新年度予算案 衆議院通過 れいわ 牛歩戦術「愚か者め」と叫ぶ

一般会計の総額が過去最大の114兆円余りとなる新年度予算案は2月28日、衆議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党などの賛成多数で可決され、参議院に送られました。予算案は、憲法の規定により、年度内に成立することになりました。

一般会計の総額が、初めて110兆円を超え114兆円余りと過去最大となった新年度=令和5年度予算案は、衆議院予算委員会で可決されたあと、衆議院本会議で採決が行われました。

採決に先立つ討論で、自民党の牧原秀樹氏は「予算案には、5年間で43兆円の新たな防衛力整備計画の初年度として必要な防衛予算を計上している。『自分の国は自分で守る』という意思と能力を有することを世界に示す極めて大切なものだ」と述べました。

一方、立憲民主党の野間健氏は「防衛関連予算の中身は兆単位のどんぶり勘定で、そこには合理性や必然性がない。国民にさらなる負担を強いる増税をはじめ、認めることができない数多くの問題が存在しており、断固として反対する」と述べました。
このあと、記名投票による採決が行われ、自民・公明両党などの賛成多数で可決され、予算案は参議院に送られました。

去年、令和4年度予算案に賛成する異例の対応をとった国民民主党は反対しました。

新年度予算案は、憲法の規定により、衆議院を通過して30日たてば、参議院で採決が行われなくても自然成立するため、年度内に成立することになりました。

予算案は、3月1日から舞台を参議院に移して審議が行われます。

岸田首相「引き続き緊張感をもって審議に臨む」

岸田総理大臣は、総理大臣官邸を出る際、記者団に対し「あすから参議院での審議が始まる。予算成立に向け、引き続き緊張感を持って政府一丸で審議に臨み、丁寧な説明を心がけていきたい」と述べました。

磯崎官房副長官「1日も早い成立に向けて努力」

磯崎官房副長官は記者会見で「新年度予算案は、防衛力の抜本的な強化や子ども・子育て支援の強化、それに物価高にも負けない賃上げに向けた支援など、わが国が直面する内外の重要課題に道筋を付け、未来を切り開くために非常に重要なものだ」と述べました。

そのうえで「予算案に盛り込まれた取り組みを国民に理解いただけるよう、参議院でも審議を通じて丁寧な説明に努め、1日も早い成立に向けて努力していきたい」と述べました。

自民 世耕参院幹事長「与党であるが、厳しく詰める」

自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「衆議院の審議は政府と野党でかなり緊張したやりとりがあった。参議院でも、国民の関心の高い子育てや外交・安全保障、これからのコロナ対策などについて、与党であるが、政府に対して厳しく詰めるべきところは詰めていきたい」と述べました。

自民 遠藤総務会長 “統一選控え 国民反対か”

自民党の遠藤総務会長は、記者会見で「安全保障や外交、子ども政策など、時代に対応した新年度予算案になっている。ぜひ年度内の成立を図ってもらいたい」と述べました。

また、国民民主党が採決で反対したことについて「去年は賛成していただいたので、ことしも賛成してもらえればありがたいと思っていた。党の事情もあり、まもなく統一地方選挙もある中での判断だろう」と述べました。

立民 泉代表「国民の不安が倍増するような予算」

立憲民主党の泉代表は、記者団に対し「防衛予算はかなり上積みしたが、内訳は不明で、子ども予算も実際には中身が何も決まっていない。賃上げの具体的な対策や取り組みは不十分で、国民の不安が倍増するような予算だ。児童手当の所得制限の撤廃は岸田総理大臣が決断すべきで、さらなる子ども・子育て予算の確保と上積みを主張していきたい」と述べました。

立民 安住国対委員長「思いつきで発言して理屈があと」

立憲民主党の安住国会対策委員長は、党の代議士会で「大変中身が濃い議論だったが、岸田総理大臣は、戦略的に積み上げて政策を成し遂げるというより、思いつきで発言して、理屈があとからくる感じがあった。まだ審議は不十分で、参議院をサポートしながら自民党との考えの違いを徹底的に訴えていきたい」と述べました。

公明 石井幹事長“年度内成立で 国民に成果提供”

公明党の石井幹事長は記者団に「年度内成立が確実になり、新年度早々に国民に成果を提供できる意味で非常に意義があった。岸田総理大臣は安定して丁寧な答弁を心がける特徴を発揮していた」と述べました。

維新 馬場代表 “予算の規模 大きくなればという考え方”

日本維新の会の馬場代表は、記者会見で「ただ予算の規模が大きくなればいいという考え方に見える。防衛力を高めることや子どもへのサポートは多くの国民が求めているが、財源が足りなければ増税か借金という安易な道を選んでいることに非難がある。行財政改革を積み重ね、財源の確保に向けて知恵を絞り汗をかく必要がある」と述べました。

国民 玉木代表「持続的な賃上げの実現には不十分」

新年度予算案の採決で去年は賛成し、今回は反対した国民民主党の玉木代表は記者団に「持続的な賃上げの実現には不十分な予算だ。電気代の値下げなどが取れれば賛成する判断もあったが、国会での岸田総理大臣とのやりとりでは、具体的な成果が見えづらく、賛成に足る材料がなかったので反対した」と述べました。

共産 志位委員長「戦後最悪の予算」

共産党の志位委員長は記者団に「『敵基地攻撃能力』の保有と空前の大軍拡という、かつてない危険な道を具体化しようとする戦後最悪の予算だ。国民の暮らしの予算は全部踏み潰し、軍事だけが突出している予算案の採決を強行したことは道理がなく、強く抗議する」と述べました。

れいわ 大石・櫛渕両共同代表 「牛歩戦術」を展開

衆議院本会議の記名投票による採決では、れいわ新選組の大石・櫛渕両共同代表が、ゆっくり歩いて時間を稼ぐ「牛歩戦術」を展開し、細田議長から速やかな投票を何度も求められました。

細田議長が「1分以内に投票しなければ棄権とみなす」と通告すると、2人とも壇上におもむき、大石氏は「この愚か者めが」などと叫んで予算案に反対の意思を示していました。

衆議院の議院運営委員会は、今後の理事会で2人の言動について協議する方針です。