地方の公共交通再構築へ 「協議運賃制度」導入など検討 国交省

ローカル鉄道など厳しい経営状況にある地方の公共交通の再構築に向け、国土交通省の審議会は、鉄道事業者が自治体や住民との合意を得れば、届け出だけで運賃設定できる「協議運賃制度」の導入など、新たな仕組みや財政支援策の素案をまとめました。

国土交通省は、人口減少やコロナ禍の影響で地方の鉄道やバスなどが危機的な経営状況に陥っているとして、公共交通の再構築について審議会で検討していて、17日は中間取りまとめの素案がまとまりました。

この中では、鉄道事業者が沿線自治体や住民との合意を得れば、国の認可を得ずに届け出だけで運賃設定できる「協議運賃制度」や、路線バス事業者などと自治体が協定を結び特定のエリアを一括で運行する場合、国が費用を補助する制度の導入などを盛り込んでいます。

柔軟な運賃設定や、エリア全体での対策を可能にすることで、各地域の実情を反映させやすくするのがねらいです。

このほか、利用者が著しく減少しているローカル鉄道について、自治体や事業者の要請があれば国が主導して協議会を設置できるようにすることや、赤字が続く鉄道などの公共交通を見直す事業を交付金の対象とすることなども盛り込まれています。

国土交通省は、自治体や住民も参加する形で公共交通の再構築の議論や動きを活性化させたい考えで、関連する法律の改正案を、今月開会する通常国会に提出することにしています。

識者「大都市と地方で格差広がる 公共交通考えるきっかけに」

公共交通政策に詳しい筑波大学の谷口綾子教授は「公共交通は1970年ごろがピークで、当時は何もしなくても乗ってもらえたが、自動車の普及で利用者が減少し続け、大都市と地方の間で格差が大きく広がっている。法律を変えたからといって社会がすぐに変わるわけではないが、今回の素案を公共交通をこれからどうしたいかを関係者が考えるきっかけやスタートにしていくべきだ」と指摘しています。

そのうえで「自治体や事業者、利用者、利用していない人、いろんな立場の人が公共交通の議論に関わり、国や都道府県、市町村はそれぞれの役割が何か考え、果たしていく必要がある。現状では向かうべき方向が見えていない自治体が多いが、車社会でいくから公共交通はもういいのか、そうでないのか、それぞれの地域にあった目標を持つことも重要だ」と指摘しています。