感染者増加傾向もまん延防止等重点措置ただちに適用せず

新型コロナの新規感染者の増加傾向が続く中、政府は、病床の使用率などが低い水準にあるとして、ただちにまん延防止等重点措置は適用せず、各自治体と連絡を取りながら、感染状況や医療提供体制を注視する方針です。

新型コロナへの対応をめぐって、厚生労働省の専門家会合が13日に開かれ、全国で新規感染者数の増加傾向が続く中、大都市部では増加の速度が比較的穏やかなのに対して、一部の地方都市では急速に拡大しているという指摘が出されました。

中でも、沖縄県は、直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数が全国で唯一、600人を超えていて、政府は国と自治体の連絡調整にあたる「リエゾンチーム」を現地に派遣して、状況の把握に努めています。

岸田総理大臣は「病床使用率、重症病床使用率は低い水準にあり、すでに重症化リスクの高い高齢者の85%がワクチンの3回目接種を完了している」と述べ、ただちにまん延防止等重点措置を適用する状況ではないという認識を示しました。

政府としては、オミクロン株の複数のタイプが組み合わさった「XE」と呼ばれるウイルスへの感染が国内の検疫で初めて確認されたことも踏まえ、引き続き各自治体と連絡を取りながら、感染状況や医療提供体制を注視する方針です。

一方、イベントなどの需要喚起策について、政府内では、経済の再生を進めるためにも、大型連休に合わせて開始すべきだという意見がある一方、人の移動が多い時期であり、当面は実施すべきではないという指摘も出ていて、感染状況などを見極めながら慎重に検討していく方針です。

岸田首相 “まん延防止 直ちに適用が必要な状況ではない”

新型コロナ対策をめぐり、岸田総理大臣は13日、新規感染者数が増加傾向にあるものの、病床の使用率が低い水準にあることなどから、直ちにまん延防止等重点措置の適用が必要な状況ではないという認識を示しました。

13日の参議院本会議では、経済安全保障の強化を図る法案の内容などをめぐって質疑が行われ、岸田総理大臣が出席しました。

この中で岸田総理大臣は、新型コロナの感染状況について「足元で新規感染者数は地域による違いがあるものの、全体としては増加傾向にある」と述べました。

そのうえで「病床使用率、重症病床使用率は低い水準にあり、すでに重症化リスクの高い高齢者の85%がワクチンの3回目接種を完了している。現時点で都道府県からまん延防止等重点措置の要請はなく、直ちに重点措置が必要な状況とは考えていない」と述べました。

また、観光やイベントなどの需要喚起策の開始時期について「現時点で直ちに始めることは考えていない」と述べ、感染状況などを見極めながら慎重に検討していく考えを示しました。

一方、13日審議入りした経済安全保障の強化を図る法案について、岸田総理大臣は「経済安全保障は多岐にわたる新しい課題であり、法制上の手当てが必要な喫緊の課題に対応するため制度整備を行うものだ」と述べ早期成立への理解を求めました。

官房長官「知事や専門家とも連携して適切に対応」

松野官房長官は、午後の記者会見で「現時点で都道府県から要請はなく、直ちに必要な状況とは考えていない。平時への移行期間として、新型コロナ対策の全体像で準備してきた保健医療体制をしっかりと稼働させていくことを基本に、感染状況や医療の状況を注視しつつ、知事や専門家とも連携して適切に対応していく。新型コロナワクチンの若い世代の3回目接種も促進していく」と述べました。

また、イベントなどの需要喚起策の開始時期について「感染状況や専門家の意見などを踏まえ総合的に判断する。個別の都道府県での実施は都道府県の意向を踏まえることになっている」と述べました。

専門家会合 新規感染者数は増加傾向 地域差も

新型コロナウイルス対策について助言する、厚生労働省の専門家会合が13日開かれ、全国の新規感染者数は10代以下が減少に転じた一方、50代以上では増加がみられ、全体としては増加傾向が続いているとしました。そのうえで、大都市部での増加速度が比較的穏やかな一方、一部の地方都市では急速に感染が拡大するなど、地域差が出ていると指摘しました。

専門家会合は、現在の感染状況について全国では増加傾向が続いているものの、地域別では新規感染者数が横ばいの地域がある一方で、いわゆる「第6波」のピークから十分に減少しないまま、上昇に転じている地域もあると指摘しました。

また、大都市部では感染者数は多いものの、増加の速度は比較的穏やかなのに対して、一部の地方都市では急速に拡大しているとし、特に岩手県や秋田県、福島県、新潟県、長野県、愛媛県、大分県、宮崎県、それに鹿児島県では新規感染者数の1週間平均が、すでに「第6波」のピークを上回っていて地方での感染拡大にも注意が必要だとしました。

感染者を年代別にみると、10代以下は減少傾向に転じたのに対し、50代以上で増加傾向になっているということです。

特に、先月から感染が再拡大している沖縄県では、高齢者の増加が顕著になっていて、今後、ほかの地域でも高齢者の感染に注意が必要だとしています。

医療体制については、広島県や鹿児島県、沖縄県などで病床使用率の増加が見られるほか、自宅療養者や療養場所が調整中の人の数は東京都など複数の地域で増加が続いているとしています。

感染者が増加する要因としては、接触機会の増加やオミクロン株の「BA.2」への置き換わりが強く影響していると考えられるとして、学校や保育園、介護福祉施設などでの対策の徹底や、職場で接触機会を減らすことなどを求めました。

一方、新たに報告されているオミクロン株の「XE」系統については、これまでのところ感染力や重症度などに大きな差があるという報告はないものの、引き続き監視が必要だとしました。

今後の対策について専門家会合は、ワクチンの追加接種をさらに進めることや、外出の際には混雑した場所や換気が悪い場所を避け、少しでも体調が悪ければ外出を控えること、それに、今後、大型連休が近づく中で人の移動が増えると予想されることから、不織布マスクの正しい着用、手洗い、1つの密でも避けるといった対策を徹底することなどを改めて呼びかけています。

後藤厚生労働相「感染状況に地域差」

後藤厚生労働大臣は専門家会合で「直近の感染状況は増加傾向が続いているが、地域別に見ると、継続的に増加している地域もある一方、横ばいの地域もある。また、ピークよりもいったんは低いレベルまで減少している地域もある一方、十分に減少しないままに上昇に転じている地域もあり、感染状況の推移に差が生じている」と述べました。

そのうえで「新年度に入り、多くの人が集まる行事や就職・進学に伴う移動が多くなっている。また、大型連休が近づく中で、人流や都道府県を越える移動が増えることも予想され、引き続き感染防止策の徹底が必要だ」と述べました。

脇田座長 「全国的に継続的な増加局面に」

厚生労働省の専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田隆字座長は感染の再拡大について、「いま現在、全国的に継続的な増加局面にあるという認識がきょうの議論でも示された。まん延防止等重点措置が終わった段階で増加局面に入ったという意見もあった。比較的、増加速度がゆるやかな要因としては、自然感染やワクチンの3回目接種で免疫を持つ人が増えていることと、2年間流行が続いたことで感染リスクの高い場面を避ける市民の行動もあるという議論があった。現在の感染状況は、去年の夏の流行のピークを上回っていて、人と人との接触が増えると急激な感染拡大に至るリスクがあるという議論もあった」と話していました。

また、ワクチンの3回目の接種について、「新型コロナウイルスに限らず、多くの予防接種では2回目の接種までで基本となる免疫をつけて、3回目の接種でさらに良質な免疫をつける。オミクロン株が主流となってからのデータでもワクチンを接種していない30代以上では重症化する人や亡くなる人が少なからずいて、ワクチンの接種することで重症化や死亡を減らすことができていることが示されている。また、若者も感染すると後遺症のリスクがあるほか、自分の感染だけにとどまらず、周囲に感染させるリスクも出てくる。機会があれば、できるだけ3回目接種まで受けていただきたい」と話していました。