国漁船 立ち入り検査の
水産庁職員乗せたまま航行

菅官房長官は記者会見で、日本の排他的経済水域内で先月、中国の漁船が、立ち入り検査を行うため乗り込んだ水産庁の職員を乗せたまま航行を続ける事案が発生したことを明らかにしたうえで、悪質な事案だとして中国側に申し入れを行ったと述べました。

この中で、菅官房長官は先月5日、九州沖の日本のEEZ=排他的経済水域内で、水産庁の職員が違法操業の疑いがある中国漁船に立ち入り検査を行うため乗り込んだところ、この中国漁船が職員を乗せたまま半日以上にわたって停止せず、航行を続ける事案が発生したことを明らかにしました。

そして菅官房長官は、「水産庁からは、職員の安全に十分留意しつつ海上保安庁とも連携し対応にあたったと報告を受けている」と述べたうえで、悪質な事案だとして、外交ルートを通じて中国側に申し入れを行ったと述べました。

水産庁によりますと、中国漁船に乗り込んだ職員はその後、日本側の船舶に戻り、けがなどはなかったということです。

事案の経緯

水産庁によりますと、先月5日の午前中に、水産庁の漁業取締船が鹿児島県西方沖の日本のEEZ=排他的経済水域内で違法に操業している疑いがある中国漁船を見つけました。

このため、水産庁は、この漁船に停船を命じたうえで、法律に基づく強制的な立ち入り検査を行うため、職員およそ10人が中国漁船に乗り込みました。

しかし、中国漁船は止まらずに、職員を乗せたまま日本と中国の双方が漁業を行うことができる海域まで移動したということです。この際、日本の取締船も一緒に移動しました。

この海域では、強制的な検査を行うことができないため、水産庁の職員は任意で船長への聞き取りなどを行いました。しかし、違法に操業していた証拠が十分に得られず、職員たちはその日の夜に調べを終えて取締船に戻ったということです。

職員たちが中国漁船に乗っていたのはおよそ12時間だったということです。

水産庁は「検挙できなかったことは遺憾だ」としたうえで、「中国漁船が検査に協力せず、移動を続けたことは『逃走』にあたると考えられ悪質だ」として、外交ルートを通じて中国側に抗議しました。

水産庁による外国漁船への立ち入り検査は、去年1年間で24件あり、このうち19件で中国漁船が対象でした。

中国外務省「強い不満を表明」

中国外務省の華春瑩報道官は27日の記者会見で、「中国の船が境界を越えて操業していたというのは事実ではない」と述べ、日本の排他的経済水域だったこと自体を否定しました。

そして、華報道官は「日本の水産当局が立ち入り検査を行ったことに強い不満を表明する」と反発したうえで、「日本側が両国間の漁業協定を守り、中国の漁業関係者の正当な権利を尊重し、正常な操業を妨害しないよう望む」と述べて、立ち入り検査が不当だったという立場を強調しました。