暖化対策はコストでは
なく競争力の源泉」首相

地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」で策定が求められている、温室効果ガスの削減に向けた長期戦略について、安倍総理大臣は、関係閣僚に、6月のG20大阪サミットまでに策定するよう指示しました。

「パリ協定」では、世界全体の温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質的にゼロにする目標が掲げられていて、日本など協定の締約国は2020年までに長期戦略を策定することが求められています。

この長期戦略を検討する政府の有識者懇談会が開かれ、環境問題への取り組みを重視して投資先を決める「ESG投資」の拡大などを通じて、今世紀後半のできるだけ早い時期に「脱炭素社会」を実現させるなどとした提言を取りまとめ、安倍総理大臣に手渡しました。

これを受けて安倍総理大臣は、温室効果ガスの削減に向けて、水素エネルギーのコストを2050年までに今の10分の1以下にすることや、人工光合成技術の商用化の検討を進める考えを明らかにしました。

そのうえで「もはや温暖化対策は企業にとってコストではない。競争力の源泉だ」と指摘し、ことし6月のG20大阪サミットまでに長期戦略を策定するよう関係閣僚に指示しました。

「脱炭素社会」実現の時期は

今回の提言には、「今世紀後半のできるだけ早い時期に『脱炭素社会』の実現を目指す」ことが盛り込まれました。

来年から実施される地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」では、世界全体の温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質ゼロにする目標を掲げています。

有識者懇談会の事務局によりますと、今回の提言の「脱炭素社会の実現」は、「温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」と同じ意味だということです。そのうえで、事務局は「今世紀後半の『できるだけ早い時期に』という文言が入った点が、パリ協定より一歩踏み込んでいる」と説明しています。

環境省によりますと、海外ではEU=ヨーロッパ連合が去年11月に、「2050年には温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」という計画案を公表し、現在、この案を長期戦略として国連に提出するための手続きを進めているということです。

一方、国内ではすでに横浜市が、去年10月に「2050年も見据えて今世紀後半のできるだけ早い時期に、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」という目標を設定しています。

さらに、国連の専門機関で、世界の科学者などでつくるIPCC=気候変動に関する政府間パネルは、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ1.5度に抑えるには、再生可能エネルギーの導入を進めるなどして、2050年ごろには二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする必要があると指摘しています。

政府は、今後、長期戦略の策定に向けて、提言で「今世紀後半のできるだけ早期に」となった脱炭素社会の実現を目指す時期を、どこまで具体化するかや、脱炭素社会の実現に向けてどのような取り組みを進めていくのかを議論することにしています。