員辞職の考えはない」
副大臣辞任の塚田氏

道路整備をめぐって、安倍総理大臣と麻生副総理兼財務大臣の意向を「忖度(そんたく)した」と発言した塚田国土交通副大臣は、発言の責任を取りたいとして5日、辞任しました。

山口県下関市と北九州市を結ぶ道路整備をめぐって、塚田国土交通副大臣は今月1日、下関市と福岡県が安倍総理大臣と麻生副総理の地元だと言及したうえで、「総理や副総理が言えないから、私が忖度した」と発言しました。

その後、塚田副大臣は「発言は事実と異なる」と述べ、撤回し、謝罪したうえで、説明責任を果たして職責を全うする考えを示していました。

野党側は、撤回や謝罪では済まされない重大な問題として速やかな辞任を求めていたほか、与党内からも、国会運営や選挙への影響を懸念してみずから進退を判断するよう求める声が出ていました。

そして5日、塚田副大臣は発言の責任を取りたいとして辞表を提出し、受理されました。塚田氏は、参議院新潟選挙区選出で55歳。自民党麻生派に所属しています。

塚田副大臣「議員辞職の考えはない」

塚田副大臣は国土交通省で記者団に対し、「事実と異なる発言をしたことで大変大きなご迷惑をかけた。発言の責任を取って、きょう、副大臣を辞する決意をして、石井国土交通大臣に辞意を伝え、内閣に辞表を提出した。国民の皆様にも改めて謝罪したい。誠に申し訳なかった」と述べました。

そのうえで、塚田副大臣は「大きな会合で空気にのまれて発言してしまった。国会で説明責任を果たすべく努力してきたが、行政の信頼を損ね、国政の停滞を招く事態になっているので、責任を取るべきだと判断した。議員辞職の考えはない」と述べました。

また、道路の整備をめぐっては、「災害時や渋滞の要素を勘案して計画は決定された。客観的で公正な判断だったと思う」と説明しました。

そして、「甚だ不適切な発言で、不徳の致すところだ。このようなことが二度とないよう襟を正していきたい」と述べました。

また、夏に参議院選挙が控えていることについて、「今後、地元 新潟に戻って、しっかりと説明し、おわびを申し上げたい」と述べたほか、引き続き自民党新潟県連の会長を務めるかどうかについては「地元に帰り、関係者と協議して判断したい」と述べました。

安倍首相「政治家は真実を語らなければ」

「そんたく発言」で責任を取り塚田国土交通副大臣が5日、辞任したことについて安倍総理大臣は、総理大臣官邸で記者団に対し、「行政においては国民の信頼が何より重要だ。全閣僚、そして副大臣、政務官が、この機に改めて気を引き締め、みずからの襟を正し、国民の負託に全身全霊をもって応えていかなければならないと考えている」と述べました。

また、記者団が「塚田氏は『会場の雰囲気にのまれた』と説明しているが、納得のいく説明になっていると思うか」と質問したのに対し、安倍総理大臣は、「雰囲気がどうあれ、政治家が語ることばは真実を語らなければならない」と述べました。

麻生副総理「4日に辞意の申し出」

塚田国土交通副大臣が所属する派閥の領袖を務める麻生副総理兼財務大臣は、閣議のあとの記者会見で、4日、塚田副大臣と会談した際に、本人から「ご迷惑をおかけしたので辞職をしたい」と申し出があったことを明らかにしました。

そのうえで麻生副総理は「政治家の出所進退だから、自分で決断したということだと思う。北九州市と下関市を結ぶ道路は30年ぐらい前からやっている話で、国土強靭化の一環で国が直轄で調査を行う対象になったと報告を受けていた。それを自分がやった、いかにも頼まれてやったと言ったところが問題であり、安倍総理大臣も、少なくとも塚田副大臣に頼んでいることもないだろうし、こっちもないので、本人がその場の空気で言ったのが問題ではないか」と述べました。

自民 甘利氏「ウケ狙い 失言反省を」

自民党の甘利選挙対策委員長は、記者団に対し、「塚田氏は、ウケを狙うような軽率な行動に出てしまった。油断があったのではないか」と指摘しました。

そのうえで、「選挙が近づいてくれば、より緊張感を持って発言に気をつけなければいけない。笑いを誘ったとしても、事実をはみ出るようなことは絶対に発言してはならず、全員が心していかなければいけない」と述べました。

また、甘利氏は、参議院選挙の新潟選挙区の候補者を塚田氏から差し替える考えはないとした上で、「塚田氏は、こんにちまで、貢献してきた。失言を反省して、失点を取り返してほしい」と述べました。

立民 枝野氏「安倍政権の『忖度政治』の象徴」

立憲民主党の枝野代表は、岡山県倉敷市で、記者団に対し、「即時辞任するのは当然だ。全貌解明に向け、安倍総理大臣が指導力を発揮するのは当然で、国会審議を求め、野党のヒアリングの場に塚田氏にも出てきてもらわなければいけない。安倍政権の『忖度政治』が問題になってきている象徴であり、選挙で有権者に大うそをついて票を取ろうとしただけでも、国会議員として、とても適切とは思えない」と述べました。

国民 玉木氏「辞任で幕引きではない」

国民民主党の玉木代表は、記者団に対し「当然で遅きに失した。安倍政権が長期化することで、権力のおごりと緩みが出てきて税金の私物化が全国にまん延しているのではないか。同様の政治家の圧力や口利きがないのか、総点検する必要がある。辞任で幕引きではなく、予算委員会で集中審議を行うべきだ。いったん、かばった安倍総理大臣の責任も厳しく問われる」と述べました。

公明 高木氏「辞任は当然 正常審議を」

公明党の高木国会対策委員長は、記者団に対し、「辞任は当然だ。政治家が事実と違うことを発言したのは、とんでもないことで、政府には、緊張感を持って、言動に慎重を期してもらいたい」と述べました。

そのうえで、「今回の問題で、野党もいろいろと質問していたが辞任ということで、一つけじめをつけたので、後半国会では、正常な審議をお願いしたい」と述べました。

また、統一地方選挙や参議院選挙への影響について、「政府の要職にある人が事実と違うことを公の場で話したことで、少なからず影響があるかもしれない」と述べました。

共産 志位氏「辞めて済む問題ではない」

共産党の志位委員長は、新潟県長岡市で記者団に対し、「辞めて済む問題ではない。『安倍・麻生道路』と言われるものが、忖度によって、国の直轄事業に引き上げられたと発言したわけで、この事実が変わる訳ではなく、真相の徹底解明を強く求めていく。安倍政治の体質が表れている問題なので、安倍総理大臣自身の責任を追及していきたい。塚田氏は議員の資格もない」と述べました。

維新 馬場氏「自民の体質を表している」

日本維新の会の馬場幹事長は、NHKの取材に対し、「辞任は当然だ。発言の内容自体が、自民党の体質を表していて、上から目線であり、国民の税金を預かっている立場を勘違いしている。統治機構を変えて、財源の権限を地方におろしていかないと、自民党の古い体質は変わらない」と述べました。

下関市長「言語道断だ」

山口県下関市の前田晋太郎市長は、記者団に対し「地元としては、大変な迷惑をこうむったという認識だ。『下関北九州道路』はボトムアップでやってきた話であって、塚田氏が誤解を与えるような発言をしたのは言語道断だ」と述べました。

そのうえで前田市長は「私としては終始一貫、この道路の必要性を丁寧に訴え続けていく」と述べました。

北九州市長「自身で考えられた結果だと思う」

北九州市の北橋市長は「政治家の出処進退に関わることであり、ご自身で考えられた結果だと思う。私から申し上げることはない」というコメントを出しました。

北九州市民

北九州市では市民から「辞任は当然」といった声が聞かれました。66歳の男性は「『そんたくした』という発言はおかしく、辞任は当然だ。お金がかかることなので、本当に必要な道路か、しっかり話し合うことが当然だと思う」と話していました。

60歳の女性は「『誰かの地元』といった理由で道路をつくって欲しくない。ちゃんとした段階を踏んでつくるかどうか決めるべきだと思うので、しばらくつくらないほうがよいのではないか」と話していました。