岡山発ブレイキン“ＩＳＳＩＮ”菱川一心選手パリ五輪への決意

NHK岡山「もぎたて！」リポート

2024年02月16日

パリオリンピックの新競技、ブレイキンの全日本選手権が2月17日と18日に東京で開かれます。注目は、岡山市中区出身の菱川一心選手。菱川選手は5月と6月の国際大会でオリンピックの出場権獲得を目指しますが、全日本選手権を「国内のライバルを相手に力を試す絶好の機会」と位置づけています。全日本で優勝してパリの切符がかかる大会に弾みをつけることができるのか。注目です。
（岡山放送局記者山田俊輔）

“全日本選手権で勝てないとオリンピックで勝てない”

ダンサーネーム“ISSIN”で活動する岡山市中区出身の菱川一心選手(18歳)は成長著しい若手のホープです。持ち味は爆発力のあるダイナミックな動きで、世界ランキングは日本選手2番手の6位。パリオリンピックの代表入りを狙う有力候補の1人です。菱川選手は全日本選手権に向けて、力強くこう語っています。

（菱川一心選手）
「全日本選手権も優勝を狙ってやっているが、“全日本選手権で勝てないなら、オリンピックに行っても勝てないでしょ”という気持ちで大会に臨む」

力発揮できず世界選手権で課題浮き彫りに

菱川選手の力強いことばの裏には、去年の大会での悔しい思いがあります。9月にベルギーで開催された世界選手権。優勝すればオリンピックの代表に内定する大会で力を出し切ることができず、2回戦敗退に終わりました。

（菱川一心選手）
「意識しなくてよかったのに、“優勝したら、オリンピックに行ける”と自分の中ですごい意識をしてしまった。これで変に自分にプレッシャーをかけてしまった」

課題も浮き彫りになりました。世界のトップレベルで勝ち上がるためには、持ち味のダイナミックな動きをバトル終盤まで高いレベルで出し切らなければいけません。スタミナ不足を痛感し、より強い体づくりが欠かせないと感じました。

（菱川一心選手）
「今まではトレーニングとか全然何もやっていなくて、ストレッチも本当にちょびっとパパって体を動かして、体が温まってきたら激しい動きをしていくみたいな感じだった。ただ、僕のムーブは普通の人より結構１発１発の動きですごく体力をもっていかれる。やっぱりもっと体力がいるなと思ったし、ちゃんと対応できるように体力と体を作ろうと思った」

肉体改造で手応え

体作りを一から見直そうと、去年11月からサッカー日本代表の堂安律選手などと同じトレーナーのもとでフィジカルトレーニングに取り組んでいます。細い板の上をおもりを背負ったり、四つんばいになったりして歩くなどして体幹を鍛え、高速で体を回転させても軸がぶれないようにします。

また、持続力を上げるため、負担がかからない体の使い方も覚えました。4キロのボールを思いっきり地面にたたきつけるトレーニングなども取り入れ、強い体を作るため、徹底的に自分を追い込みました。

成果は結果にもつながっています。去年12月に香港で開かれた国際大会で、世界ランキングが上の海外選手を抑えて優勝し、手応えをつかみました。

（菱川一心選手）
「トレーニングをやればやるほどどんどんと胸が開くようになって、背中が動くようになる。そうなるだけで実際に体が動くようになっている。すごく効果が出ているんだなというのは感じた」

“全部ぶつけて出し切る”全日本制しパリ五輪出場へ

パリオリンピック、ブレイキン男子日本代表の出場枠は最大2つ。このうち1つは、去年10月に中国で開かれたアジア大会で、ダンサーネーム“Shigekix”半井重幸選手が金メダルを獲得し、代表に内定しました。残り1枠は5月に中国、6月にハンガリーで開かれる2つの国際大会の結果で決まります。

パリの出場権がかかる国際大会まで残り3か月。菱川選手は代表を争う国内のライバルが出場する全日本選手権で優勝し、弾みをつけることができるのか。進化した菱川選手のダンスに注目です。

（菱川一心選手）
「2023年にいろいろな世界大会に出て、それは全部オリンピックに向けての大会だった。だから勝手にオリンピックに対する気持ちはどんどん、どんどん強くなっている。全日本選手権は“勝つでしょ”という気持ちと、とりあえず今やっていることを全部ぶつける、出し切るという気持ちが強い」