札幌市 冬の五輪・パラ招致
経費最大で900億円削減計画

2030年の冬のオリンピック・パラリンピック招致を目指す札幌市は、大会の開催に必要な経費などを見直した新たな開催概要計画を公表しました。

札幌市は29日午後開かれた市議会の特別委員会で、2030年の冬のオリンピック・パラリンピックの招致に向けた新たな開催概要計画を示しました。

おととし公表した計画で、最大で3700億円と試算していた開催経費について、可能なかぎり既存の施設を活用し、運営に携わる要員を削減するなど見直しを進め、大会運営費を2000億円から2200億円、施設整備費を800億円の合わせて2800億円から3000億円とし、これまでの試算から最大でおよそ900億円削減しています。

計画では大会ビジョンとして「札幌らしい持続可能なオリンピック・パラリンピック」の開催を掲げ、大会のためだけの施設の新設は行わず、競技会場は市外を含めた13の既存施設を活用するとしています。

市は感染拡大で中断していた市民との対話事業を来年1月再開し、招致への理解を促したうえで、年度内に実施する道民への意向調査などを踏まえ、招致の最終的な判断を行うことにしています。

おととしの試算から最大で900億円を削減

新たな計画では、開催に必要な経費について「大会運営費」が2000億円から2200億円、「施設整備費」が800億円の合わせて2800億円から3000億円と試算しています。

これは、札幌市がおととしまとめた試算から、最大で900億円の削減となっています。

これについて、市は市内の真駒内公園屋内競技場や長野市のボブスレー・リュージュパークといった既存施設の活用にめどが立ったことに加え、会後に使用が見込めない仮設の施設はできるだけ建設しないことや、運営に携わる要員を削減することなどで経費を圧縮できたとしています。

経費のうち「大会運営費」は、観客席の一時的な増設など仮設にかかる費用として600億円、そのほかの運営費として1200億円から1400億円、予備費として200億円を計上しています。

このうち「予備費」は、おととしの試算では盛り込んでいませんでしたが、この夏の東京大会での新型コロナウイルスへの対応を踏まえ、不測の事態に備えるため、計上したとしています。

これら大会運営費は、IOC=国際オリンピック委員会の負担金や、スポンサー収入、チケットの売り上げによる収入などで賄い、原則として、税金は投じないとしています。

一方、「施設整備費」はいずれも老朽化に伴う建て替えやバリアフリー化など施設・設備の改修にかかる費用で、このうち、豊平区の新月寒体育館の建て替え整備費用などとして365億円を計上しています。

また、月寒地区にある市営住宅の活用を見込んでいる選手村関連の整備費用として157億円、中央区の大倉山ジャンプ競技場の改修費用として78億円などを盛り込んでいます。

これら施設整備費について、市は現行制度に基づいた国の交付金などの活用を想定し、市の実質負担額は450億円と試算しています。

競技会場は市外を含めた13の既存施設を活用

新たな計画では、大会のためだけの施設の新設は行わず、競技会場は市外を含めた13の既存施設を活用することにしています。

このうち、市内では豊平区の西岡バイアスロン競技場でバイアスロンなどオリンピックとパラリンピック合わせて3種目を、南区の真駒内公園屋内競技場でオリンピックのアイスホッケーを行う計画です。

東区のスポーツ交流施設「つどーむ」でフィギュアスケートなどオリンピックの2種目、中央区の大倉山ジャンプ競技場でスキージャンプなどオリンピックの2種目、清田区の白旗山競技場でスキークロスカントリーなどオリンピックの2種目を行います。

このほか、サッポロテイネスキー場、札幌国際スキー場、さっぽろばんけいスキー場をいずれも、オリンピックとパラリンピックのスキーやスノーボードの種目に活用します。

一方、老朽化に伴い建て替えられる予定の豊平区の月寒体育館は新旧双方の施設を活用する計画で、月寒体育館でカーリングなどオリンピックとパラリンピックの2種目を、新月寒体育館でアイスホッケーなどオリンピックとパラリンピックの2種目を行う予定です。

市外では、長野市ボブスレー・リュージュパークで、ボブスレーやスケルトンなどオリンピックの3種目を行うほか、帯広の森屋内スピードスケート場でオリンピックのスピードスケート、ニセコ町にある既存のスキー場のゲレンデを活用して、スキーアルペンなどオリンピックとパラリンピックの2種目を行う計画です。

開会式と閉会式は札幌ドームで行います。

また、選手村は豊平区の月寒地区にある市営住宅や、市内のホテルなどを活用します。

大会を持続可能なまちを構築するための礎に

札幌市は1972年に札幌大会を開催したことでインフラ整備などが進み、国内有数の都市に成長するきっかけになったとしています。

そのうえで、市は招致を目指す2030年の大会を「100年後も輝き続ける持続可能なまちを構築するための礎」にしたいとしています。

「大会ビジョン」として「札幌らしい持続可能なオリンピック・パラリンピック」を掲げ「人と地球と未来にやさしい大会で新たなレガシー」をもたらすとしています。

市は、来年1月に再開する市民との対話事業などを通じて、広く意見を募り、開催の意義や大会のレガシーについてさらに具体的な検討を進めることにしています。