議会の政務活動費公開
返還率が過去最高に

東京都議会議員が、昨年度、使った政務活動費の報告書が9日公開され、交付総額の7億5800万円に対して使われず返還された割合は15%で、これまでで最も高くなりました。政務活動費が、飲食を伴う会合に使えなくなったことなどが要因で、地元の会合などに出席した際に支払う「会費」は前の年度の10分の1になりました。

都議会議員の政務活動費は、調査・研究などに必要な経費として議員1人当たり月額で50万円が交付されていて、昨年度の交付総額は7億5800万円でした。

このうち、実際に使われたのは6億4742万円で、最も多かったのは、広報紙の発行費用、2億9439万円で45%を占め、次いで、事務所のスタッフなどの人件費が、34%に当たる2億1692万円でした。

一方、使われずに返還された政務活動費は、すべての会派合わせて1億1058万円、返還率は総額の15%になりました。

都議会議員の政務活動費は、昨年度から1人当たり月額で10万円減ったのにもかかわらず、返還率・返還額ともに都議会で公開が始まった平成21年度以降、最も高くなりました。

これは議会改革の一環で、政務活動費が飲食を伴う地域の会合に出席するための会費や、会派の打ち合わせで食べる弁当代に、使えなくなったことなどが要因です。

特に、議員が新年会など地元の会合に出席した際に支払う「会費」は、昨年度、124万円と、前の年度の1210万円の10分の1になりました。

見直しの前に、1日に5件以上の新年会に参加していたという都議会議員は、「政務活動費を使えないからといって、地元の新年会を欠席するわけにはいかず、ことしはすべて自腹で出席した」と話していました。

収支報告書や領収書の写しなどは、来月上旬から都議会としては初めてインターネットで公開されます。

専門家「改革が2、3歩進んだ」

政務活動費に詳しい日本大学の岩井奉信教授は、「全国的にみて都議会の政務活動費はこれまで情報公開度が極めて低かったが、飲食が伴う会合への支出が禁止されたり、インターネットですべての領収書が公開されたり、都議会の政務活動費の改革は2歩、3歩進んだという感じがする。疑いを持たれるような使い方はなるべく排除して、議会活動に資することに集中して使うべきだ」と話していました。

飲食代見直し会議費激減

全国各地で議員の政務活動費の使い方が問われる中、東京都議会は昨年度、政務活動費の使いみちを厳しく見直しました。

これまでは、弁当を食べながら会議をするランチミーティングのように、会議と“一体性”がある場合は、3000円までの弁当代が「会議費」として使うことが認められていました。

例えば、見直しが行われる前のおととし6月には老舗すき焼き店に1個2160円の弁当56人分を注文し、政務活動費から12万960円が支払われたケースもありました。

このとき、弁当を用意した理由は「効率的に会議を開くため」と記載されていました。

議会改革の検討を進めてきた都議会は、政務活動費の中でも飲食に関する経費は特に都民から厳しい目が向けられているとして、会議の飲食代に政務活動費を使うことを禁止しました。

こうした見直しの結果、昨年度の「会議費」は131万円余りと、前の年度の3分の1以下に減少しました。

ピョンチャン五輪視察も“自腹”で

9日公開された昨年度の東京都議会の政務活動費のうち、「視察・研修費」は206万円で、前の年度の705万円からおよそ70%減りました。

昨年度は、都議会議員選挙があったことに加えて、舛添前知事の海外出張費用が高額だと批判されて以降、知事や議員の海外出張に対する都民の目が厳しくなったことも背景にあるとみられています。

例えば、ことし2月に超党派の議員22人がピョンチャンオリンピックを視察しましたが、飛行機代や2泊3日の宿泊費などに政務活動費を使うことはなく、各議員が私費で賄ったということです。

参加した議員の1人は、視察の費用におよそ30万円がかかったとしたうえで、「東京オリンピックとは異なる冬の大会だったうえ、都議会全体として、『少しでも批判されるおそれがあることはやめておこう』という雰囲気があり、私費で視察を行った。一方で、『神経質になりすぎている』と思うときもあるし、私費であるがゆえに視察に参加できなかった議員もいたと思う。難しい問題だ」と話していました。

政務活動費に詳しい日本大学の岩井奉信教授は、「ピョンチャンオリンピックの視察を議員たちは自腹で行ったが、これは理由が説明できれば政務活動費を使ってもおかしくない。政務活動費の問題に神経質になって議会活動が鈍るのは困るので、考えながら使ってほしい」と話しています。