ページの本文へ

WEBニュース特集 愛媛インサイト

  1. NHK松山
  2. WEBニュース特集 愛媛インサイト
  3. 登頂500回超の“レジェンド”と石鎚山に挑戦!

登頂500回超の“レジェンド”と石鎚山に挑戦!

「えひめふる里山歩き」 特別編 石鎚山
  • 2023年10月27日

愛媛県内の身近な里山の魅力をお伝えしている「えひめふる里山歩き」。今回は特別編として“西日本のてっぺん”である石鎚山(いしづちさん)に挑みました。神の宿る山らしく、自然の壮大な力を感じる山行となりました。

(NHK松山放送局 松田利仁亜 岡部馨)

西日本最高峰 石鎚山へ

愛媛が誇る石鎚山の標高は1982m。いわずと知れた西日本で一番高い山です。山そのものが石鎚神社のご神体であり、古くから多くの人々の信仰を集めてきました。

わたくし松田は愛媛に住んで通算5年目(2回の勤務の合計)になりますが、石鎚山に登るのは今回が初めて。松山局ホームページのプロフィールに「今度こそ石鎚山登頂」と書くほど、長く憧れを抱いてきた山でした。今回ようやくその思いを達成しようという計画です。

今回の登山は西条市側の「成就社ルート(じょうじゅしゃ)」を選びました。石鎚登山ロープウェイの「山頂成就駅」を起点に「成就社」を経由して山頂へ、さらに石鎚山の最高地点である「天狗岳(てんぐだけ)」を目指します。途中には鎖場もあるハードなルートです。

登頂500回超の“レジェンド”

古川啓二さん

ご一緒するのは、今治市の古川啓二さん(70)です。石鎚山はなんと今回で534回目。山の仲間からは“レジェンド”と呼ばれて親しまれています。60代から本格的に石鎚山に登りはじめた古川さんは、季節を問わず、天候がよければ毎週水曜日と日曜日に必ず登っているそうです。

「石鎚山は僕の健康の源です。頂上でいい景色を見て、いい空気を吸って、最高です」

石鎚山のおすすめポイントを紹介していただきながら進んでいきます。

出発は雨の中

この日(10月1日)はあいにくの天候でした。雲が辺り一面を覆い、断続的に雨が降る中、カッパを着て「山頂成就駅」を出発しました。

25分ほど歩くと鳥居が見えてきました。石鎚神社の成就社です。ここで登山の安全と天候の回復を祈りました。

その社の隣にあるのが「見返遥拝殿(みかえりようはいでん)」です。

ここは古川さんの「おすすめポイント」のひとつでしたが、やはり真っ白で何も見えません。

「心の目で見てください。心の中でね」

私が見られなかった光景がこちら。

正面には山頂。秀麗な山容を額で飾り付けたようです。
これが見られなかったのは日ごろの行いゆえなのでしょうか・・・

登山口と書いてある「神門」からいよいよ本格的な登山道に入ります。
最初は下り坂。それがしばらく続いて「八丁鞍部(はっちょうあんぶ)」に着くと一転、急な登りの階段が続きます。息も切れ切れに足を進めますが、先を行く古川さんのペースはまったく衰えません。私はついていくのがやっとという感じ。聞くと、週2回の石鎚登山のほかにも、週3回ジムで鍛えているのだそう。まったく年齢を感じさせないのは日ごろの鍛錬があってこそなのでしょう。そして服装もとってもおしゃれ。そんな70歳に私もなりたい。

「あめゆ」で元気も天候も回復!?

急な坂を登り「前社森(ぜんじゃがもり)」までやって来ると、1軒の茶屋がありました。
ここで古川さんが薦めてくれたのが名物の「あめゆ」です。水あめとザラメ、そしてショウガで作った昔ながらの飲み物です。甘くて、ショウガが利いていて、疲れた体にしみわたります。ここから先へ歩みを進める活力となりました。

「あめゆ」で乾杯

茶屋を出発するころには雨があがり、徐々に青空も見えるようになりました。そして、雲間にはようやく石鎚山の山容を拝むことができました。霊峰というだけあって厳かで迫力があります。かなり登ってきたつもりでしたが、西日本のてっぺんまではまだ距離がありそうです。

石鎚山の最高地点「天狗岳」

おのぼりさん、おくだりさん

山を登っていると、古川さんは登山者とすれ違うたびに「おくだりさん!」と声をかけていました。
石鎚山ならではの慣習で、山を下る人に対しては「おくだりさん」、登る人には「おのぼりさん」と、あいさつをするそうです。

鎖場に挑戦!

標高1800m付近までやってくると、待っていたのは「二ノ鎖」です。長さが65mもあります。石鎚山には「鎖場」が4か所ありますが、いずれも迂回(うかい)して登ることもできます。

今回は天候も回復し、岩肌も乾いてきたことから、石鎚山の醍醐味とも言える「鎖場」に挑戦することにしました。

「しっかりと鎖を持って、足場を固めて、ゆっくり安全に登っていきましょう」

思い出したのは「えひめふる里山歩き」の取材で、4月に登った「恵良山」の鎖場です。あの時、教えてもらった「三点支持」を意識して登ります。「三点支持」とは、両手両足4つのうち、動かすのはひとつだけ。3点で体を支えながら手足をひとつずつ動かす登り方です。
ほぼ垂直の鎖場は緊張感や恐怖感がありつつも、必死で進むしかない状況です。安全に登ることだけを考えて進みました。

「二ノ鎖」と「三ノ鎖」を登り切ると石鎚山の山頂部「弥山(みせん)」に到着です。古川さんとハイタッチで喜びを分かち合いました。

防寒着を忘れずに!

ここで登山のワンポイント『山の気温差に注意』

標高が100m高くなると、気温は0.6度下がります。
高さが2000m近い石鎚山の山頂部の気温は、平地と比べて12度ほど低くなる計算です。実際にこの日の気温を比較してみると、アメダスでふもとの西条市の最高気温は27.2度でしたが、石鎚山の山頂は14度でした。 

また、一般に風速が1m強くなると、体感気温は1度低くなると言われています。
歩行中は暑いと感じても、休憩時には体が冷えて体力を奪われてしまうこともあります。どれだけ天気が良くても、山には防寒着を忘れずに持っていきましょう。

最高地点の天狗岳へ

成就社でのお祈りが神様に届いたのでしょうか、石鎚山の最高地点「天狗岳」がはっきりと見えるようになりました。いよいよ“西日本のてっぺん”へ向かいます。

左右がスパッと切れ落ちている、細い岩場を慎重に通り抜けると山頂に到達です。いま自分たちが西日本で一番高いところにいるという達成感も相まって実に爽快でした。

古川さんに改めて石鎚山の魅力を聞きました。

「天狗岳のかっこいい姿が最高に好きです。やっぱり石鎚山にはすごい魅力あります。明日からまたやったるぞ!という勇気が湧いてくる。元気をもらいます」

最後に1句詠んでみた

恒例の「里山ハイク」です。

「秋霖を吹き飛ばしけり神の峰」

秋霖とは秋雨のこと。当初降っていた雨も祈りが通じたのか、山に宿る神様が吹き飛ばしてくれた。そんな様子を詠んだつもりです。

秋から冬へ

この取材のあと、紅葉のピークを迎えた石鎚山の映像をお届けしようと、このコーナーを担当するカメラマンがもう一度石鎚山に登りました。10月16日に撮影した映像はこちらの記事(西日本最高峰 石鎚山の紅葉【動画】)から見ることができます。

そして、季節はさらに進みます。
10月21日、山頂部でことし初めて霧氷が見られました。

このように、山は一足早く冬へと向かっています。山頂付近では相当な冷え込みになることもありますので、これから登山をするという人は防寒具など、装備をしっかり整えて登るようにしてください。


「えひめふる里山歩き」のコーナーでは皆さんおすすめの里山の情報を募集しています。
その理由と、あれば画像も下記のリンクからお送りください。

  • 松田利仁亜

    松田利仁亜

    2002年入局。2014-2017年以来2度目の松山局勤務。公私共にさらに愛媛の良いところを探し求めています。 夏には松野町でキャニオニングを初体験、気持ちよかったです。

  • 岡部馨

    岡部馨

    NHK山岳カメラマン。ふる里山歩きのコーナーを担当。

ページトップに戻る