【詳細】国の来年度予算案

政府は、21日の閣議で一般会計の総額が過去最大の106兆6097億円となる来年度・令和3年度予算案を決定しました。私たちの暮らしはどう変わるのか。盛り込まれた主な内容をまとめます。

新型コロナウイルス

新型コロナウイルス関連の主な事業です。

1. 感染拡大防止

まず、感染拡大防止策です。

▽国立感染症研究所の職員を増員するための費用などとして9億円、▽各地の保健所の体制がひっ迫していることを受けて、感染症対策を専門で担当する保健師を現在の1800人から1.5倍の2700人に増やせるようにするための経費として、20億円が計上されました。

▽保健所の危機管理体制を強化するため、結婚や出産などで働いていないいわゆる「潜在保健師」を登録する「人材バンク」を創設し、自治体間の応援を支援する費用などとして5億円が盛り込まれました。

2. 企業・雇用などの支援

企業などの取り組みや雇用を下支えする支援策です。

▽経営が厳しい航空会社を支援するため、予算と税の両面から支援し、1200億円規模の負担軽減を図ります。

具体的には、
▽航空会社が支払う空港使用料は羽田空港など国が管理する空港では、国内線を対象に90%減額するとともに、
▽国内線の燃料税は現在の半分に減額します。

また、
▽輸入に頼っていた物資の不足が顕在化したことから、人工呼吸器や人工透析装置といった機器を国内で開発・製造するための補助金などとして65億円が計上されました。

▽観光客が大幅に減少した国立公園の利用を促すため、ワーケーションの推進などを行う費用として159億円が計上されました。

また、
▽都市部から地方への移住などを促すため、農村や漁村の情報通信環境を整備する費用などとして98億円が盛り込まれました。

一方、
▽雇用調整助成金の上限額を引き上げる特例措置を延長する費用などとして、特別会計も含めて6240億円が盛り込まれています。

政権が掲げる重点施策

続いて、菅政権が掲げる重点施策です。

1. デジタル改革

まず、デジタル改革です。

▽国の情報システムを標準化していくための費用として合わせて2986億円が計上されました。

また、
▽小・中学校で1人1台、パソコンなどの端末を配備するのに伴って、小学校5年生と6年生、それに中学生を対象にデジタル教科書を配布する費用として20億円が盛り込まれました。

このほか、
▽農業分野でロボットやAIを活用するスマート農業の普及、それに最新の農機具やサービスの開発・導入を支援する事業として13億円が計上されました。

▽令和4年度末までに、ほぼすべての国民にマイナンバーカードが行き渡るようにする目標の実現に向けて、カードの交付を担当する市区町村の体制整備を支援する経費などとして1001億円が計上されました。

▽地域社会のデジタル化を来年度からの2年間で集中的に推進するため、デジタル人材の育成など自治体が行う取り組みに対して財政支援する経費として2000億円が計上されました。

▽スーパーコンピューターよりもはるかに高い計算能力を持つ「量子コンピューター」でも絶対に解読することができない次世代の暗号技術「量子暗号通信」の実現に向けて、研究開発を進めるため、今年度予算のおよそ2倍にあたる34億円が計上されました。

2. 脱炭素社会の実現

続いては、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「脱炭素社会」の実現に向けた事業です。

▽地域での排出削減に向けた計画づくりや再生可能エネルギーの導入などを支援する費用として204億円が計上されました。

また、
技術開発などを後押しする予算として、
▽将来の主力電源の1つと位置づける洋上風力発電に82億円、
▽水素の活用に66億円、
▽自動車の電動化のカギを握る蓄電池には23億円が盛り込まれました。

3. 不妊治療

不妊治療についての予算も盛り込まれています。

▽妊娠しても流産や死産を繰り返す「不育症」の検査のほか、若い世代のがん患者が将来子どもを授かる可能性を残すため、卵子や精子、受精卵の凍結保存などの治療にかかる費用負担を軽減するため23億円が計上されました。

暮らし

暮らしに身近な予算です。

1. 介護報酬

▽来年4月に改定される介護報酬について、新型コロナ対策の費用として0.05%を臨時に上乗せしたうえで、全体で0.7%のプラス改定を行うため196億円が計上されました。

2. 薬価

▽国が定める薬の価格については、来年度の改定で引き下げる品目を全体のおよそ7割とする一方、新型コロナの感染拡大の影響を勘案し、引き下げ幅を一定程度緩和して年間4315億円、国費ベースでは1001億円削減します。

3. 待機児童

▽待機児童の解消に向けて、保育所の運営費用を盛り込んだ「新子育て安心プラン」を実施する費用に111億円が計上されました。

4. 少人数学級

▽少人数学級の実現に向けて、公立の小学校の1クラスの定員を来年度から5年かけて35人以下に引き下げる第1段階として、来年度、小学2年生の教員を増やすための費用として3億円を上積みするなど、1兆5164億円の義務教育費国庫負担金を計上しました。

5. その他

▽石油を原料とするプラスチックを減らすため、植物を原料にした代替素材の生産や高度なリサイクル設備の導入を支援する費用として43億円が計上されました。

各省庁の主な事業

各省庁が盛り込んだ、このほかの主な事業です。

防衛省

▽配備を断念した新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替策として、新型のイージス艦2隻の建造に向けた設計などの費用として17億円が計上されました。

また、
▽航空自衛隊のF2戦闘機の後継となる次期戦闘機の開発関連経費576億円が盛り込まれました。

このほか、
▽在日アメリカ軍の駐留経費について、日米交渉の年内の妥結が見送られるなか、暫定的に今年度と同水準の2017億円を計上しました。

国土交通省

▽防災や減災、国土強じん化を進めるための費用として3兆7591億円を盛り込みました。

このうち、相次ぐ豪雨災害などを受けて、河川の治水対策を行う費用として3000億円を計上しています。

また、
▽開業が予定より1年程度遅れることになった北陸新幹線と、北海道、九州の3つの整備新幹線の事業費に、国の負担として804億円を盛り込んでいます。

環境省

▽原発事故から10年となる福島県で、再生可能エネルギーや最先端の廃棄物処理技術などを導入して復興のまちづくりを支援するため5億円が計上されました。

農林水産省

▽外食用のコメの需要が減り『コメ余り』が深刻化していることを受けて、主食用のコメから飼料用のコメや野菜などへの転作を促す交付金事業に3050億円が盛り込まれています。

また、
▽農林水産物や食品の輸出額を2030年までに5兆円に引き上げるという目標の達成に向けて、販路開拓や産地育成の費用として99億円が計上されました。

文部科学省

▽博士号の取得者を増やすため、大学の博士後期課程で学ぶ学生に生活費や研究費を支援する事業のため23億円が盛り込まれています。

経済産業省

▽中小企業の事業継承や再編を後押しするため、事業を引き継いだ経営者が新たに設備投資や販路開拓を行った場合、それに専門家を活用した場合の費用を補助する事業に16億円が計上されました。

復興庁

▽東京電力福島第一原子力発電所で増え続けているトリチウムなどの放射性物質を含む水の処分などをめぐり、風評被害の払しょくに向けて、情報発信を強化するための費用として今年度の当初予算の4倍の20億円が計上されました。

警察庁

▽来年、開催が予定されている東京オリンピック・パラリンピックの警備体制の充実やテロの未然防止を図るための警戒警備に必要な費用、223億円が計上されました。