新型コロナ全数把握 見直し検討開始へ

新型コロナの全数把握をめぐって、加藤厚生労働大臣は、16日、全国知事会に対し、医療機関などの負担を軽減するため、見直しの検討を始める考えを伝えました。

新型コロナの全数把握をめぐっては、「HER-SYS」と呼ばれる国のシステムに患者の情報を登録する作業などが現場の負担になっているといった指摘から、政府が、重症化リスクの低い患者については入力を最小限にする方針を示しています。

こうした中で、加藤厚生労働大臣は16日、全国知事会の会長を務める鳥取県の平井知事らとオンラインで意見交換しました。

この中で平井知事は全数把握について「必要性は理解しているが、現場は夜遅くまで入力作業をしなければならない。緩和してもらったが、さらに踏み込んでほしい。第7波が終わってからではなく、すぐに取り組んでほしい」と述べ、直ちに見直すよう重ねて要望しました。

これに対し加藤大臣は「対象の見直しも含めた検討はありうる。何を見直すことができるのか考えたい」と述べ、全国知事会などと協議しながら、見直しの検討を始める考えを伝えました。

具体的な見直しは

専門家などの間では、具体的な見直しの方法として▽国に報告を求める患者を重症化リスクなどによって限定したり、▽季節性インフルエンザと同様に定点となる医療機関を指定して定期的に報告を求めたりする方法などが挙がっています。

一方で、見直しを行った場合に適切な感染防止対策を取るために、都道府県別の感染傾向などを十分に把握できる仕組みがつくれるかどうかが課題となっています。

また、見直しに伴って、すべての患者に求めている外出自粛の要請のほか、検査や治療の費用を全額公費で負担していることについても、検討が必要だといった指摘も出ています。

このため、厚生労働省は、今後、日本医師会や全国知事会などの意見も聞きながら、調整を進める方針です。

「感染者 全数把握でなく定点観測に変更も選択肢」都医師会長

新型コロナの感染者の全数把握について、東京都医師会の尾崎会長は、16日、医療機関などの負担になっているとしたうえで「全数把握ではなく、一部の医療機関での定点の観測に変更することも選択肢のひとつではないか」と述べました。

新型コロナでは、感染症法に基づいて医療機関から保健所にすべての感染者を届け出る「全数把握」が義務づけられていて、医療機関のスタッフなどが「HER-SYS」と呼ばれるシステムに登録する作業を担っています。

一方で、入力作業が現場の負担になっていると指摘されていて、国は重症化リスクの低い患者については入力項目を最小限にする方針を示しています。

こうしたなか、東京都医師会の尾崎治夫会長は、16日の定例会見で「感染者数が高い水準にある現状で、全数把握ができているとは、とても思えず、すでに破綻していると思う。今後、一部の医療機関による定点の観測に変更することもひとつではないか」という認識を示しました。

そのうえで「やはり、60歳以上や基礎疾患のある人については、全例をしっかりと診断する。そして、早期治療に結びつけることを、徹底してやるべきだ。そういう形に変えていってもいいのではないか」と指摘しました。

このほか、高齢者や基礎疾患のある人の重症化を防ぐために、東京都医師会と自治体などが連携して、地域ごとに発熱外来を設置することを検討していることを明らかにし「医療機関の実情を聞きつつ、余力のあるところには協力して頂き、主に重症化リスクの高い人をしっかりみていく振り分けが必要だ」と述べました。