道後平野を望む展望台 “淡路ヶ峠”
- 2024年02月29日
愛媛県内の身近な里山の魅力を紹介するシリーズ「えひめふる里山歩き」。8回目は松山市の淡路ヶ峠です。「峠」と書きますが『あわじがとう』と読みます。市街地からも近く、標高300mに満たない、まさに里山ですが、歴史あり、絶景ありと実に魅力的な山でした。
(NHK松山放送局 松田利仁亜 / 岡部馨)
松山市・淡路ヶ峠(あわじがとう)
松山市中心部から東に5キロほどの場所にある淡路ヶ峠。登山口近くにはバス路線もあってアクセスも便利です。標高は273mで山頂には展望デッキがあります。気軽に登れて、眺望がよいことから人気の山です。
ご一緒したのは、地元の公民館で館長を務めている二宮秀秋さんです。長年、淡路ヶ峠の整備をしている団体の会長も務めています。
「登っていただくと真下に道後平野が一望できます。道後平野を抱えるような感じです。そして、この淡路ヶ峠を守っていた人が、日本の歴史に大きく関係しているんです」
道後平野を一望!そして、日本の歴史にも関係!?これは期待が高まります。
小説「坊っちゃん」にちなんだ登山道
今回は桑原中学校の裏手から登る「青い空 坊っちゃんコース」で山頂を目指します。
淡路ヶ峠には複数の登山口があり、それぞれが夏目漱石の小説「坊っちゃん」にちなんで、「ゆったりマドンナコース」や「がんばる赤シャツコース」などの名前がつけられています。その日の気分や体力などに応じて、さまざまなルートで登山を楽しむことができるようになっています。
中学校の裏手を進んでいくと、菜の花が出迎えてくれました。暖かな日ざしと共に、春の訪れを感じました。
登山口から山頂まではおよそ1000メートル。道はなだらかで、下草もなく、よく整備されていてとても歩きやすいと感じました。
地域ぐるみで守る 登山環境
登山口から歩くことおよそ15分。木立を抜けるとすばらしい眺めが待っていました。山の中腹からすでにこの景色です。
この眺望のよさには理由があります。
長年、地元の人たちがボランティアで登山道の整備を続けているのです。
「ここ、もっとうっそうとしていたんですよ。下草を刈って眺望がいいようにしました。私たちの団体だけではなくて、淡路ヶ峠をこよなく愛する人たちがこれをやってくれています」
また、登山道沿いには千本の桜の木が植えられています。これは地元の桑原中学校の生徒たちが植樹したものです。まだ幼い木が多いですが、今後は桜の名所としても楽しめるようになりそうです。
こうして地域の人たちの手で守られている淡路ヶ峠は、多くの人たちに親しまれています。
(地元の女性)
「近所なので、ちょこちょこ登っています。昼は昼でいいし、夕方はまた夕方で、日没のころはすごくきれいです」
(中学生)
「テスト期間中で、ちょっと休憩みたいな感じで来ました」
「景色がきれいで、整備もされていて登りやすいし、いろんなコースがあるので、いろいろ登って楽しむみたいな。淡路ヶ峠は桑原中学校を象徴する山です」
みなさん、淡路ヶ峠は地域の誇りだと口にされていて、本当に愛されている山なんだということが分かりました。
道後平野の展望台
登山口からおよそ30分で展望デッキがある淡路ヶ峠の山頂に到着です。中腹からの景色もよかったですが、山頂からの景色は格別。展望デッキからは松山城と街並み、興居島の小富士や伊予灘も見ることができます。まさに道後平野を一望、松山の町を独り占めにしたような気持ちになりました。
日本の歴史との関わり
そういえば、淡路ヶ峠、日本の歴史に関係があるということでしたが…。
「松田さん、この方ご存じだと思います。この人のルーツがここにあります!」
二宮さんが取り出したのは古いお札。初代内閣総理大臣・伊藤博文の肖像があしらわれた千円札です。
今から400年以上前、この地を治めていた戦国大名・河野氏の家臣に「林 淡路守 通起」(はやしあわじのかみみちおき)という武将がいました。「淡路ヶ峠」の名前の由来となった人です。この通起から数えて11代目の子孫が明治の元勲・伊藤博文だと言います。壮大な歴史とのつながりに驚きました。
ちなみに「淡路ヶ峠」という山の名前、「峠」と書くのに、なぜ「とう」と読むのか。二宮さんによると、この地域で使われる言葉で、小高い場所を「とう」や「と」と呼んでいたそうです。それに峠の字を当てていまの表記になったのではないかということでした。
淡路ヶ峠は「淡路守」がいた「小高い場所」という意味だったんですね。
二宮さんによると、夜景もおすすめだということで、そのまま夜が来るのを待つことにしました。
ヘッドライトは登山の必需品
ここで登山ワンポイト。
いざというときに備えて、必ずヘッドライトを準備しましょう。予備電池もお忘れなく!
こちらは夜の登山道を撮影したものです。夜間はヘッドライトをつけていても、こんなに暗いんです。急な体調不良や道迷いなど、山では何が起きるかわかりません。もしヘッドライトが無い状態で日没までに下山できないと、行動不能になってしまいます。明るい時間帯に下山を予定していても、念のためヘッドライトをカバンに入れておきましょう。
スマートフォンにもライトの機能はありますが、いざという時に電池が切れて「通信手段」として使えなくなっては困りますよね。スマホのバッテリーは温存しましょう。また、両手が空くため、山ではスマホよりもヘッドライトのほうがより安全です。
夕景から夜景へ(タイムラプス映像)
夕暮れから夜にかけて、山頂からの景色をタイムラプスで記録しました。淡路ヶ峠の展望デッキからの絶景をご覧下さい。
最後に1句詠んでみた
コーナー恒例の「里山ハイク」です。
「春寒や人の営み輝けり」
暦の上では春でも、さすがに夜には寒さを感じる中、人々の営みの証でもある夜景が輝き、春を本当に目覚めさせようとしているのではないか?と感じた様子を表してみました。
淡路ヶ峠について
所在地:愛媛県松山市畑寺町
標高 :273m
(備考)
松山市中心部から、伊予鉄バスの久米駅行きで「短大前」へ。バス停から桑原中学校までは歩いて20分ほど。
「えひめふる里山歩き」のコーナーでは皆さんおすすめの里山の情報を募集しています。その理由と画像もあれば、こちらのリンクからお送りください。