認撤回の効力を停止
することにした」国交相

沖縄のアメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設をめぐり、沖縄県が埋め立ての承認を撤回したことについて、石井国土交通大臣は、30日の閣議のあとの記者会見で防衛省の申し立てを受けて、沖縄県の撤回の効力を一時的に停止する、執行停止を行うことを明らかにしました。これを受けて、防衛省は、速やかに埋め立て工事を再開する方針です。

この中で、石井国土交通大臣は「沖縄防衛局と沖縄県から提出された書面を審査した結果、承認撤回の効力を停止することにした」と述べ、沖縄県が埋め立て承認を撤回した効力を一時的に停止する、執行停止を行うことを明らかにしました。

その理由について、工事ができないことで生じる経済的な損失のほか、普天間基地周辺の事故や騒音の被害の防止を早期に実現することが困難になること、日米間の同盟関係などにも悪影響を及ぼしかねないという外交・防衛上の不利益が生じることなどを挙げています。

現場の埋め立て工事は、ことし8月、沖縄県が埋め立ての承認を撤回したことから中断していて、防衛省は今月17日、工事の再開を目指し、行政不服審査法に基づいて、埋め立ての法律を所管する国土交通大臣に、執行停止の申し立てを行っていました。

執行停止の効力は、この決定を通知する文書が沖縄防衛局に到達する31日から発生する見込みだということです。
これを受けて、防衛省は速やかに埋め立て工事を再開する方針です。

防衛相「速やかに工事再開する」

岩屋防衛大臣は、閣議のあと、記者団に対し「けさ、国土交通省から、沖縄防衛局に対して執行停止をするという連絡を受けた。現地の気象などを踏まえて準備を進め、速やかに工事を再開したい」と述べました。

そのうえで、岩屋大臣は「沖縄の負担軽減という一貫した方針で進めており、1日も早い返還を成し遂げるためにも、できるだけ速やかに工事を再開することが必要だ」と述べました。

官房副長官「協力得られるよう粘り強く」

西村官房副長官は、閣議のあとの記者会見で「政府としては、アメリカ軍普天間基地の危険除去、辺野古移設に関する考え方、そして、沖縄の負担軽減を目に見える形で実現するという取り組みについて丁寧に説明し、知事をはじめ地元の皆様のご理解、ご協力を得られるよう粘り強く取り組んでいく所存だ」と述べました。

沖縄県副知事「執行停止は理不尽」

沖縄県の富川副知事は30日午前、県庁で記者団に対し「執行停止は理不尽なことだ。リーガルチェックなどを含めて協議をして知事に報告したい」と述べました。

県民からは国の対応に批判の声

沖縄県民からは、政府の対応を批判する声が聞かれました。

このうち、那覇市の78歳男性は「新しい基地を増やすような辺野古移設はやめてもらいたい。政府は、県民に寄り添っていないように感じるので、丁寧な対応をしてほしい」と話していました。

那覇市の34歳女性は「翁長元知事の遺志を受け継いだ玉城知事が就任したにもかかわらず、国が対抗してくるやり方は好ましくない。結局、沖縄は日本として認められていないのではないかと感じてしまう」と話していました。

また、那覇市の83歳男性は「県民がいくら移設反対を訴えても政府はいつも上から押しつけてくる。諦めのような気持ちもあるが、子や孫に負担を残したくないという思いだけだ」と話していました。

立民 辻元国対委員長「民意の切り捨て」

立憲民主党の辻元国会対策委員長は、記者団に対し「沖縄の民意の切り捨てであり、強く抗議したい。安倍政権は、美辞麗句を言って、やっていることは全然違う二枚舌で、口先内閣だ。国会論戦でしっかりただしていくと同時に、政府に対し、野党6党派で抗議せざるをえない」と述べました。

国民 玉木代表「政府は丁寧な対応を」

国民民主党の玉木代表は、記者団に対し、「民意を無視して強引に進めることに沖縄の皆さんは憤りを感じていると思う。日米の安全保障は、地域住民の理解の上に成り立つものであり、改めて丁寧な対応を政府に呼びかけたい」と述べました。

社民 又市党首「国による自作自演」

社民党の又市党首は記者会見で、「行政不服審査法は私人が国や行政に不服を言う制度で、防衛省が私人となって国土交通省に申し立てるのは法の趣旨に反する乱用だ。国による自作自演であり、沖縄の民意切り捨てに厳重に抗議する」と述べました。

国交省「防衛局も申立人」

行政不服審査法は、行政の不当な処分などから国民の権利を救済することを目的としていて、処分を受けたのが一般の人とは異なる立場の「固有の資格」がある場合、不服を申し立てる当事者にはならないとされています。

今回、防衛省沖縄防衛局が沖縄県の処分に不服を申し立てたことについて、行政法の研究者らからは「国は特別な法的地位にあり、行政不服審査法に基づく措置は違法だ」などとする指摘もあり、沖縄防衛局を申立人として認めるかどうか、国土交通省の判断が注目されていました。

これについて、国土交通省は30日の決定で、沖縄県の埋め立て承認の取り消しは違法だとした、おととしの最高裁判所の判決などを根拠に、国の機関であっても行政の処分を受けていれば一般の人と同じように申し立てができるという解釈を示しました。