岸田首相の外遊まとめ ロシアの制裁措置を発表

東南アジアとヨーロッパを歴訪していた岸田総理大臣は、一連の日程を終え、日本時間の6日未明、最後の訪問国イギリスを出発し、帰国の途につきました。
これに先立って岸田総理大臣は記者会見で、ロシアに対する新たな制裁措置を発表しました。

岸田総理大臣は先月29日から8日間の日程で、インドネシア、ベトナム、タイ、イタリア、バチカン、イギリスを歴訪し、各国の首脳らと会談しました。

一連の首脳会談では、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアや、覇権主義的行動を強める中国を念頭に、いかなる地域でも力による現状変更は認められないという基本的な姿勢を共有するとともに自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、緊密に連携していく方針で一致しました。

岸田総理大臣は、日本時間の5日夜、最後の訪問国イギリスで記者会見し「国際社会が歴史的な岐路に立つ中、東南アジア、ヨーロッパの合わせて6か国を『平和を守る』との目的で訪問し確かな成果を得たと手応えを感じている」と強調しました。

そのうえで、G7と連携してロシアに対する圧力をさらに強化するとして、資産凍結の対象となる個人をおよそ140人追加するなどとした新たな制裁措置を発表しました。

一方、岸田総理大臣は、新型コロナ対策をめぐって「感染状況は大都市圏を中心に減少が続いているが、連休中の人出増もあり予断は許されない」と指摘しました。

そして、保健医療体制の維持・強化やワクチン接種を引き続き着実に進め、大型連休後の感染状況を見極めたうえで、来月にも専門家の見解も踏まえつつ、水際対策を含めた新型コロナ対策を段階的に見直していく考えを示しました。

一連の日程を終え、岸田総理大臣は、日本時間の6日午前1時半すぎ、政府専用機で現地をたち、帰国の途につきました。

日本・イタリア首脳会談 対ロ制裁 ウクライナ支援強化で一致

岸田総理大臣はイタリアのドラギ首相と首脳会談を行い、ウクライナ情勢について平和や秩序を守り抜くための正念場を迎えているとして、両国がロシアに対し前例のない強力な制裁を科すとともに、ウクライナの政府と国民を全力で支えていくことが両国の共通の責務だとして支援を強化していくことで一致しました。

東南アジアとヨーロッパを歴訪中の岸田総理大臣はイタリアの首都ローマで日本時間の4日午後7時半すぎからおよそ40分間、ドラギ首相と初めての首脳会談を行いました。

この中で岸田総理大臣はウクライナ情勢をめぐって先に訪問した東南アジア3か国で理解と協力を求めたことなどを伝え、両首脳は今後もアジアやヨーロッパと歴史的に関係が深いアフリカへの働きかけを続けることが重要だという認識で一致しました。

また平和や秩序を守り抜くための正念場を迎えているとして、両国がロシアに対し前例のない強力な制裁を科すとともにウクライナへの支援を強化していくことで一致しました。

そのうえでG7=主要7か国をはじめとする国際社会が今回の軍事侵攻に毅然と対応することが重要だという認識を共有するとともに、ウクライナの政府と国民を全力で支えていくことが両国の共通の責務だということを確認しました。

また両首脳はヨーロッパとインド太平洋は安全保障上切り離すことができないとして、力による一方的な現状変更は世界のどこであっても認められないという認識を共有したうえで自由で開かれたインド太平洋の実現に向け協力を深めていくことで一致しました。

さらに北朝鮮のミサイル発射について憂慮する問題だという認識を共有するとともに、北朝鮮の核・ミサイルや拉致問題の解決に向けて国際社会が緊密に連携していくことが重要だという認識を確認しました。

ドラギ首相「ロシアに圧力をかけ続けていく」

イタリアのドラギ首相は岸田総理大臣との会談のあとの共同記者発表でウクライナ情勢をめぐって「イタリアと日本は一部地域での戦闘停止を含め停戦ができるだけ早く実現するよう力を注ぎ、ウクライナへの支援を続ける。ロシアに敵対的な行為を速やかにやめさせるように圧力をかけ続けていく」と述べ、一致して取り組む考えを強調しました。

またドラギ首相はインド太平洋をめぐって「イタリアとEU=ヨーロッパ連合、そして日本はインド太平洋における安定と安全の重要性を共有している。ルールに基づく国際秩序を守るために結束と決意を示し続けなければならない。それは南シナ海などにおいても同様だ」と述べ、中国の海洋進出を念頭に日本との連携を強める考えを示すとともに北朝鮮のミサイル発射についても懸念を共有するとしています。

岸田首相 ローマ教皇と会談 核兵器なき世界実現へ協力確認

ヨーロッパを歴訪中の岸田総理大臣は、日本時間の4日午後、ローマ・カトリック教会の中心地バチカンで、フランシスコ教皇と会談しました。ウクライナ情勢をめぐって、平和を取り戻す決意で一致するとともに、核兵器のない世界の実現に向けて協力を進めることを確認しました。

岸田総理大臣は、ローマ・カトリック教会の中心地バチカンを訪れ、日本時間の4日午後3時半ごろから、フランシスコ教皇とおよそ30分間会談しました。

日本の総理大臣がバチカンを訪れて教皇と会談するのは、およそ8年ぶりです。

会談で岸田総理大臣は「日バチカン国交樹立80周年の節目に、お目にかかることができて光栄だ。2019年に訪日し、被爆地の広島、長崎への訪問を果たしていただいたことに感謝する」と述べました。

そのうえで「教皇の平和へのメッセージと『核兵器のない世界』へのメッセージは、多くの日本国民の心に深く刻まれた。被爆地・広島出身の総理大臣として『核兵器のない世界』に向け、バチカンと協力したい」と述べ、両氏は、核兵器のない世界の実現など、人類共通の諸課題に対応するため協力を進めることを確認しました。

また、会談では、ウクライナ情勢をめぐっても意見を交わし、むこの民間人の殺害を非難するとともに、非道な軍事侵攻を終わらせて、平和を取り戻す決意で一致しました。

さらに、岸田総理大臣は、4日も北朝鮮が弾道ミサイルを日本海に向けて発射したことに触れたうえで、北朝鮮の核・ミサイルに対して懸念を示すとともに、拉致問題の即時解決に向けて引き続き理解と協力を求めました。

このあと岸田総理大臣は、バチカンの首相にあたるパロリン国務長官と首脳会談を行い、ウクライナ情勢をめぐり、核兵器による威嚇も使用もあってはならないという認識で一致しました。

日英首脳会談 “力による現状変更認めず” ロシアや中国念頭に

岸田総理大臣は、イギリスのジョンソン首相と首脳会談を行い、ロシアや中国を念頭に、力による一方的な現状変更は世界のいかなる地域でも認められないという認識で一致しました。
また両国の安全保障協力を強化するため、自衛隊とイギリス軍が共同訓練などを円滑に進めるための協定の締結で大枠合意しました。

岸田総理大臣とジョンソン首相との首脳会談は、日本時間の5日午後7時半ごろからロンドンの首相官邸で2時間近く行われました。

この中で両首脳は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は国際秩序全体の根幹を揺るがす事態だという認識で一致し、G7をはじめ国際社会が結束・連携して強力な制裁とウクライナ支援を継続していくことを確認しました。

また、岸田総理大臣の今回の東南アジア訪問を踏まえ、両首脳は、アジア・アフリカなどへの働きかけが重要だという認識で一致しました。

そして、ロシアによる軍事侵攻や、覇権主義的行動を強める中国を念頭に、ヨーロッパ・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であり、力による一方的な現状変更は世界のいかなる地域でも認められないという認識で一致しました。

そのうえで「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、両国で緊密に連携していくことを改めて確認しました。

会談では、両国の安全保障協力をさらに強化するため、自衛隊とイギリス軍が共同訓練を行う際などの対応を定める「日英円滑化協定」の締結で大枠合意し、今後、協定の早期署名に向け作業を加速させることを確認しました。

航空自衛隊の次期戦闘機のエンジン開発をめぐり、ことしの年末までに協力の全体像を合意することで一致しました。

また、経済安全保障やエネルギー安全保障の重要性を共有し、ウクライナ情勢で顕在化したリスクを踏まえ、日英両国やG7で連携を強化していく方針を確認しました。

さらに、イギリスのTPP=環太平洋パートナーシップ協定への加入をめぐって意見を交わしたほか、ジョンソン首相から、原発事故のあと続けてきた福島県産食品などの輸入規制措置について議会手続きが進めば、来月末までに撤廃する方針が伝えられました。

このほか、4日に北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを踏まえ、北朝鮮の核・ミサイルや拉致問題への対応に引き続き連携していくことを改めて確認しました。

岸田首相 ロシアに新たな制裁措置を発表

岸田総理大臣は、5日夜、訪問先のイギリスで記者会見し、G7=主要7か国と連携してロシアに対する圧力を強化するとして、資産凍結の対象となる個人をおよそ140人追加するなどとした新たな制裁措置を発表しました。

この中で、岸田総理大臣は、ウクライナ情勢をめぐり「現在、国際社会は大きな歴史の岐路に立っている。世界の平和秩序を守り抜くため、今こそ一層G7の結束を強固なものとしていかなければならない」と述べました。

そのうえで、G7と連携してロシアに対する圧力をさらに強化するとして、
▽資産凍結の対象となる個人をおよそ140人追加し、ロシアの銀行の資産凍結の対象を追加していくこと、
▽輸出禁止の対象となるロシアの軍事団体をさらにおよそ70団体追加すること、
▽それに、量子コンピューターなど先端的な物品などの輸出を禁止するとした新たな追加の制裁措置を発表しました。

また、東南アジア3か国の訪問に触れ、各国との間で力による一方的な現状変更は、いかなる場所でも許されず、主権や領土の一体性が尊重されなければならないことを確認できたとしたうえで「いずれの首脳とも本音で大変有意義な議論ができた」と述べました。

さらに、覇権主義的行動を強める中国を念頭に「ロシアによる侵略はヨーロッパだけの問題ではない。インド太平洋を含む国際社会の秩序の問題であり、力による現状変更をインド太平洋で許してはならない」と述べました。

そのうえで「きのう北朝鮮が弾道ミサイルを発射するなど、厳しさを増す東アジア情勢をめぐっても議論し、各国との間で東シナ海・南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みや経済的威圧への対応、拉致・核・ミサイル問題を含む北朝鮮について、連携して対応していくことでも一致した」と述べました。

一方、みずからが掲げる「新しい資本主義」をめぐり、イギリスとイタリアの両首相と意見を交わし「全く同じ問題意識であり、共感できる」と評価を受けたと強調しました。

さらに、帰国したあと、今月11日にフィンランドのマリン首相、翌12日にはEU=ヨーロッパ連合の執行機関、ヨーロッパ委員会のフォンデアライエン委員長らと会談するほか、今月中に東南アジア諸国の首脳の日本訪問が予定されていると明らかにしました。

そして「日本が、国際社会の中で『日本ならでは』の最大限の貢献をしていく。こうした日本国民の強い決意を背景に、内閣総理大臣として『新時代リアリズム外交』を本格的に動かしていく」と述べました。