接種証明 有効期限定めず
2回目から14日以上経過で

新型コロナの感染対策と経済社会活動との両立を図るため、政府は、ワクチン接種や検査による陰性の証明を示す「ワクチン・検査パッケージ」制度の要綱案をまとめ、ワクチンの接種証明は、2回目の接種から14日以上経過したことの確認を条件とし、有効期限は定めないとしています。

政府は、新型コロナの感染が再拡大した場合でも、経済社会活動との両立を図る必要があるとして、ワクチン接種や検査による陰性の証明を示す「ワクチン・検査パッケージ」制度を活用して行動制限を緩和する方針で、具体的な要綱案をまとめました。

それによりますと、緊急事態宣言などの対象地域で飲食やイベントでの行動制限を緩和しようとする事業者は、あらかじめ、この制度の適用を都道府県に登録し、利用者に対し、ワクチンの接種証明か、検査の陰性証明のいずれかを選択するよう求めるとしています。

そして、ワクチンの接種証明は、事業者が接種済証やそれを撮影した画像などを通じて2回目の接種から14日以上経過したことの確認を条件とし有効期限は当面定めないとしているほか、検査での陰性証明はPCR検査などを推奨し、有効期限は検体の採取日から3日以内としています。

ただ今後、仮に感染が急拡大し、医療提供体制のひっ迫が見込まれる場合は、政府や都道府県の判断で、制度を適用せず、強い行動制限を要請することがあるとしています。

制度要綱案を了承 政府分科会

16日に開かれた政府の分科会では、政府側から「ワクチン・検査パッケージ」制度の要綱案が示されました。

これについて、専門家からは接種を終えた人や検査で陰性の人も感染リスクがあるといった限界があることに注意し、感染が拡大し、一般医療を相当程度制限しなければコロナ対応ができない「レベル3」では停止も検討することや接種証明の有効期限について、今後検討することが必要だといった意見が出されましたが、要綱案は了承されました。

このほか分科会では、第5波までの新型コロナ対応を教訓にした今後の医療体制のあり方についての見解が専門家から示され議論が行われました。

山際経済再生相「感染リスク引き下げながら経済社会活動継続を」

山際経済再生担当大臣は、分科会の冒頭「ワクチン接種の進ちょくや治療薬の普及などに加え、飲食店の第三者認証制度の普及さらには検査環境の整備などにより、日常生活や経済社会活動に伴う感染リスクを以前よりも引き下げることができるようになってきている。政府としては、行動制限の緩和の内容など、新型コロナ対策の全体像で示された具体的な方策について速やかに対応を決定し、感染リスクを引き下げながら経済社会活動の継続を可能とする新たな日常の実現に取り組んでいきたい」と述べました。

後藤厚生労働相「今後感染拡大を見据え備えていくこと重要」

後藤厚生労働大臣は、分科会の冒頭「全国の新規感染者はきのう75人、1週間の移動平均では171人と減少が継続し、去年の夏以降で最も低い水準になっている。他方、気温の低下で屋内での活動が増えるとともに年末に向けて忘年会やクリスマス、お正月休みなどの恒例行事によって社会経済活動の活発化が想定される中で、今後感染拡大を見据えて備えていくことが重要だ」と述べました。

専門家“一定の感染対策は引き続き必要”

16日の分科会では、政府側から「ワクチン・検査パッケージ」制度の要綱案が示され、専門家からは活用する際の注意点について意見が出されました。

この中で専門家は、ワクチンと検査の限界を指摘し、▽ワクチンを2回接種すると、感染予防効果は一定の期間は持続するものの、時間がたつと効果が低減するため、接種が完了していても新型コロナに感染し、ほかの人に感染させることがあるほか、▽ワクチンを接種していない人が検査で陰性を確認した場合でも感染や重症化のリスクがあるとして、一定の感染対策は引き続き必要だとしています。

また、ワクチンを接種していない人を公平に扱うよう求めています。

さらに医療のひっ迫の度合いをより重視して5段階のレベルに分けて対策を行うとする新たな考え方に基づき、「ワクチン・検査パッケージ」の運用についての注意点をレベルごとにまとめました。

このうち、▽安定的に医療の対応が可能な「レベル0」から「レベル1」の段階では、民間事業者で割り引きなどのサービスの一環として活用されることが考えられるとしています。

▽感染者数の増加傾向が見られる「レベル2」では、都道府県による一定程度の行動制限が行われる場合があり、制限の緩和のために「ワクチン・検査パッケージ」を活用することが考えられるとしています。

▽一方で、感染が拡大し、一般医療を相当程度制限しないとコロナ対応ができない「レベル3」の段階では、引き続き運用するか、停止するかの検討が必要になるとしています。

その際には、▽感染や医療ひっ迫の状況や、▽「ワクチン・検査パッケージ」が活用されている場面の感染リスクの大きさ、▽感染が起きた場合の影響の大きさを考慮する必要があるとしています。

さらに専門家は▽「ワクチン・検査パッケージ」制度の効果や限界を評価して見直しを適宜行うことや、▽ワクチン接種証明の有効期限について今後得られる知見をもとに、検討を行うことが必要だと指摘しました。

尾身会長「ワクチン・検査パッケージ 走らせて見直しを」

分科会の尾身茂会長は記者会見で、感染が拡大した状態での運用について「感染が拡大して一般医療を相当程度制限しなければ、コロナ対応ができない『レベル3』になった場合、これまでよりも強い行動制限が課されることが考えられ、状況に応じて『ワクチン・検査パッケージ』の運用の継続も停止もあり得る。感染や医療の状況、適用される場面のリスクなどを判断する。何があっても継続する、停止するという考え方ではない」と述べました。

これに加えて、尾身会長は「『レベル3』といっても、実態としてはレベルが上がったばかりの初期のタイミングと、放っておけば一般医療を大きく制限しても新型コロナの医療に対応できない『レベル4』という最悪の事態が近づいている状況と大きく2つに分けることができる。最悪の事態に近づいているときには、強い対策が打たれ、『ワクチン・検査パッケージ』制度の対象になるイベントなどが制限され、制度を適用する、しないという判断にもならない可能性もある」と指摘しました。

さらに、尾身会長は「制度を走らせながら、効果と限界を継続的に評価して適宜見直していくという態度が非常に重要だ。政府は今のところ、ワクチン接種証明の有効期限について決めていないが、接種から数か月で感染を防ぐ効果が落ちることは間違いない。いますぐ結論を急ぐ必要はないが、なるべく早く議論したほうがよいというのが専門家の一致した見解だ」と述べました。

Go Toトラベル再開に向け “ワクチン・検査パッケージ活用を”

観光需要の喚起策「Go Toトラベル」の再開に向けて、斉藤国土交通大臣は16日の閣議のあとの会見で、ワクチン接種や検査による陰性の証明を示す「ワクチン・検査パッケージ」の制度も活用する形で実施方法を見直していく考えを示しました。

この中で、斉藤国土交通大臣は「Go Toトラベル」の再開について「再開時期や内容について政府として方針を固めたことはない」としたうえで、早期に再開できるよう、政府内で調整を進めていく考えを重ねて示しました。

そのうえで斉藤大臣は「ワクチン・検査パッケージの活用により安全・安心の確保を前提とした仕組みにしていく。中小事業者にも配慮して、具体的な制度設計について検討を進めていきたい」と述べ、ワクチン接種や検査による陰性の証明を示す『ワクチン・検査パッケージ』の制度も活用する形で、Go Toトラベルの実施方法を見直していく考えを示しました。