ワクチン接種 民間企業が
自治体に医師や看護師紹介

新型コロナウイルスのワクチン接種で、医師や看護師など接種を担う医療従事者の人材不足が課題となるなか、民間企業が自治体からの依頼を受けて医師や看護師を紹介する動きが広がっています。

新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐっては、厚生労働省が行ったアンケートで、ことし3月下旬の時点で、集団接種の会場を設けるおよそ1400の自治体のうち、18%余りの自治体が「医師が不足している」と回答したほか、およそ23%の自治体が「看護師が不足している」と回答していて、接種を担う人材が不足している実態が明らかになっています。

こうした中、民間企業が自治体からの依頼を受けて、医師や看護師などの医療従事者を紹介する動きが広がっています。

19日、千葉県四街道市で行われた集団接種の会場には、民間企業から紹介された医師や看護師15人ほどが集まり、およそ400人の高齢者を対象に接種を行いました。

19日、集まった医師や看護師は会場まで90分以内に通うことができる人たちで、19日が休みの医師や資格を持っているが、現在は働いていない潜在看護師の人たちだということです。

19日、雨の中、朝から多くの高齢者が接種に訪れ、医師や看護師が優しく声をかけながら予診や接種をスムーズに進めていました。

四街道市に人材を紹介したのは東京に本社がある「総合メディプロ」で、この会社は、医師や看護師のほか、薬剤師や会場の運営を行う人材の紹介も行うなど、ワクチン接種に関わる業務を包括的に請け負っています。

これまでに、首都圏の4つの自治体と契約を結んでいるほか、関西や九州など、全国の自治体からも問い合わせが来ていて、7月末までに延べ1万人以上を紹介する予定だということです。

「総合メディプロ」の齋藤恵太社長は「ワクチン接種は、国民がいち早く生活を取り戻すために必要なことだと思っている。自治体や関係団体と協力して接種業務を進めていきたい」と話していました。

看護師は

千葉県四街道市の集団接種の会場で、接種の業務にあたっている看護師の中川明美さん(55)です。

去年6月に体調不良を理由に勤務先を退職していましたが、体調が落ち着いてきたため、地元の四街道市で接種の担い手として役に立ちたいと、企業の募集に応じました。

中川さんは17日から始まった市の集団接種の会場でワクチンを打つ担当をしていて「長年、看護師をしてきたので接種は問題なくできている。接種を受けた方が喜んでくれるので、やりがいがあります」と話していました。

中川さんから接種を受けた男性は「マンパワーがないと接種を受けることができないので、来てもらえてありがたいです」と話していました。

医師は

千葉県四街道市の集団接種の会場で、接種前の予診を担当している医師の柴田圭一さん(66)は、ふだんは県内の別の市の医療機関で働いていますが、勤務先が休みの水曜日に集団接種を手伝おうと、募集に応じました。

柴田さんは「地方になればなるほど開業医が多く、自分の病院が休みのときしかワクチンの接種に参加できないし、自分の患者もいるので、協力したくてもなかなかできない」と話していました。

そのうえで柴田さんは今回の応募について「ワクチン接種の担い手が足りないという報道もあり、手伝いたい気持ちはあったが、どこの自治体が医師を必要としているのか、情報が流れてこなかった。大きく公募でもしてくれないと市の外にまで情報が広がるのは難しく、仲介会社を使うしかなかった。民間企業を利用することに抵抗はなかった」と話していました。

自治体は

「総合メディプロ」に医師や看護師の紹介を依頼した千葉県四街道市の担当者は、民間企業に支援を仰いだことについて「新型コロナウイルスによる未曽有の事態で、医師会の協力を得てもなお、それを上回るかなりの数の医療従事者が必要になったためだ」としています。

また18日、総務大臣と厚生労働大臣が連名で7月末までの高齢者へのワクチン接種の完了にめどがたっていない自治体は、地元の医師会に積極的に協力を要請するよう求める通知を出したことについて「地元の医師会にはこれまでも協力をいただいてきているが、通知で、より連携が深まればありがたい。迅速に進めるために、足りないところを民間の力を借りて進めていきたい」と話していました。