岸田首相 国連総会で演説 「安保理改革に向けた交渉開始が必要」

岸田総理大臣は、国連総会で一般討論演説を行い、安全保障理事会の常任理事国、ロシアのウクライナ侵攻で、国連の信頼性が危機に陥っているとして、安保理改革に向けた交渉開始の必要性などを訴えました。

岸田総理大臣は、日本時間の21日午前、ニューヨークの国連本部で開かれている国連総会で一般討論演説を行いました。

冒頭、創設以来77年間国連が中心になって形成してきた国際秩序の根本がロシアのウクライナ侵攻で大きく揺らいでいると指摘し、「国連憲章の理念と原則を踏みにじる行為だ」とロシアを批判しました。

その上で「今こそ国連憲章の理念と原則に立ち戻り、力と英知を結集するときだ。そのために実現しなければならないのが国連の改革であり、国連自身の機能強化だ」と呼びかけました。

そして、安保理の常任理事国、ロシアのウクライナ侵攻で国連の信頼性が危機に陥っているとした上で「これまでもしばしば、安保理の機能不全が指摘されてきた。改革に向けて文言ベースの交渉を開始するときだ」と安保理改革に向けた交渉開始の必要性を訴えました。

また、▼法の支配の重要性を強調し、日本も来年1月から安保理の非常任理事国として、その強化に取り組むことに加え▼パンデミックやインフレなどで多くの人の安全が脅かされているとして、国連とともに「人間の安全保障の実現」を進める考えを示しました。

このほか、先に開かれたNPT=核拡散防止条約の再検討会合で、ロシアの反対で「最終文書」が採択されなかったことについて「深い無念を感じたが、諦めてはいない。唯一の戦争被爆国だという歴史的使命感を持って『核兵器のない世界』の実現に向けた決意を新たに、現実的な取り組みを進めていく」と述べました。

一方、北朝鮮が拉致問題を認めてから20年がたったことをめぐり、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決する方針は変わらないとした上で、条件をつけずにキム・ジョンウン委員長と向き合う意向を重ねて示しました。

そして、最後に「歴史の分水嶺に立つ今だからこそ、日本は国連に対する強い期待を持ち続ける。時代は変われど変わらないものは国連の理念と原則だ。その確信を持って、国連の強化に向けた道のりを歩んでいく決意だ」と強調しました。

フィリピン マルコス大統領 南シナ海問題「国際法で解決を」

フィリピンのマルコス大統領はニューヨークで開かれている国連総会で演説し、中国との間で領有権を争う南シナ海の問題を念頭に「意見の相違は国際法によって、平和的手段で解決されるべきだ」と述べ海洋進出を活発化させる中国をけん制しつつ、対話を通じて問題の解決を図りたい姿勢を強調しました。

ニューヨークで開かれている国連総会は20日、各国の首脳による一般討論演説が始まり、ことし6月の就任後、初めて国際会合に出席したフィリピンのマルコス大統領が演説を行いました。

この中で、マルコス大統領は中国との間で領有権を争う南シナ海の問題を念頭に「意見の相違は国際法、とりわけ国連海洋法条約によって、平和的手段で解決されるべきだ」と述べ、海洋進出を活発化させる中国をけん制しつつ、対話を通じて問題の解決を図りたい姿勢を強調しました。

国連海洋法条約は2016年に南シナ海における中国の主張を全面的に退けた国際的な仲裁裁判の判断の根拠にもなっていて、マルコス大統領は仲裁判断をもとに中国との協議を進めていくことにしています。

また「アジアでは戦略的・イデオロギー的緊張の高まりにより、これまで築かれた平和と安定が脅かされている」とも述べて南シナ海や台湾をめぐってアメリカと中国の対立が先鋭化することに懸念も示しました。

フランス マクロン大統領 軍事侵攻は「帝国主義への回帰だ」

フランスのマクロン大統領は国連総会で演説し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「帝国主義や植民地の時代への回帰だ」と述べ、厳しく非難しました。

フランスのマクロン大統領は20日、国連総会で演説し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「安全保障理事会の常任理事国であるにもかかわらず、国連憲章に故意に違反し、併合のための戦争へ道をひらいた」と指摘しました。

そのうえで「いまはヨーロッパだが、あすはアジアやアフリカだ。これは帝国主義や植民地の時代への回帰だ」と述べ、厳しく非難しました。

そして、軍事侵攻によるエネルギーや食料の危機で国際社会に分断が生じかねない状況だとして「いくつかの国は中立の立場を維持しているが、いま沈黙することは歴史的な責任を負うことになり、新たな帝国主義を利する」とし、国連憲章のもとですべての加盟国が結束するよう訴えました。

一方で「和平についてのフランスの立場は明確だ。ロシア側とも開戦前から数か月にわたって対話を続けてきた」と述べ、軍事侵攻を終結させるため今後も対話を続ける姿勢を強調しました。

韓国 ユン大統領「世界の自由と平和が脅かされている」

韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領は国連総会で演説し、力による現状変更や核兵器などの大量破壊兵器によって、世界の自由と平和が脅かされていると指摘し、国際社会が連携して克服する必要があると訴えました。

韓国のユン・ソンニョル大統領は20日、就任後、初めて国連総会で演説しました。

この中で、ユン大統領は「国際社会は、力による現状変更と核兵器をはじめとする大量破壊兵器、人権の集団的なじゅうりんにより、再び世界の市民の自由と平和が脅かされている」と指摘しました。

そのうえで「自由と平和に対する脅威には、国連と国際社会が普遍的な国際規範を強く支持し、連帯することで克服していかなければならない」と訴えました。

そして「国連の努力のおかげで韓国はこのように成長することができた」と述べ国連とともに責任を果たす考えを強調しました。

演説について韓国メディアは、名指しはしなかったものの、ウクライナに軍事侵攻しているロシアや、国際社会での影響力の拡大を図る中国、そして、核・ミサイル開発を進める北朝鮮を念頭に置いたものだと伝えています。

また、演説では日本についての発言もなく、記者団がユン大統領に対し国連総会にあわせて岸田総理大臣との首脳会談を行うのかたずねましたが、無言で会場をあとにしました。

トルコ エルドアン大統領「戦争に勝者はいない」仲介へ意欲

トルコのエルドアン大統領は国連総会で演説し、「戦争に勝者はいない」と述べ、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり事態の打開に向けた仲介への意欲を改めて示しました。

トルコのエルドアン大統領は20日、国連総会で演説し「戦争に勝者はいないし、公正な和平に敗者はいない。いま求められているのは、解決に向けた対話と外交だ」と訴えました。

そのうえで、トルコが関与して実現したロシアとウクライナの外相会談や、ウクライナからの船舶での農産物の輸出再開を引き合いに出し、事態の打開に向けた仲介への意欲を改めて示しました。

また、「ザポリージャ原子力発電所でも同じ働きができる」として、原発の安全確保でも仲介の準備があると述べました。

一方で、エルドアン大統領は「国連安全保障理事会のより民主的で透明性のある構造の確立は、全人類が平和を求める上で重要な転機になる。世界は5か国よりも大きいということをあらゆる場で強調する」とし、常任理事国の中国やロシアが拒否権を行使することで機能不全に陥っているとして、改革が必要だという認識を示しました。