そのうえで「安倍総理大臣がとるいかなる行動もわれわれは支持する」と述べるとともに「イランが緊張を高めるような行動をとることは容認しないのだというメッセージを安倍総理大臣が伝えてくれると確信している」と述べて、イランへの働きかけに期待を示しました。

また、トランプ大統領は、ホワイトハウスで記者団からイラン情勢について問われると「私が大統領になったとき、イランは世界中でテロを行っていた。その直前にはイラン核合意というひどい合意を結んだ」と述べ、オバマ前政権が主導して結んだイラン核合意を改めて批判しました。

そして「私はイランに問題を抱えてほしくない。願わくは、イランとうまくやれればいい」と述べ、事態の打開に期待を示しました。

アメリカとしては、イランと良好な関係を築いている日本の協力も得ながら、事態の打開をはかりたい考えだとみられます。