日銀 大規模金融緩和策維持
成長率+3.4%に引き下げ

日銀は28日まで開いた金融政策を決める会合で、いまの大規模な金融緩和策を維持しました。
一方、半導体不足などの影響で輸出や生産が一時的に減速することが見込まれるとして、今年度のGDP=国内総生産の伸び率の見通しを7月に続いてふたたび引き下げました。

日銀は28日までの2日間、金融政策を決める会合を開き、▼短期金利をマイナスにし、▼長期金利をゼロ%程度に抑えるよう国債を買い入れる大規模な金融緩和策の維持を賛成多数で決めました。

また、経済と物価の見通しをまとめた「展望レポート」を公表し、今年度2021年度の実質GDP=国内総生産の伸び率を、政策委員の見通しの中央値でプラス3.4%と、前回7月時点から0.4ポイント引き下げました。

これは、新型コロナウイルスにより消費への下押し要因が残るほか、半導体不足など世界的に原材料や部品の供給に制約が出ている影響で輸出や生産が一時的に減速することが見込まれるためです。

日銀が今年度の伸び率の見通しを下方修正するのは、今年度に入って7月に続き2度目となります。

ただし、先行きについては、ワクチン接種の進展などに伴い新型コロナウイルスの影響が徐々に和らいでいくもとで、経済が回復していくという基本的なシナリオは維持し、来年度の成長率見通しは前回から0.2ポイント引き上げ、プラス2.9%としました。

物価の見通しについては、今年度の生鮮食品を除いた消費者物価指数が政策委員の見通しの中央値で0.0%と、前回から0.6ポイント引き下げました。

これは携帯電話料金の値下げや消費者物価指数の算出方法が変わったためなどとしています。

日銀は引き続き企業などの資金繰り支援に努めるとともに、新型コロナウイルスが経済に与える影響を注視し、必要があればちゅうちょなく追加の金融緩和に踏み切るとしています。

経済と物価の見通し

日銀は、28日まで開いた金融政策を決める会合で、経済と物価の見通しをまとめた「展望レポート」を公表しました。

この中で、景気の現状については「新型コロナウイルスの影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している」という判断を据え置きました。

その上で、半導体不足など原材料や部品の供給に制約が出ている影響で輸出や生産が一時的に減速することなどから、今年度の実質GDP=国内総生産の伸び率を、政策委員の見通しの中央値でプラス3.4%とし、前回・7月の見通しから0.4ポイント引き下げました。

ただし、先行きについてはワクチン接種の進展などに伴って回復していくという基本的なシナリオを維持し、来年度の見通しをプラス2.9%と、前回から0.2ポイント引き上げました。

再来年度は、プラス1.3%と前回の見通しを維持しました。

また、先行きの主なリスク要因のひとつとして、半導体不足や海上輸送などの物流の停滞、部品の調達難といった供給制約をあげ、影響が長引いた場合には経済が一段と下振れるおそれがあるとしています。

物価の見通しについては、今年度の生鮮食品を除いた消費者物価指数が政策委員の見通しの中央値で0.0%と、前回から0.6ポイント引き下げました。

これは携帯電話料金の値下げや消費者物価指数の算出方法が変わったためなどとしています。

その上で、年末ごろからは原油などエネルギー価格の上昇から緩やかにプラス幅を拡大するとして、来年度の物価の見通しをプラス0.9%、再来年度はプラス1.0%といずれも前回の見通しを維持しました。

また、物価の先行きのリスク要因のひとつとして為替相場の変動や原油など国際商品市況の動向を指摘し、引き続き注意してみていく必要があるとしています。

依然として日銀が目標とする物価上昇率2%には届かず、経済活動の再開に伴って物価が上昇し、インフレの懸念も出ている欧米とは対照的となっています。

日銀 黒田総裁「悪い円安ではない 日本経済にプラス効果」

日銀の黒田総裁は、記者会見で外国為替市場での円安ドル高について「現時点での若干の円安については悪い円安ではなく、日本経済にとってマイナスになることはない。輸出企業への影響、日本企業の海外子会社の収益面での影響を考えれば、むしろプラスの効果がある」との認識を示しました。

その上で「若干、円安になったといっても経済の基礎的条件に反した動きであるとも思わない」と述べました。