日銀総裁に経済学者の植田和男氏起用 国会が同意

日銀の次の総裁に経済学者の植田和男氏を起用し、2人の新たな副総裁を充てる政府の人事案は、参議院本会議で可決され、国会で同意されました。植田氏は、来月就任し、戦後初の学者出身の総裁が誕生します。

新しい日銀の総裁に、元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏を起用する政府の人事案は、3月9日に衆議院で同意されたのに続いて、10日に参議院本会議で採決が行われました。

その結果、自民・公明両党や立憲民主党などの賛成多数で可決され、国会で同意されました。共産党と政治家女子48党は反対しました。

また、新たな副総裁に前金融庁長官の氷見野良三氏と、日銀理事の内田眞一氏を充てる人事案も賛成多数で可決され、国会で同意されました。氷見野氏の起用には、自民・公明両党や立憲民主党などが賛成し、共産党と政治家女子48党は反対しました。内田氏の起用には、自民・公明両党と、日本維新の会などが賛成し、立憲民主党、共産党、政治家女子48党などが反対しました。

総裁と副総裁の任期は5年で、植田氏は今の黒田総裁の任期が4月8日までとなっていることから、翌9日に就任し、戦後初の学者出身の総裁が誕生します。2人の副総裁は、3月20日に就任します。

このほか、公正取引委員会の委員など11機関、28人の人事案の採決も行われ、いずれも可決され、同意されました。

新体制の課題

黒田総裁の後任として日銀の新しい体制を担う植田氏は、これまでの路線を受け継ぎ、当面2%の物価安定目標を目指して大規模緩和を継続する姿勢を示しています。

また植田氏は、次の任期の5年間を「積年の課題であった物価安定の達成というミッションの総仕上げを行う5年間」と位置づけ、今の金融緩和策を平時の姿に戻す「出口」も模索していくことになります。

ただ、その実現にはなお時間がかかると述べています。

また、大規模な金融緩和が長期化したことによる副作用にどう向き合うのかも課題となります。

植田氏自身も今の金融緩和の枠組みについて「さまざまな副作用を生じさせている面は否定できないと思う」と指摘しています。大量の国債の買い入れで、日銀が保有する国債の残高は2022年9月末の時点で500兆円を超え、短期を除くと、半分以上を日銀が保有する異例の状況となり、財政規律の緩みにつながっているという指摘もあります。

市場には、大量の国債の買い入れを続ける今の政策はいつまでも持続できないという見方が広がり、緩和策の修正を見越した投資家が国債を売って長期金利に上昇圧力がかかるなど、日銀と市場の攻防も激しくなっています。

戦後初めての学者出身の総裁となる植田氏率いる新体制は、難しいかじ取りを迫られることになります。

官房長官 “政府・日銀の共同声明の扱い 新総裁と議論が必要”

デフレ脱却に向け2%の物価上昇率を目標とする今の政府・日銀の共同声明について、松野官房長官は記者会見で、来月、植田和男氏が新しい日銀総裁に就任したあとに扱いを議論する必要があるという認識を示しました。

この中で松野官房長官は、日銀の次の総裁に経済学者の植田和男氏を起用するなどとした、政府の人事案が国会の同意を得たことを受け「引き続き政府との連携のもと、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、適切な金融政策運営を行われることを期待している」と述べました。

そのうえでデフレ脱却に向け2%の物価上昇率を目標とし、黒田総裁のもとでおよそ10年維持されてきた、今の政府・日銀の共同声明を見直すかどうかについて「新しい総裁とも議論する必要があると考えている」と述べ、4月、植田氏が新しい総裁に就任したあとに扱いを議論する必要があるという認識を示しました。