81ミリ迫撃砲の使用は
原因判明まで中止」防衛相

14日午後、滋賀県高島市にある陸上自衛隊の演習場から発射された砲弾1発が近くを通る国道付近を直撃し、アスファルトなどの破片が近くに止まっていた車にぶつかりました。警察によりますと車の窓ガラスが割れたものの乗っていた男性にけがはありませんでした。

防衛省によりますと14日午後1時20分ごろ、滋賀県高島市にある陸上自衛隊の饗庭野演習場で、迫撃砲弾を発射する訓練を行っていたところ、誤って1発が演習場の外に飛んだということです。

警察によりますと、砲弾は演習場の近くを通る国道303号線の道路付近を直撃し、アスファルトなどの破片が近くに止まっていた車にぶつかりました。

車には高島市内に住む71歳の男性1人が乗っていましたが、けがはありませんでした。男性は「後部座席の窓ガラスが突然割れたため周囲を確認したところ、40メートルほど離れたところで黒煙が上がっていて、砲弾1発が落ちていた」などと警察に話しているということです。

防衛省によりますと当時、訓練を行っていたのは、大阪・和泉市にある陸上自衛隊信太山駐屯地に所属する第37普通科連隊で、訓練には「81ミリ迫撃砲」が使われていたということです。

通常、発射訓練を行う際は、砲弾が演習場の外に飛ばないよう、複数の隊員が関わって発射機の角度や火薬の量を変えて飛ばす距離を調整するほか、目標地点を監視する隊員も配置するということで防衛省が当時の訓練の状況を調べています。

防衛相「原因判明まで81ミリ迫撃砲の使用中止」

岩屋防衛大臣は午後6時半ごろ防衛省で記者団に対し、「訓練中にこのような事案が発生したことは誠に申し訳なく思っている。このあと、山田防衛政務官を現地に向かわせる。原因が判明するまで、81ミリ迫撃砲の使用は全国的に中止する」と述べました。

そのうえで、岩屋大臣は「事故対応をしっかり行っていくと同時に、このような事案が今後、発生しないように再発防止に努めていく」と述べました。

自衛隊をめぐっては、今月7日にも、航空自衛隊のトラックが、青森県内で住宅に突っ込む事故が発生していて、岩屋大臣は「深刻に受け止めており、あすにも幹部を招集して安全徹底を図りたい」と述べました。

車の男性「強烈な音が聞こえた」

破片が当たった車を運転していた、高島市内に住む70代の男性は「車を脇道にとめた瞬間、爆弾が爆発するような強烈な音が聞こえ、窓ガラスが割れた。破片は車の後ろの左側にあたったようで痕がいくつもついている。本当にびっくりした」と話していました。

饗庭野演習場では過去に事故も

滋賀県高島市の陸上自衛隊の饗庭野演習場は、市役所から西に1キロ余り離れた山の中にあります。

饗庭野演習場では、3年前の平成27年7月に、およそ2.5キロ離れた住宅の天井に穴が開き、部屋から訓練で重機関銃から発射された銃弾が見つかりました。

この問題で高島市は、必要な場合は、市が訓練の中止を求めたり演習場に立ち入りしたりする覚書を、自衛隊と結んでいます。

元幕僚長「1キロのずれ 通常考えられない」

今回の事故について、陸上自衛隊トップの陸上幕僚長を務めた森勉さんは「迫撃砲は小銃や戦車砲とは違って発射地点からは直接見えない地点を狙うため、発射する際は目標地点を綿密に計算したうえで発射する方向や角度を調整する。見えない地点を狙うためどうしても誤差は出るが、安全には細心の注意を払うので、目標地点から1キロもずれることは通常では考えられないことだ」と話しています。

そのうえで原因については、「発射装置や砲弾そのものに不具合があったか、強風が吹くなど、気象条件に問題があったか、さらには発射する際の隊員の手順にミスがあったかの3つが考えられる。なぜ1キロもずれてしまったのか原因を徹底的に究明することが必要だ」と話しています。

市長「原因究明 強く要請」

高島市の福井正明市長は「3年前にも重機関銃の弾が住宅に着弾し、その際に徹底した安全対策を要望したにもかかわらず、再びこのような事案が起き、極めて遺憾だ。直ちにあらゆる実弾射撃訓練を中止し原因究明を徹底するよう強く要請する」とコメントしています。