防衛費めぐる増税 調整に手間取る可能性も

臨時国会が10日閉会し、岸田総理大臣は、防衛力の抜本的な強化をはじめ年内の重要課題で、着実に成果を出していくと強調しました。ただ、防衛費の増額で不足する財源を賄うために指示した増税の検討には、自民党内から反発が出るなど、調整に手間取ることも予想されます。

臨時国会は10日、旧統一教会の問題を受けた被害者救済を図るための新たな法律などが成立し、69日間の会期を終えて閉会しました。

岸田総理大臣は記者会見で新たな法律について「被害に苦しむ元信者や家族が直面する困難を前に、野党の意見も可能なかぎり取り入れつつ圧倒的多数の合意のもとで成立させることができた」と述べました。

そのうえで、防衛力の抜本的な強化や、来年度予算案の編成など年内の重要課題について、「ベストの結果を出していく」と強調しました。

防衛力の強化に向けて岸田総理大臣は、防衛費の増額で不足する財源を賄うため、与党に増税の検討を指示していて週明けから議論が本格化する見通しです。

岸田総理大臣は、10日夜も国債の発行を否定し、「複数年かけて段階的に実施し、開始時期は柔軟に対応する。未来の世代に責任果たすために協力をいただきたい」と増税に理解を求めました。

ただ、自民党内からは、理解を示す声の一方で、「新たな国民負担は容認できない」などと反対意見が出ています。

また、高市経済安全保障担当大臣も、「賃上げマインドを冷やす発言をこのタイミングで発信された岸田総理大臣の真意が理解できない」と自身のツイッターに投稿していて調整に手間取ることも予想されます。

自民 萩生田政調会長 防衛費財源“国債償還費も検討に値する”

自民党の萩生田政務調査会長は、訪問先の台湾で講演し、台湾への軍事的な圧力を強める中国をけん制しました。また、日本の防衛費の増額で不足する財源をめぐり、国債の償還費の一部を充てることも検討に値するとして、増税以外の財源をさらに追求すべきだという認識を示しました。

与党・自民党の三役として、19年ぶりに台湾を訪問した萩生田政務調査会長は11日朝、日本と台湾の関係をテーマにした会合で講演しました。

この中で、萩生田氏は、「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事である」という安倍元総理大臣のことばに言及したうえで、台湾への軍事的な圧力を強める中国をけん制するとともに、日本、台湾、アメリカの間の連携のさらなる強化を訴えました。

そして、日本の取り組みを紹介し、「NATO諸国と同様のGDP比2%以上を念頭に、5年以内に防衛力の抜本的な強化を進めていく。財源は、歳出改革のほか、場合によっては、国債償還の60年ルールを見直して、償還費をまわすことも検討に値する。2027年以降、さまざまな知恵を絞るが、一定の安定した財源を確保するうえで、税の在り方も、党の中で議論が始まった」と述べました。

防衛費の増額で不足する財源をめぐって、岸田総理大臣は、与党に増税の検討を指示していて、萩生田氏の今回の発言は、自民党内に増税に反対や慎重な意見があることも踏まえ、増税以外の財源をさらに追求すべきだという認識を示した形です。

“防衛費財源に「復興特別所得税」一部活用も” 自民税調

防衛費の増額で不足する財源をめぐり、自民党税制調査会の幹部が会合を開き、法人税を軸に東日本大震災からの復興予算にあてられている「復興特別所得税」の一部を活用するなど、複数の税目を組み合わせる案を基本としながら議論を進めていくことを確認しました。

防衛力の強化に向けて、岸田総理大臣は、防衛費の増額で不足する財源を賄うため、与党に増税の検討を指示しています。

これを受けて、自民党税制調査会の宮沢会長や幹部を務める甘利前幹事長、額賀元財務大臣らが、11日午後、東京都内で会合を開きました。

会合では、法人税を軸にたばこ税や酒税のほか、東日本大震災からの復興予算にあてるため、所得税に上乗せされている「復興特別所得税」の一部を活用するなど複数の税目を組み合わせる案を基本としながら議論を進めていくことを確認しました。

一方、党内から増税の議論に反発の声が出ていることを踏まえ、増税を開始する時期や税率など制度の詳細については、この年末に決定せず、来年以降、議論を継続すべきだという指摘も出されました。

このほか、週内に与党の税制改正大綱のとりまとめを目指す方針を確認しました。

宮沢氏は11日夜、総理大臣公邸で岸田総理大臣と会談しました。税制調査会の議論や党内の状況などをめぐって意見を交わしたものとみられます。

立民 安住国対委員長「復興特別所得税は本末転倒」

立憲民主党の安住国会対策委員長は、11日仙台市で記者会見し、「法人税という話がにわかに出てきているが、『身を切る改革』やむだな予算を省くことに注力せず、何が本当に必要なのかという説明をしっかりしないままに財源の話が1人歩きをしているのは、稚拙でつたない政権運営だ」と指摘し、来年の通常国会で追及していく考えを示しました。

また政府・与党内で、東日本大震災からの復興予算にあてられている「復興特別所得税」の活用が検討されていることについて、「大災害で国民に了解をいただき復興費用を国債に頼らずにやってきた税を、防衛費の増額にあてることは全くの目的外使用で本末転倒だ」と指摘しました。

一方、国会対応をめぐる日本維新の会との今後の連携に関して、「臨時国会での成果はきのう確認し、次の段階にこの財産を生かせるようにしたいということで一致しているが、具体的にどの政策分野で連携していくかは、これから維新の会の遠藤国会対策委員長と話し合いを進めていく」と述べました。