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湯布院の湧き水で育てた絶品サーモン 戸部アナウンサーが舌鼓

NHKプラスで見逃し配信 5月15日(水)午後7時まで
  • 2024年05月09日
画像をクリックすると、NHKプラスでご覧いただけます
(5月15日午後7時まで)

全国有数の温泉観光地、大分県由布市の湯布院。実はいま、湯布院で養殖されたサーモンが人気を集めています。そのおいしさの秘密を探りました! (アナウンサー 戸部眞輔)

外国人観光客から人気!湯布院のご当地サーモン

後方で辻馬車も通る、JR由布院駅前

海外の旅行客からも人気の観光地、湯布院。
JR由布院駅前に、地元で養殖されたサーモンの専門店があります。

サーモン料理の数々

店は去年(2023年)5月にオープン。サーモン丼に、サーモンのカツ、サーモンのサラダなど、サーモンを使った料理を提供し、人気を呼んでいます。
そのうち、最も注文が多いのが、こちらのサーモン丼です。

多い日には1日で60食ほど出る人気メニュー
試食して、思わず笑みがこぼれます

んふふ、おいしいです。脂の乗りがちょうどいいです。くさみもなく、しかも身が締まっていて、いくらでも食べられそうなサーモンです。

SNSなどで評判が広がり、客の半分は海外からだということです。

タイから訪れた観光客

タイでも、たまにサーモンを食べますが、こちらのサーモンはとても新鮮でおいしいです。

立川智大さん
(サーモン専門店オーナー)

日本人の方も週末はたくさんいらっしゃいますが、お客様の半分以上は海外の方です。養魚場から毎朝仕入れているのでくさみがなく、とても食べやすいサーモンです。

養魚場は由布院駅のすぐそば

由布岳を望む養魚場

このサーモンは、JR由布院駅から300mほどの養魚場で養殖されています。
13面あるいけすで、年間およそ2万匹、40トンを出荷しています。

5年前から湯布院で養殖を行っている濱砂慎吾(はますな・しんご)さんです。

大きく育ったサーモン

サーモンとは、サケだけではなく、ニジマスやサクラマスなど、マス類も含まれますが、湯布院で育てているのは、淡水魚のニジマスです。
2キロほどに成長したものを、1年中、県内外に出荷しています。

ポイントは湯布院の”湧き水”

湯布院のサーモンのおいしさの秘密は、地元の澄んだ湧き水にあります。

湯布院 荒木地区の湧き水

養魚場のある荒木地区には、米作りにも使われる湧き水があります。
サーモンは水温の変化に弱いという性質があるため、寒暖差の大きい盆地に位置する湯布院での養殖には、地上の気温変化を受けにくい「湧き水」が欠かせません。
この地区の湧き水の温度は、サーモンが育ちやすい16~18度で安定しているということです。

濱砂慎吾さん
(サーモン養殖会社社長) 

農家の方がおいしいお米を育ててる湧き水を少し分けてもらって、サーモンを養殖しています。荒木地区の湧き水は、濁ったところを見たことがないくらい澄んでいて、魚の成長に非常に適しています。時期関係なく、安定して養殖することができています。

拡大するサーモンの陸上養殖

こうしたサーモンの陸上養殖は、今、全国で広がりを見せています。
すしネタとしても人気が高く、世界的にも根強い需要のあるサーモンですが、このところ漁獲量は減少傾向。更に円安の影響などで輸入物の価格が高騰しています。

陸上養殖は初期費用こそかかるものの、国内で生産するため鮮度が高い上、養殖する時期が限定される海面養殖と比べて1年を通して安定供給できるというメリットがあります。
今では全国70か所以上で陸上養殖が行われ、増え続けています。

そのサーモンの陸上養殖に、大手企業も乗り出しています。

サーモン養殖場の竣工式(福岡県豊前市の火力発電所の敷地内)

九州電力は、経営の多角化の一環として、去年(2023年)福岡県豊前市の火力発電所の敷地内に養殖場を作りました。将来的には年間3000トンの生産を目指し、海外への輸出も視野に入れているということです。

最先端の設備で生産量が8倍に 

競争が激しくなる中、濱砂さんは、生産効率を上げようと、最新技術を取り入れました。
いけすの中にセンサーをつけて、水温に加え、サーモンを大きく育てる上で重要な「水中の酸素濃度」を、24時間確認できるようにしています。

青い折れ線が水中の酸素濃度
濱砂慎吾さん
(サーモン養殖会社社長)

水の中って、ずっと同じ酸素濃度かというと、実は違います。
餌を食べると酸素を消費しますし、のんびりしてるときは酸素濃度が上がります。もし酸欠になると、魚が弱ってしまったり、最後には死んでしまいます。
そこで、うちの養魚場では、酸素濃度が足りなくなると自動的に補ってくれる仕組みにしています。そうすると、魚も健康的に育ちますし、通常よりも多く、池の中で養殖ができるので、水が少なくても養殖できたり、いくつかのいいメリットがあります。

濱砂さんによりますと、こうした設備を導入した結果、サーモンの成長の速度が2倍以上早くなった上、同じ面積でより多くの魚を育てることにも成功し、濱砂さんが湯布院で養殖を始めた当初と比べると生産量は8倍に増えたということです。

湯布院の新たな名物を目指して

世界各地から観光客が訪れる湯布院
濱砂慎吾さん
(サーモン養殖会社社長)

世界中の皆さんが知っている湯布院という場所は特別です。今、海外から湯布院にお客様が来ていますが、その人たちに、湯布院で作ったサーモンを食べてもらう、いいチャンスなのかなと考えています。
湯布院で育てたサーモンを、鮮度のいい状態で、すぐに食べてもらうことができます。これからも、湯布院の名に恥じないように、皆さんにおいしいと言っていただけるような魚を作っていきたいと思います

湯布院のサーモンは、大分県内の一部のスーパーで販売されているほか、ホテルや旅館、飲食店でも取り扱うところが増えています。
九州では、大分県のほか、宮崎県や長崎県、熊本県でもサーモンの陸上養殖が行われています。
これから、各地のご当地サーモンが増えていきそうです。

  • 戸部眞輔

    NHK大分 アナウンサー

    戸部眞輔

    初任地も大分。大分に来て、初めて遊びに行ったのは湯布院でした。久大線に乗って、金鱗湖を見て、立ち寄り湯に入った22歳の初夏でした。当時は「風のハルカ」が放送されていました。

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