【解説】中国念頭に日本は何を訴え? 東アジアサミット

ASEAN=東南アジア諸国連合の一連の首脳会議は最終日、インドネシアで、日本やアメリカ、中国、ロシアなどが参加する東アジアサミットが開かれました。南シナ海情勢やウクライナ情勢などが話し合われましたが、日本は何を訴えたのでしょうか?

Q・出席者は?

A・日本時間の7日午後開かれた東アジアサミットには、ASEAN諸国の首脳に加え、岸田総理大臣やアメリカのハリス副大統領、それに中国の李強首相やロシアのラブロフ外相らが出席しました。

米・中・ロの出席者

Q・岸田総理大臣の発言は?何を訴え?

岸田首相

A・岸田総理大臣は、ウクライナ侵攻を続けるロシアや海洋進出の動きを強める中国の動向を念頭に「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、協調の国際社会を実現することが重要だ」と述べるとともに、力による一方的な現状変更の試みや経済的威圧に反対する立場を強調しました。

一方、日中関係については「習近平国家主席とともに建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていく」と述べました。

また、東京電力福島第一原発の処理水放出の安全性などを説明し、各国に理解と支持を求めました。

さらに中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止したことを踏まえ「一部の国が突出した行動をとっている」と指摘し、科学的根拠に基づく行動や正確な情報の発信を求めていく考えを重ねて示しました。

インドネシアでの一連の日程を終えた岸田総理大臣は、記者団に対し「ASEANとわが国が新たな次元で協力・連携を強化することは、世界の平和と繁栄にとって大きな意味がある。それを1つの成果として形にできた」と述べました。

Q・東アジアサミットで、日本は何を重視したのか?

A・日本が最も意識したのは中国の海洋進出です。議題の中心は南シナ海でしたが、東シナ海でも中国が強硬な態度を見せており、日本の安全保障に直結する深刻な課題と捉えているからです。

ある政府関係者は、こう話しています。

「どんな理由があっても、力づくのふるまいを容認しないというスタンスは広く共有できるはずだ」(政府関係者)

日本としては「法の支配に基づく国際秩序の維持」というアジア各国も賛同しやすい主張を掲げて会議に臨み、理解の浸透を図りました。

また福島第一原発の処理水放出に対する中国の反発も、科学的根拠に欠ける主張だと強調しました。

政府関係者は、感触をこう話します。

「岸田総理の訴えは、広く共有できたはずだ」(政府関係者)

一方、中国との経済的な結びつきも考えますと決定的な対立は避けたいのも本音です。岸田総理大臣が会議で習近平国家主席の名前を出して関係構築を呼びかけた点からも、それがうかがえます。

Q・今後の課題は?

A・中国に自制を求めつつ、前向きで安定した関係をどう築いていくか。ひとつの国際会議だけで一気に前進する課題ではありませんので、日本にとって今後も難しい対応が求められる局面が続くと思います。          

政治部記者
家喜 誠也
2014年入局。宇都宮局、仙台局を経て政治部。現在は官邸クラブで安全保障や危機管理などを担当。