ロシア 岸田首相らの入国禁止措置 日本は新たな制裁措置

ロシア外務省は5月4日、ウクライナ情勢を受けた日本の制裁措置への報復として、岸田総理大臣や林外務大臣をはじめ政府関係者など合わせて63人に対し、ロシアへの入国を無期限で禁止する措置をとることを決定したと発表しました。

ロシア外務省は4日、声明を発表し「岸田内閣は前代未聞の反ロシアキャンペーンを展開し、ロシアの経済と国際的な権威を損ねようとする措置を講じている」と非難しています。

そのうえで「国家の最高指導者を含むロシア国民に対する制裁を踏まえ、次の日本国民のロシアへの入国を無期限で禁止することを決定した」として、岸田総理大臣や林外務大臣をはじめ政府や議会の関係者、大学教授、報道関係者など合わせて63人に対してロシアへの入国を無期限で禁止する措置をとることを決定したと発表しました。

日本政府はウクライナ情勢を受けた制裁措置として、プーチン大統領をはじめ政府関係者や軍関係者、大統領の2人の娘などに対する資産凍結のほか、日本駐在の外交官ら8人を追放する措置をとっていて、一連の制裁に対する報復措置とみられます。

ロシア外務省はこれまでにアメリカのバイデン大統領やイギリスのジョンソン首相をはじめ、アメリカ政府関係者や民間企業のトップなどに対してもロシアへの入国を禁止する措置をとっています。

日本の政府関係者「責任は全面的にロシア側にある」

日本政府の関係者は、NHKの取材に対し「日本側に直ちに影響があるわけではない」と述べたうえで「今回の事態を招いたのはロシア側であり、日ロ関係を今のような状態に追いやった責任は全面的にロシア側にある」と指摘しました。

岸田首相 ロシアに新たな制裁措置を発表

岸田総理大臣は、5日夜、訪問先のイギリスで記者会見し、G7=主要7か国と連携してロシアに対する圧力を強化するとして、資産凍結の対象となる個人をおよそ140人追加するなどとした新たな制裁措置を発表しました。

岸田総理大臣は、先月29日からインドネシア、ベトナム、タイ、イタリア、バチカン、イギリスを歴訪し、日本時間の5日午後11時前からロンドンで記者会見を行いました。

この中で、岸田総理大臣は、ウクライナ情勢をめぐり「現在、国際社会は大きな歴史の岐路に立っている。世界の平和秩序を守り抜くため、今こそ一層G7の結束を強固なものとしていかなければならない」と述べました。

そのうえで、G7と連携してロシアに対する圧力をさらに強化するとして、
▽資産凍結の対象となる個人をおよそ140人追加し、ロシアの銀行の資産凍結の対象を追加していくこと、
▽輸出禁止の対象となるロシアの軍事団体をさらにおよそ70団体追加すること、
▽それに、量子コンピューターなど先端的な物品などの輸出を禁止するとした新たな追加の制裁措置を発表しました。

また、東南アジア3か国の訪問に触れ、各国との間で力による一方的な現状変更は、いかなる場所でも許されず、主権や領土の一体性が尊重されなければならないことを確認できたとしたうえで「いずれの首脳とも本音で大変有意義な議論ができた」と述べました。

さらに、覇権主義的行動を強める中国を念頭に「ロシアによる侵略はヨーロッパだけの問題ではない。インド太平洋を含む国際社会の秩序の問題であり、力による現状変更をインド太平洋で許してはならない」と述べました。

そのうえで「きのう北朝鮮が弾道ミサイルを発射するなど、厳しさを増す東アジア情勢をめぐっても議論し、各国との間で東シナ海・南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みや経済的威圧への対応、拉致・核・ミサイル問題を含む北朝鮮について、連携して対応していくことでも一致した」と述べました。

一方、みずからが掲げる「新しい資本主義」をめぐり、イギリスとイタリアの両首相と意見を交わし「全く同じ問題意識であり、共感できる」と評価を受けたと強調しました。

さらに、帰国したあと、今月11日にフィンランドのマリン首相、翌12日にはEU=ヨーロッパ連合の執行機関、ヨーロッパ委員会のフォンデアライエン委員長らと会談するほか、今月中に東南アジア諸国の首脳の日本訪問が予定されていると明らかにしました。

そして「日本が、国際社会の中で『日本ならでは』の最大限の貢献をしていく。こうした日本国民の強い決意を背景に、内閣総理大臣として『新時代リアリズム外交』を本格的に動かしていく」と述べました。