LGBT法案 自民修正案に立民など反発 “内容が後退”

LGBTの人たちへの理解を増進するための議員立法をめぐり、超党派の議員連盟の役員会で、自民党が、差別に関する文言の修正案に理解を求めたのに対し、立憲民主党などは「内容が後退している」と反発し改めて議員連盟として議論すべきだと主張しました。

LGBTの人たちへの理解を増進するため、超党派の議員連盟がおととし、まとめた法案は、自民党内の一部の根強い反対で国会へ提出されていません。

自民党執行部は、党内での議論を踏まえ「性自認を理由とする差別は許されない」という文言を、「性同一性を理由とする不当な差別はあってはならない」と変更する修正案を16日にもまとめたいとしています。

これを受けて、超党派の議員連盟の役員会が15日国会内で開かれ、自民党は、文言を変更しても法的な意味は変わらないなどと説明するとともに、今後、各党の政策部門で議論が行われるとして、出席者に修正案への理解と協力を求めました。

これに対し、公明党は「法案の趣旨が変わらないことが確認できれば、いまの国会で成立させることが重要だ」と応じましたが、立憲民主党は「内容が後退している」と反発し議員連盟として総会を開き、改めて議論すべきだと主張しました。

また、共産党は修正案は受け入れられないとの考えを表明したほか、日本維新の会と国民民主党は「議員連盟で合意した法案の内容を変える必要はない」などと指摘しました。

焦点の“文言修正”とその背景

今回、焦点となっているのは、超党派の議員連盟がおととしまとめた法案で、法案の「基本理念」の部分などに盛り込まれた「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」という文言です。

「性自認」という文言は

自民党の一部の議員は「性自認」という文言について「男性が『性自認は女性だ』と偽って女性用のトイレや風呂に入るなど、悪用される恐れがある」などと指摘していました。

これを踏まえ、自民党の修正案では「性自認」の文言をより客観的な表現として「性同一性」に改めました。
これに対し立憲民主党は「性自認」を「性同一性」と修正すると、対象が、性転換手術をした人や、戸籍上の性別を変更した人などに狭まると捉えられる可能性があるとして、LGBTの人たちの中で、法案の対象になる人とならない人が出てくるため、新たな差別が生まれるのではないかとしています。

「差別は許されない」という文言は

また、自民党の一部の議員は「差別は許されない」という文言に対しても「禁止事項と誤解され、訴訟が乱発される恐れがある」とか、「社会の分断を生み、多様性を認める法案の趣旨に合わない」といった懸念があると反発していました。
このため安倍元総理大臣が総理大臣在任中に、国会で複数回答弁していた「LGBTと言われる性的少数者などに対する不当な差別や偏見はあってはならないことだ」という表現を踏まえ「不当な差別はあってはならない」に変更しました。

法案に反発する議員に、安倍氏に近かった議員が多かったことも踏まえ、安倍氏の答弁を踏襲することで、理解を得る狙いがあったものと見られます。
これについて立憲民主党は、差別には正当や不当といった区別はなく、すでに今も差別は起きているとして「差別は許されない」という文言で理解増進や施策が行われるべきだとしています。

自民 岩屋元防衛相 “今国会で成立を”

超党派の議員連盟で会長を務める自民党の岩屋元防衛大臣は、記者団に対し「厳しい意見はあったが、前に進めないといけないという思いは共有できている。G7広島サミット前に成立させることが望ましいという考え方で臨んできたが、かなり日程的に厳しくなっていることも事実だ。法案の提出は、自民党の執行部側が日程的に考えていると思うので、できるだけ迅速にすることを期待している。この国会では成立をさせなければいけない」と述べました。

立民 西村代表代行 “はっきり言って後退 なぜ変えるか”

立憲民主党の西村代表代行は、記者団に対し「はっきり言って後退だ。修正しても意味は変わらないという説明もあったが、それでは、なぜ変える必要があるのか。2年もたなざらしにして、ここで修正するのは、当事者や国民からも後退と見られると思う。『差別は許されない』という考え方に立脚することが必要だ」と述べました。

公明 山口代表 “広島サミット前に国会提出すべき”

公明党の山口代表は、党の会合で「多様性を認め合い、包摂性に富んだ社会を目指す上で、法案を一刻も早く成立させる必要がある。性的少数者を守る法制度について、日本はG7の中で大きく遅れているので、広島サミット前に国会提出をすべきだ」と述べました。